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キミボク  作者: きつねさん
仮想世界と要
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キミボク   ころさんの思い

九月八日誤字修正

「いっいやっ、なにこれっ!?」

鏡の中に金髪の偉丈夫がいた。その顔には見覚えがあった。

ころさんと言うプレイヤーネームで遊んでいる失楽園でのアバターだった。

それが鏡の中に現れるなんておかしい。

おかしいというか、異常だ。


昨日もログインしてソニアさんと一緒にプレイしたのだから忘れるわけがない。

やっぱりこれって昨日の気色悪い体験が関係してるのかな。

気色悪い感覚が続いたあと、ゲームの中で自分の体が現れた。

そんなことありえない。そもそもゲームには私の現実の体のデータがない。

だからゲームの中に現れるなんてことはあり得ない。ありえないのに現れた。

どうしてこんなことに・・・・・・・・


こうやって現実逃避気味に考え事をしてても鏡の中のキャラは消えてくれない。

だめだ、だめだ。こうやって一人で考え込むのはよくないって本に書いてあった。

誰かにそうだ・・・・・・ん、なんてできないよ。

こんな事言ったって頭おかしくなったかって心配されるよ。

両親に心配はかけたくない。

じゃあ、学校の友達は?言えない。頭おかしいって思われたくない。

誰か、誰か相談できる人は・・・・・・・・・


そうだっ、ソニアさん。ソニアさんもおんなじ経験をしたはずだから話しても問題はきっとない。

ソニアさんのMODにメールを送ることはできるはず。

よかった、相談できる人がいて。

そう思って私は自分の部屋に戻ってMODの外部端末からメールを送ろうとした、

したんだけど、やっぱり送るのはやめた。

ソニアさんは私より小さな女の子だ。

そんな子に自分の不安を押し付けるなんて。

いや、むしろソニアさんが不安に思ってるかも、それを励ますっていう事でメールを送っても、

・・・・・ってこれはただの言い訳だね。

私が話したいから、結局その理由なのは変わりない。こんな事じゃだめだ。

・・・・・・・・・けど、ソニアさんがこの変なことを体験してメールを送ってくるかもしれないよね。

そうだったら、返信しないのは感じが悪いし、相談に乗るのが年長者の務めだよね。

ソニアさん、メール送ってくれないかなー、って思いながらMODの前で座って待っていた。


「はづきー、何やってるの。遅刻するよっ。」

ああ、時間切れのようです。って鏡。鏡に映ったら鏡の中のキャラの事がばれて心配させちゃう。


・・・・・・・・仕方ない、今日は休もう。

となったらとりあえず部屋の姿見を逆向きにしておこう。

親が部屋に入ってきたときに見られたら心配させちゃうし。

そう思って姿見の方を見た。

あれっ?鏡に映ってない。キャラがいなくなってる。ちゃんと私の姿だ。

戻ったのは良いけどさっきのはなんだったのか分からずに気味が悪い。


気分的には休みたいけど仕方がない。

治ってしまったんだから学校には行くべきだ。

「葉月っ、何やってるのほんとに遅刻するよ。」

ガチャリとノックもなしにお母さんが勝手にドアを開けてきた。

「大丈夫。もう顔も洗ったし、あとは制服着てご飯食べて出ていくだけだから。

 急げば全く問題ないよ。」

「そう、けどあんた顔色悪いわよ。今日は休んだら?」

いや、お母さん。そんな、休むのを推奨するようなことを。

むしろ母親って休ませないようにするものじゃないの?

「大丈夫だよ、お母さん。ちょっと昨日寝るの遅かっただけだよ。」

「そう?気分悪かったら早退してもいいからね。」

「はいはい、じゃあ、着替えるから出てって。」





「行ってきまーす」

「気を付けてねー」

やっぱり気分は乗らない。けど休むのはだめ。

・・・帰ったらソニアさんからのメール確認しよう。



・・・・・・・とか思ってたんだけどさあ

まさかソニアさんにリアルで会うことになるとは

しかもソニアさん男だったし、同い年だし、おんなじクラスだし

少女がいたずらで最初だけ性別を偽ってるっていう定説は嘘だったんだ。

完璧に騙された。いや、向こうはちゃんと最初の時に言ってるから嘘じゃないんだけど。

それでもなあ。なんか複雑。


それに最初こっこ、こくはくだと勘違いしちゃったし。

向こうとしたら、これも騙したっていうわけじゃないんだけど・・・・・・複雑。

いや、だって「大事な話がある」だよ、そりゃ、そうだと思ってもしょうがないじゃない。

それにきっと私だけじゃないし。絶対友達も勘違いしてるし。

もう、どうしよ。明日絶対友達にからかわれるよ。


あれ、いつの間にか不安が消えてる。

色々と振り回されて疲れたけど、そのおかげかな?鏡の件についての不安が全くなくなってる。

今日は考えまい、考えまいとしてきたのに。

秘密の共有のおかげかな?

