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第3話 邂逅

 任地であるエルトリューンの都市クーシャリウスにソフィア・ニューミットは降り立った。かつんと靴と床が音を立てる。最上段のポート。

 そこで彼女はまず盛大に深呼吸をしてみた。サイボーグの身体にはさほど意味を為さぬ行為ではあれど大気の組成が解析される。概ね人類の生存可能大気組成をしているが、多くの塵が混じっているようだった。汚染物質はない。魔力濃度が通常よりも高いものの許容値内だ。


 主な塵の成分は砂と埃。時折、風によって砂煙が舞うほどには多い。有体に言えば、エデンでは感じることのない埃っぽい大気という奴だ。

 現実世界。それもエデン中央となる銀河中央から遠く離れた星系のド田舎ならばこれも当然なのだろうか。ソフィアには判断が付かない。


 足を動かしてみれば舞うのは降り積もった砂や埃ばかりだ。定期的に洗浄されている形跡はない。どうやら想像以上に現実世界という奴は未熟な場所であることを彼女は理解した。


「さて、現地オブザーバーはどこに?」


 一人派遣するという連絡があったが、それはどこにいるのだろうか。時間は指定していたため来ていないとおかしいだろう。

 そう思いつつソフィアがポートから階段を降りるとそこで一人の人間を見つけた。即座にソフィアはその人間を解析する。エデンデータバンクに登録された正規市民だ。


 名前はラグル・サラウェイ。送られてきた現地オブザーバーの情報と参照すると一致した。更に驚くべきことに生体であることが解析によって判明。

 なにせ金属部品なし。生体型? いや、それにしては筋肉にカーボンナノチューブ繊維の反応はない上に心臓部に魔力炉の反応もない。つまり、本当に今時珍しい純正の人間というわけだ。それにしては内蔵魔力が多い気がするが。


 しかし、まさかそんな骨董品どころか絶滅危惧種のような人間が居ようとは思いもしなかった。未成熟で未発達な、エデンの支援なしには存続することができないような魔物という脅威が存在する現実世界で生身を保った人間がいることは信じられないことである。

 しかもそれが現地で組むことになる人間とは。サイボーグではないため心肺機能も天然もの。走って来たのか息を切らしている。


 こんなので役に立つのだろうか。何せサイボーグはカーボンナノチューブ筋繊維によって、生体の85倍以上ものパワーを出すことが可能だ。

 人間大の大きさで下手をすればあの人型有人兵器〈ギア・アーク〉や大型重機とほとんど同等がそれ以上のパワーが出せるのである。


 ただしそれだけのパワーを出す場合は内蔵兵装などの武装を組み込むことが出来なくなる。遊びがなくなるわけだ。

 無論、パワーだけがサイボーグ化の利点ではない。無呼吸運動が一時間は可能であるし、痛覚などの感覚系のオンとオフが出来る。


 酷い臭いや音なんかを出す敵がいた場合はそれらが役に立つ。また、感情抑制機能もある。戦闘中に無駄なことを考えないようにする機能だ。

 味方の裏切りにあっても問題なく対処が可能となるし、躊躇いや葛藤などといった無駄なことを省くことが出来る。


 防弾だって防刃も限度はあるが生身よりは遥かに頑丈。その上、各種センサー類は、人の視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚を遥かに凌駕している。

 物陰に隠れるといったくらいでは丸見えも同じだ。サイボーグから完全に隠れたいのならば完璧な光学明細をするか死ぬしかないとすら言われている。


 デメリットはそれだけ重くなるということくらいだろうか。そのため水の中で浮くことが出来なくなるとかそういうことくらいだろう。

 今では、エデンの外の人のほとんどが全身がサイボーグかあるいは部分的なサイボーグ化を行っている。いまどき生身など流行らない。


 だというのにソフィアの目の前にいるラグルはどこもサイボーグ化をやっていない。カーボンナノチューブ繊維の戦闘服を着こみ、ある程度の筋力補正機能を使っていることはわかる。

