サークル課題作:田舎ファンタジー
「入村希望だ」
私が役場で人と待ち合わせをしていた時のことだ。一人の紅髪の美少女が役場の中に入ってきて、「村おこし課」の看板の下にいた婆さんに話かけたのだ。だが、誰も彼女に目を向けない。
「どちらの方ですか?」
「フェルマータ大公国」
「あア、辺野古」
いや、違うから。フェルなんたらだから。婆さん大丈夫か?
「以前の住民票はお持ちですか?」
「ない」
「何か身分を証明できるものは?」
「ない」
「ああ、そう。ならいいです」
適当だな! いいのかよ、それで。
プルプル震えながら婆さんはいくつかの書類を取り出し、彼女の前に差し出す。
「犯罪歴の確認だけしますから、この書類に指紋を押捺できますか?」
「私に犯罪歴などあるわけないだろう!」
中々プライドの高い御嬢様である。なんというか、貴族っぽい。
「でもこれは規則ですので……」
「断る!」
婆さんはゆっくりと椅子から立ち上がった。そして
「圧さんかい!」
凄い剣幕で叱りつけた。震えが止まってる。
「最近の若いもんは年寄り言うことが聞けんのかね!」
「いや、私は亡命貴族……」
「郷に入ったら郷に従わんかい!」
「……はい」
女の子は肩を落として、捺印した。
さて、女の子がしょぼくれて役場を出ていくと、丁度待ち人がやってきた。
「さっきの娘、アレの成果か?」
書類を提出してから私の元に来た彼がそう言った。
「どうやらそうらしい」
シケモクを捨てて席を立ち、私は彼と共に外へ出る。
「異世界人を呼び込んで人口回復を図るとはなあ。村長も凄いことを思いつくもんだ」