ああ、けど多分、頼もしかったからだ。ともすれば女の子と間違えそうな容姿をしてるけど、

とっても頼もしかったからだ。きっとそうだ。

色々と考えてくれたし、解決に向けて動いてる。その安心感が勝ったんだ。

ってそうだ、運営への問い合わせのメール書かないと。

えーと、【ログイン中のフリーズ、及びログアウト含む操作不可の不具合について】

だったっけ?後、注意事項は鏡で見たとかそういうことを書かない。

よし、完璧な文章を書いて見せようじゃないか。








「ふぅ」

書き終わった。これで私の仕事は終わりだね。

でも、この作業って別に私に任せなくても片手間で出来たような?五分もかかってないし。

もしかして気を使われた?私が掲示板苦手って言ったから。

それに何もしないで要くんに頼りっきりっていうのも心苦しかったし、それを見越して?

・・・・・・・・・私も掲示板で調べてみようかな。








・・・だめだ。全く分からないうえになんか罵倒してくる人が怖い。

なんであんなに他人の悪口ばっか言うんだろう?見てる人は良い気分しないのに。

今日はもう寝ちゃお。あっ、勉強してない。

まあ、明日でいいか。

そうして私はベッドに入って寝た。



寝たんだけど、ここどこ?

なんだか、不定形?な場所にいた。

遠くを見たら、どこまでも続いてるようにも、すぐ近くに壁があるようにも見えた。

上を見上げるとこれまた同じ感覚。

立っている足元を見てみると立っているはずなのに床がないように感じる。

スーッと頭に血が上って変な浮遊感みたいなのを感じる。

これは何とかタワーっていう高高度の所ででガラス張りの床の上に立った時みたい。

思わずへたり込んでしまった。

へたり込んで床が確かにあると手で触ったのに、そこに床があると認識できない。

ここは怖い。

「早く夢から覚めないかな?」


あっ、女の人が向こうに出てきて何か喋ってる。

人の話はちゃんと聞かないと・・・・・・ってこれ夢だった。

けどいいや、他の事に集中してたらきっと怖くなくなる。

私はその女の人の話をじっと動かずに集中して聞いていた。それはもう暗記出来るぐらい集中して。


話が終わった。

女の人の話はなかなかにおもしろかった。とても私の頭が作り出した夢だとは思えないくらい。

これから私達は剣と魔法とファンタジーな世界に行くらしい。そこで好きに生きろだってさ。

夢だと分かっていながら少し興奮しちゃった。

魔法とか実際にある世界だよ。誰だって憧れるよ。

ああ、ほんとに行けたらいいのになあ。


「ふーん、これがあの子が気にかけてた子なの。

 頭もよさそうに見えないし、状況把握も甘いし、適応能力も高そうにない。

 なんでこんなのを気にかけてたんだろう?もっと性能高いのはいっぱいいるのに。」

何だろう?さっきまで向こうで話してた時はもっとこう、神々しかったのに。

私の傍に来て話しかけてきたとたん俗っぽくなった。

と言うか私の夢ならもっと褒めてくれたらいいのに。(けな)されて喜ぶような趣味はないし。

あれ、夢って確かその人の深層の願望がどうのこうのって・・・・・・・

うん、あれはきっと都市伝説だね。私、貶されてもうれしくないし。


「ああ、けどこうもできなさそうだと逆に保護欲っていうのを煽るのかも。

 けどねえ、その体で出来ない感じだと気持ち悪いだけっていうか。」

「失礼な。」

なにが気持ち悪いだ。私はぴっちぴちの女子高生だ。

って私の体、「ころさん」になってる。ゲームのしすぎかなあ。

そうだ、この体で女言葉は奇妙って要くんに言われたんだった。

今回の騒動が終わったらゲームの中で男の人の言葉でしゃべってみよう。


「はあ、夢だと思ってる相手と話すのは張り合いがない。

 じゃあ、とりあえずソニアからの伝言。一ヶ月は生存を優先しろだって。」

ソニアさんから?私ソニアさんの事好きだな。特に笑顔が好き。

あれ、けどソニアさんって要くんだよね。っていう事は要くんが好き?

うわ、私なんて考えを。私が好きなのはあくまでソニアさんであって、けどソニアさんは要くんで、

ってああ、もうややこしい。とにかく私が好きなのは笑顔だし。だから大丈夫、大丈夫。



「何考えてるのかわかんないけど幸せそうな顔しちゃって。

 いい事教えてあげる。のほほんとしてたら一か月以内に死ぬよ。じゃあね。」

死ぬ?まあ、そりゃあ私がファンタジーな世界に放り出されたら死にかねないね。

けど私の体って「ころさん」なんでしょ。だったら死なないでしょ。強いし。

ああ、早くファンタジーな世界に行かないかな?このままじゃ夢が覚めちゃう。

自分の想像の世界だったとしてもファンタジーな世界を体験してみたい。

あれ、だんだん視界が狭く。あーあ、結局ファンタジーな世界は体験できなかったか。

まあいいや。要くんや両親や友達がいる世界の方がなんだかんだ言って好きだし。

それに一緒に送られるらしい人たちの中にソニアさん、つまり要くんの姿が見えないし。

あれ、私の中で要くんの事がこんなにウエイトを占めてたっけ?




ここで私の意識はいったん途切れる。



一ヶ月以内に死ぬという委員長(千代田一葉)を絶望させようと思っての事でしたが、

夢がと思っていたのとキャラの強さに自信のあった委員長には通じませんでした。

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