 だが。そんなものサイボーグには及ばないだろう。しかも、彼の背にはオールドウェポンでは済まされない武装である弓がある。


 骨董品も良いところ。値打ちだけは純天然の木製ということもあってかなり博物価値が高い。武器として使うよりは博物館にでも寄贈した方が良い代物だ。

 そんな風であるため、ソフィアにはラグルが役に立つとは思えなかった。


 だが、上からは彼と組んで仕事をやれと言われたのだ。エデン上層部、つまりはエデンの運営委員会に間違いなどあるはずがない。

 ならば、それに従うまで。さっそく接触してみよう。そう思ったソフィアはさっそく行動を開始する。カンカンと鉄の音を鳴らして彼の前に立つ。


 さて、第一印象というのが一緒に仕事をする相手との邂逅において最も重要であるとマニュアルに書いてあるので、ここはウェットに富んだギャグという奴を言ってみようとソフィアの中でぴこーんと別方向に考えが飛んでいく。

 そして、何を言うのが良いかとエデンネットに検索をかけて、旧時代的な息をはあはあと切らした相手を呼称する用語を発見した。


「はあはあ、している……つまり変態ですね」

「ちげーよ!?」


 全力のツッコミが返ってきた。これで掴みはバッチリですねとソフィアは内心で自分をほめたたえる。そして、すかさず、


「冗談です」


 と言った。相手が全力でツッコミをして来た時の対処法としてマニュアルに書いてあったのだ。これで完璧だろうと内心でドヤ顔のソフィア。

 対するラグルはというと、彼女があまりにも無表情な真面目な顔で言ってるのでまったく冗談に聞こえていなかった。そんな顔で冗談ですと言われてもなんだこいつ、状態である。


「では、私はソフィア・ニューミットです。あなたは? この時間にこの場所に来たという事はオブザーバーということでよろしいのでしょうか?」

「あ、ああ、ラグル・サラウェイだ。遺跡の探索だと聞いている」

「ええ、そうです。詳しいことは不明ですがエデンがチェックした遺跡を探索しその最奥にあるものを取ってこいという任務です。あなたの仕事はそれを達成するまでの私のサポートということになっています」


 了解した、とラグルは頷き、まずは何をしたらいいと判断を仰ぐ。依頼者の意向を第一にという社訓の一つだ。


「では、どこか静かに話が出来る場所に行きましょう。ブリーフィングを始めます」

「わかった。なら、ついてきてくれ。ああ、それからこいつも被っておいてくれ」


 そう言ってラグルがソフィアに渡したのは彼女の身体がすっぽり入るくらいのマントだった。


「これは?」


 とりあえず解析してみるソフィア。解析した組成から何の素材で出来ているのかを判別する。どうやら魔物の素材だ。

 わかったのはサンドスパイダーの糸を編んで作られたらしいマントということ。鋼鉄よりも堅いが銃弾を防げるような代物ではない。


 防具というよりは衣服の範疇であり、暗器などの小型武装を隠すには良いだろうがソフィアには需要がない代物だった。

 なぜこんな着る必要もないものを着なければいかないのか。それに洗っていないのか汚い。汚染というほどではないにしても、エデンでは即座に消去されるような代物だった。そもそもエデンでは汚れるという概念がない。


