表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キミボク  作者: きつねさん
委員長(コロさん)の場合
44/51

ダンジョン

「これってダンジョンだよね?」

私は目の前の洞窟を観察しながら呟いた。


クレールの言った通りに山をてくてくどがっ、ぐしゃっと歩いて山頂付近までやってきた私ですが、

クレールが何かあると匂わしていた山頂付近で洞窟の入り口を発見しました。

比較的発見しやすい位置にあったのですが、角度によっては木の影になるようでして。

だからこれまで私が山を見回っても発見できてなかったようです。


見た目は普通の洞窟の入り口でしかないのですが、

しかしそこは自然にできた洞窟ではないとなぜかはっきりと分かります。

何か空気が違うのです。

私としては村での異変はこれが原因なのでは?と考えています。

ダンジョンは私はなぜかわかるのだけど、あの女神様に頭に詰め込まれた知識では

こういった洞窟型のダンジョンは普通の洞窟と外から見ただけでは分からないらしいので。

ダンジョンで一番の特徴の魔物がいるという事も、普通の洞窟だって魔物が巣穴にしていることもあり、

罠とかを見つけて初めて分かるようなものになっています。

村人が普通の洞窟と思って入ってしまったという可能性は結構高いと思われます。

これも頭に詰め込まれた知識なんですけど天然の洞窟は貴重な薬草などが生えていたりすることが多ので、

薬を村の特産としているから、取りに入ってしまったのでしょう。


そうなるとダンジョンの中ではなく、森の中で血の跡を見たという証言はどうなのか疑問なのですけど、

少なくともこのダンジョンが原因の一つであろうことは間違いないと思います。



取りあえず私はこのダンジョンに入ってみようと思います。

これもなぜか分かることだけどこのダンジョンはできてからまだ間もたっていないダンジョンです。

つまり階層も浅く、魔物も比較的弱いはずです。

私の脅威になることはないでしょう。
















「あーもうっ、どうしたらいいのっ!!」

今、私はすごく困っている。

剣でリザードマンみたいな魔物を殴りながら考えこむ。

殴られたリザードマンは壁にまで吹っ飛び活動を停止する。

足元を狙ってきた可愛くない小汚しいコボルトをボールでも蹴るかのごとく蹴り飛ばす。

さっきからうっとおしい音波を発しているコウモリの魔物を剣からスキルで衝撃波を飛ばして落とす。

戦闘は順調そのものです。

というより戦闘は全く問題ありません。

意識してれば高VITのおかげで相手の攻撃はほぼ通らないのですから。

頭に植え付けられた知識では魔力がどうのこうので傷つかないとかあるけど使えさえすればいい。

例え剣で切られようとも私の肌は並みの相手では傷つかないでしょう。

意識していない時はVIT補正がかからないらしいから奇襲にだけ注意といった感じです。

そんなわけで戦闘は余裕なのですが、戦闘をしてるとやっぱり方向感覚が狂う事がありました。


「あー、もうっ、ここはどこなのよーーーーー」


千代田 一葉17歳ひょんなことで「ころさん」になってしまった私ですが、

どうやらダンジョンで迷子になってしまったみたいです。


いえ、仕方ないのですよ。

普通に洞窟探検をするだけでもそれなりに道を覚えるのが大変そうだというのに、

ここはダンジョンですから魔物も、罠もあるわけですよ。

ダンジョンから魔物がもれだすことはあまりないようですが、外に出て村を襲ったらと思うと、

魔物を倒さなければいけないわけで、そうなると戦闘は不可避でして。

森ほど戦闘が多いわけではないのですが、そこはやっぱりダンジョンですからそこそこ魔物がいまして。

そうやって戦いながら進んでいるうちにここがどこだかわからなくなってしまいまて。

しかもしかもダンジョンは現実とは違う空間にあるわけですから位置的にそこは山の中じゃなくて空中だろう、といった場所にもダンジョンは通っているわけでしてますます現在位置を分かりにくくしてまして。

もう迷ってしまうのも仕方がないんじゃないかと思うのです。


迷子と認識したとたんになんだか猛烈に恥ずかしくなってきてしまって色々と言い訳を頭の中でぐるぐる

させながらとりあえず現在私は地下を目指しています。

洞窟型のダンジョンの定番と言ったら普通最深部は地下ですから。


食料は狼の肉を含めればそこそこありますし、とにかく私自身の事は放っておいて、

どうやら村人失踪の原因らしいこのダンジョンを攻略することにしたわけです。

攻略さえしてしまえば後はゆっくり帰り道を探せばいいわけですし。



魔物こそ少ないものの低階層かと思っていたら、そこそこ洞窟が広くて困っている私でした。





















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そうして千代田一葉こと「ころさん」が村人失踪の原因を解決すべくダンジョンを攻略している頃、

森でも動きがあった。

同族同士でさせ、己の強化のために殺し、くらいあう魔物ども。

だから村の近くの森では大小の別なく数えればかなりの数の戦闘が常に行われている。


あるところでは小さな羽虫としか見えないような魔物が大きな狼の魔物を毒で殺し、

あるとこではカメレオンの様な魔物がその舌でからめ捕り毒を持つ羽虫の魔物すら消化する。

あるとこでは狼の魔物の群れがボス争いで殺し合い、

その殺し合いを見つけたうねうねした魔物が漁夫の利を得る。

そんな弱肉強食、殺して喰らう事で魔物は強化される故に強者のみが生き残る森。


だからその森では音の大きさはともあれ、戦闘音がやむことはない。

いや、なかった。



その森は今静けさに包まれていた。

何処からも戦闘音は発せられない。

例え魔物と魔物が出会ったとしても戦闘が起こらない。

しかし魔物達の戦意はおとろえてなどいない。

ではその戦意はどこに向けられているというのか?

それは、


魔物達はゆっくりと移動している。

決まった方向に、一定の速度で、休みなく。

途中続々とそこらにいた魔物が合流し、その魔物の群れは大きく、強くなっていった。

その群れはゆっくりとだが、着実に近づいている、



村へ



魔物到着までの時は刻一刻と近づいて行っている














千代田一葉、アバター名ころさんが順調とはいいがたいもののダンジョンを攻略していく間、

ダンジョンの外では事態は進行していく。


合流を繰り返し、その数は大小合わせれば200に届こうかと言う数にまで膨れ上がっていた。

そこまで大きくなったため、群れが移動すれば大きな音もするし、大地も揺れる。

なにしろ一番大きい魔物は家ほどの大きさもあったのだ。

そんな群れが村に近づいていることを村の人が気付かないはずはない。

・・・・・ないはずであったのだが村人は気づかない。

村人たちには見えていないのだが、魔物の群れは大きなドーム状の膜でおおわれていた。

それが村人たちに気付かせるのを妨げているのだ。


しかしそれに気付いている者はいた。

「ああ、すべて予想通りに進んでいるわね。

 ここまで順調だと逆に不安になりそうだわ。」

しかしその者は村人たちに魔物の群れの事を教える気はなさそうだ。

「ほとんどの女の改造と軽い洗脳は済んだし、準備は完了とみていいわね。

 あとはあの魔物の群れがここの村人が認識できる距離に来るのを待つだけ。

 ヒーローは遅れてやってくるから感謝されるのよ。

 事件が起こる前に解決しては気づかれもしない。」

そう言って女はとてもヒーローや救世主といったたぐいとはとても思えない顔で静かに笑んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