 ソフィアがなぜ渡されたのかわからないでいると、


「そんな恰好で出歩かれると面倒なことになる」


 ラグルはそう言った。色々と露出激しい恰好もそうであるが、何よりその明らかに小奇麗でな恰好は如何にもな富裕層に思われる。

 そうなるとここでは面倒くさいことになるのだ。辺境ということでお世辞にも治安が良いとは言えない。犯罪者が多いのだ。


 相手がサイボーグだろうがなんだろうが女と見ると攫って行く奴らもいる。肌なんて見せていたらそれこそ誘っているようにしか見えない。

 エデンのエージェントであればそれなりに自衛手段くらいは持ち合わせているだろうが、ここで活動するのならば問題は起こさない方が安心だ。


 そんな感じのことをラグルはソフィアに説明する。まあ、本当の理由はそんな露出しまくりな恰好の女と一緒にいてどんな噂が立つかわかったものではなかったからだ。

 そこら辺がベルにバレるとおしおきがある。それがまた厳しいのだ。子供の時から世話になっているのでどうやっても逆らえないのである。


「ふむ、そういうものですか」

「そういうものだ。現地オブザーバーからのアドバイスとでも思っておいてくれ」

「まあ、聞いてあげましょう」


 そう言ってソフィアはマントの付け方をエデンネットで検索しマントを羽織った。良い感じに全身が隠れたのでラグルは頷いてから、


「じゃあ、行くとするか」


 ソフィアを先導するように先を歩き始めた。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 クーシャリウスの第二階層の雑踏を歩く。初めて歩く現実世界をソフィアは観察していた。エデンと比べ埃っぽいというのが全体の感想。

 それに付随して、人が多い、汚い、塵が多いとかそういう諸々の感想が来るが、まあ現実世界ならこんなものだろうとも思う。エデンと比べる方が間違いなのだと早々に悟った。


 空を見上げれば空は見える。螺旋状に階層は存在しているので空を見上げることにはわけはないが、建物と建物の間に張り巡らされたロープには洗濯物と思わしきがかけられていたり、あるいは人間がひっかかったりしていた。

 絶えず上の階層からはごみが降って来ていて、小さな埃がいつも舞っている。上から少し視線を下げて雑踏を見れば人、人、人。


 多種多様な人がいっぱいだ。裏路地を除けば野垂れ死に犬に食われている奴もいる。あるいはサイボーグ特有のホワイトブラッドを垂れ流しにしている奴もいた。

 視線を前に戻すと、育ちが良いことを察したのか下卑た笑みを浮かべた男やら金を持っていると思って商品を売ろうと老婆がやってきたりもしていた。


 ソフィアはそれらすべてを無視し、いないものとして扱う。一々関わるのも面倒臭いのだ。目的は遺跡の中にあるという遺物の回収。それ以外について何らする気はなかった。

 感覚を切っておけば痴漢されたところで気にもならない。そもそも仮初の身体だ。どうなろうとも別段思うことはないのである。


 それも雑踏を抜ければ終わりを告げた。次は階段を上がる。まさか、自動化されていない階段があるとは思いもしなかったソフィアは少しばかり立ち止まって動くのを待つ。


「何してるんだ。早く来い」

「……動かないのですか、これは。故障してますね」

「いや、元から動かねえから」

「そんなバカなものがあるのですか」

「あるんだよ。一々動かすにも魔力炉から魔力引っ張らにゃきゃかならんだろ。それが面倒だとか、容量の関係でここらは自動化されてないぞ」

「なんという未開拓地。ここは蛮族の星ですか」

「それをここが故郷の人間に言うか。普通」


 額に皺を寄せるラグル。溜め息を吐いてはやく来いと言った。

 ソフィアも早くすることに異存はないので階段を登ろうとして、マントに引っかかってずっこけた。


「あぶね! って重っ!?」


 咄嗟にラグルが腕をつかんでソフィアの転倒だけは防いだ。


「失礼ですね。女性に重いなどとは」

「ならこけないでくれませんかねえ」

「こんなマントがいけないのです。それと助けてもらわなくても倒れはしませんよ」

「……悪かったな勝手に動いだんだよ」

「そうですか。ありがとうございました。行きましょう」


 気を取り直して階段を昇りはじめる。鉄の音を響かせて階段を昇って降りて、昇って降りて洞窟の横穴に入るかのように入り組んだ道を進んでいく。

 データを参照していたが、どう考えても正規登録されたマップデータと一致していなかった。一応来た道は記憶しているが、一人でどこかに行こうとすれば迷うことは確実だろう。


「…………」


 あまりいい気分にはならない。そもそも、本来ならば階層都市として作られたこの街で人は上層に住むはずだ。

 この八層の階層都市は上に行くほどフロア円の大きさが大きくなる。居住区画は上三層。下五層にあるのは農業プラントや工業プラントなどの生産施設ばかりで住むこと考えていないと設計当時の資料を見た限りそうなっていた。


 だが、現実は上は八層から、下は二層まで全部人が住む居住区になっている。農業プラントなどがなくなったわけではない。

 その上の余剰スペースに橋をかけて床を創り新しいフロアを作って住んでいるのだ。余剰スペースの有効利用もここまでくれば感心すらしてしまう。


 なぜこんなことになったのかをラグルに聞いてみれば、


「あ、そんなもん犯罪者が集まりだしたからだよ」


 辺境の惑星。それも鉱物資源もとり尽くされた場所。有用なものはなく魔物ばかりで溢れるこのエルトリューン。

 ここが人類発祥の地と言われているとはいえども、何もなければ人は離れていく。エデンの中枢と言える銀河中央部からも離れているため管理も甘い。


 そういう隙間を突いて犯罪者共がやって来た。宇宙海賊、マフィア、ギャング、その他大勢の非合法組織がここぞとばかりに集まってきた。

 そして、気が付けばいつの間にかこんなことになっていたというわけだ。他の辺境の惑星も似たり寄ったりで大差はない。


「都市運営委員会は何をしているのですか?」

「無駄無駄。裏でクレジットの取引があってるからな。あっちも干渉しないし、ギャング共も表立って行動しない。都市の外は知らんが、そういうこった。エデンも現実世界についての関心は薄いしな」


 気にするだけ無駄だと言っておく。


「……わかりました。それで、まだですか?」

「もうちょいだよ」


 そうですか、と言ってソフィアは再び歩き始める。


「あー。見ろよこの綺麗な姉ちゃん、いくら知り触っても何もいわねえぜ!」

「さ、流石っす兄貴!」

「や、やめようよ~」


 どうしてこんな不毛なことをと思っていると何やら後ろが騒がしいのでソフィアが振り返ると、そこには子供が三人いて彼女の尻を鷲掴みにしていた。

 感覚を切っていたのと何をするにも問題はなかったので放置していたが、騒がしいので振り返ったらこの光景。どうするか判断に迷っているとリーダー格だろう一人がソフィアが見ていることに気が付いた。


「やべえ、バレた!?」


 即座に逃げようとしたが、


「何してやがんだ、お前ら」


 ラグルが即座に反応し三人組の首根っこをひっつかむ。


「うぎゃあっ、って、ラグルじゃん。何してんの? この綺麗な姉ちゃんなに? セクシャルドール?」

「アホか。仕事の依頼人だよ。お前らこそこんなところで何やってやがる」

「廃材集め。オッチャンのところに持ってこうとしてんだよ」


 そう少年が言って背後の三人が背に持つ廃材を示して見せる。


「なら、余計なことしてないで行けよ」

「わかってるって」


 ラグルは子供を離す。子供は首元を直すと、


「じゃあな、姉ちゃん、もっと警戒しとけよ」


 そう言って、今度はソフィアの胸を鷲掴みにしてさっさとどこかへ行ってしまった。


「やれやれ」

「騒がしい子供たちでしたね」

「いや、お前、あんだけされててそれだけかよ」

「現実の身体なんて私にとってはあまり気にするものでもありません」

「…………」

「何を黙っているのですか? 早く行きましょう」

「お、おう」


 何とも言えない表情になったラグルはソフィアに言われるまま先を急ぐ。人通りのない通りを過ぎると、今度は人が多すぎる通りに出る。

 ソフィアは人を避けることに苦労して、何度かひかっかり転びそうになりながら辿り着いたのは俗に言う酒場だった。


 まるで地面に埋まっているかのような酒場。いや、ソフィアの解析によれば本当に埋まっているようで階層(フロア)をぶち抜いていることがわかった。

 普通そんなことをすれば不具合でも出そうなものであるが、どうやらドワーフ由来の建築技術を用いているらしく寧ろ他の建物よりも安定しているという矛盾した状況になっている。


 酒場の名は穴倉。なるほどドワーフが運営でもしていることがもろ分かりの店名だった。


「おーっす、やってるかー?」


 そこにラグルが入って行く。ソフィアも遅れて入る。

 中は外観の見た目と同じく洞窟の中のように狭苦しさを感じさせるものであった。店内は煙たい。如何にも犯罪者のたまり場ともいえる雰囲気がしている。


 ラグルが入ると店内にいた全員が彼を見るがすぐにそれは霧散した。続いてソフィアにも視線は集まるが、積極的に何かしようとする雰囲気はない。

 視線をすぐに全員が手元に戻した。賭博をしている者、酒を飲んでいる者。どいつもこいつも一般人らしからぬ体つきをしている。


 サイボーグはそれだけ出力に比例して大きくなる。多くの機能を詰め込めば体格も大きくなっていく。ここにいる大半はエデンの定めたサイボーグの規定を大幅に超過した出力と機能を仕込んだ奴らということ。

 店主はその中でも異様だった。ドワーフ特有の矮躯であるというのに腕が規格外に大きく、またそれが四本もある。


「なんじゃい、坊主か。こんな時間から酒とは良い身分じゃねえか。その後ろの嬢ちゃんは? まさか、お前の連れか? おいおい」

「おっと、それ以上は言うなよ。仕事相手だ。奥の席借りるぞ」

「やれやれ、ここは会議室じゃねえっていつも言ってるだろうが」


 そういうなよとでもいうように手をあげて、奥へと歩いていく。ソフィアもそれに続く。店の奥、天井も低い閉鎖的な席にラグルは座った。

 ソフィアはその対面に座る。


「さて、じゃあこれからのプランを聞かせてくれないか?」

「遺跡に行って探索を行います」

「目標の物は?」

「送ります」


 ソフィアが手で何かを送り付ける動作をするとラグルの視界に一つのウィンドウが送られ来る。画像ファイル。スキャンしてもウイルスの心配はない。

 一応、対策ソフトを起動してから画像ファイルを開く。そこに映っていたのは、赤い球体。画像ファイルの名前に照らし合わせるならば赤の宝珠ということになる。


「こいつは?」

「エデン上層部によれば、古代の遺産とのことです。莫大な力を生み出す装置なのだとか」

「なんだってエデンはこんなのを求めてるんだ? 定期的に依頼が来ているらしいが」


 今の時代、莫大な力と言われれば魔力を連想する。つまり、魔力を生み出す装置なのだということなのだろうが、そんなものエデンが求める理由がわからなかった。

 今の時代ならば魔力を生み出すのは魔力炉で事足りる。今では人間の心臓サイズで大型魔力炉とほとんど同等の出力が出せる。


 そのおかげでサイボーグたちは総じて強力な身体強化や思考加速などのアプリをいくらでも使えるようになっていのだ。

 そんなものがあるというのに、今更宝珠などというものを求めるとは思えない。ならば何か別の理由があるのかと聞いてみたが、


「知らされていないということは、それを私やあなたが知る必要はないということです。エデン運営委員会に間違いはありません」


 答えは知る必要がないということであった。つまり、それについては知らないし、知らされていないということならば知る必要もないのだということ。


「なるほど。じゃあ、目標物はそれとして。道中と遺跡には魔物や盗賊なんて連中が出るがどうする?」


 ウィンドウを払う動作で決して、ラグルはソフィアに向き直って話を続ける。


「立ちふさがるのならば排除します」

「逃げる奴は?」

「追いません。時間と資源は有限でしょう。あなたの場合は」


 ラグルはその言葉に肩をすくめる。


「遺跡についての情報は?」

「第三層からなる地下遺跡系とのことですが、旧時代的な迷宮となっているようで詳細は入って見なければわかりません」

迷宮(ダンジョン)ね。地下遺跡系ならゴーレムとかそれ系列の魔物が出るな」

「はい、出る魔物を一覧にしておきましたので目を通しておいてください」


 そう言ってまたファイルが送られてくる。テキストファイル。これまたウイルス反応はなし。一応開いてみるが、文字ばかりで面倒くさいのですぐに閉じた。

 一見したばかりではゴーレムや蜘蛛系列が見えたが、それくらいこの惑星のどこにでもいる。必要な対策も、倒し方も全てラグルの頭に入っていた。


「問題ない」

「優秀ですね」

「嫌味か? あんたのデータは見せてもらったが、エデンの教育課程を過去最高の成績で修了と出ているぞ」

「それがどうかしましたか? 事実を述べたまでですが」


 どうやら本心らしい。


「…………足は?」

「そちらが手配する手はずのはずですが?」


 そう彼女が言った時、ラグルにメールが届く。


「ちょっと待ってくれ……」


 ラグルはサイバーブレインのメニューを開き、メールを確認する。ベルからの依頼確認のメールがあり車両の方は手配しているとのお達しが来た。


「ああ、問題ない」

「他に質問は?」

「ない」

「では、出発しましょうか。準備の方は?」

「問題ない」


 では、と二人は店を出る。店主が、何も頼まなかった二人に罵声を浴びせているがラグルは知らん顔、ソフィアは馬耳東風に聞き流した。

 向かうのは第一階層。そこはすでに人の住める場所ではなかった。階層と重ならない場所は緑があふれる緑化区画となってはいるものの上階と重なれば最後、そこはごみ置き場となる。


 廃材、廃材、廃液。どろどろとした廃液がそのまま流れていたり、落とされた廃材が重なりあって奇妙なオブジェクトを形成していたりする。

 それだけでも、エデンではありえないくらいの混沌であるのにそこにさらに人が住んでいることだ。上階にすら住めない経済的に終わっている連中が住んでいるとのことである。


 確かに子供が瓦礫の上から見ていたりしていた。辺境という言葉では片付かないくらいに荒廃しているのはどういうことなのだろうか。


「まあ、人が集まればこうなるわな」


 とはラグルの談。ごみ処理用のプラントが今の住民の数では追いつかずに廃材などを捨てるようになったのが、このごみ山という。


「さて、ここだ」


 ついたのはジャンクヤード。ごみ山の中でもひっそりと開けた場所に造られた場所だ。


「爺さんいるか!」


 ラグルが誰かを呼ぶと、廃材でできた建物の中から男が一人出てくる。サイボーグだ。若々しい肉体であるが、ラグルの言葉から察すると老人なのだろう。

 サイボーグになれば寿命の短い人間でも150年は若々しく生きれるためこの老人もその類である。若いのに老人というと非常におかしいが。


「んんん? おおお、ラグルか! お前さん生きとったんか!」

「おう、元気だぜ。社長から連絡が行っていると思うが」

「おおそうじゃった。用意しておるよ」


 そういって裏に案内される。瓦礫やごみをよけてごみ山をくぐったその先にあったのは八輪の装甲車であった。

 今の主流である反重力自動車の前に主流であった接地した地面しか走れない旧型の乗り物だ。ソフィアとしては初めて見るものであった。


「おお、いいじゃねえか。どうやって手に入れたんだ?」

「ここいらに打ち捨ててあったのを適当に改良しただけじゃよ。エンジンだけは最新式じゃ。そこらの車には負けんと自負しておる。走らせる機会がなかったからなベルちゃんに頼んだんじゃよ。尻は触らせてもらえんかった」

「ああ、道理でジャンクヤードに大穴があいてるわけだ」


 そう笑いながら、不自然にあいていた大穴を見る。金属類は総じて溶解し、消えない穴をうがっていた。


「中に必要なもんは入れてある。嬢ちゃんも頑張りな」

「そういいながら尻は触るなよ」

「ふぉっふぉっふぉ、爺の楽しみじゃて」


 そういいながら尻を揉まれまくるソフィア。感覚を切っているので何も感じないため問題なし。反応がないとつまらないのか、それとも堪能し終えたのか老人はキー・プログラムをラグルに送り付ける。


「壊してもよいぞー。その分ベルちゃんの尻揉むから」

「今度は殺されっぞ」


 その時は、その時じゃと行って老人はごみ山の影に消えた。


「さて、行くとするか。乗れよ」

「……はい」


 本当にこれでいくのかといろいろと思うことはあれどもラグルが乗り込んでしまった上にエンジンも始動している。

 本当に大丈夫なのかと思いながらもソフィアも装甲車に乗り込んだ。ゆっくりと装甲車は発進し、クーシャリウスを出た。


さて、第三話です。

二人が合流して任務開始。どうなることやらです。

相変わらずのなんちゃってSFですが頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。


では、また次回。


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