お姉さまとお義兄様
「お姉さま、今日の案内はお任せください!」
「ええ、カルメ。期待してるわ。」
ええっ!カルメ(昨日助けた子)とクレール(昨日妹になった子(偽名))の間に何があったの!?
なんかカルメのクレールを見る目がやばいんだけど。
こう、とろけてるというか。
寝る前は兄妹の設定を考えたりでずっと私と一緒にいたし私が寝てから何かあったとしか思えない。
そういえば朝、私が起きた頃に玄関のドアが開いた音がしたような。
取りあえずこの二人の間には居たくないし後ろからついて行こう。
ああ、そうそう。昨日アイテムボックスに入れた狼だけど毛皮はごわごわだから売れないし、
肉もまずいからよっぽど食糧に困ってるときぐらいしか食べないらしい。
おそらくアイテムボックスに死蔵されることになるだろう。
ああ、あとアイテムボックスはこの世界の人にはない恩恵らしいから、
この村では狼が売れるか聞いただけで実物を見せたわけではない。
森の中で狼を倒したのですが売れる部位ってあったんですかね?っていう感じで。
アイテムボックスを隠す方向で行くからあのでっかい熊、マーダーベアとか言ったのも
残念ながら人力で運ばなければならなかった。重くはなかったけどかさばるし、
あまりひっかけすぎると毛皮が傷つくから気を付けないといけなかったし、めんどくさかった。
「分かりました。それじゃあ今日は昨日売ったマーダーベアの代金を受け取りに行きましょうか。
たぶん村にある現金だけじゃ払いきれないと思うんで現物でもらうか、
毛皮をここで日持ちする程度に処理してもらって、街に持って行って自分で売る事になると思います。
という訳で移動しますよ、お義兄さん。」
「はい、わか・・・って、ちょっと待った。」
歩き出そうとしてるのを止めると不思議そうにこちらを見るカルメさん。
「はい、なんでしょう?
あっ、現物がどういうものかですか?この村の特産は薬ですよ。
ここら辺でとれる薬草を軟膏とか丸薬にしたものでここら辺の村の薬は結構有名なんですよ。」
「いや、そういう事じゃなくて、そのお兄さんっていうのは?」
クレール(偽名)は昨日妹という事になったけどカルメさん、あなたは妹にした覚えはないんですが。
「ああ、そんな事ですか。
お姉さまのお兄さんですからお義兄さんという事ですよ。」
ああ、なるほど。クレール(偽名)のせいですね。とりあえず放置で行きましょう。
「分かりました。行きましょうか。」
「おお、カルメ、旅のお方。ちょうどいい所に。」
「おじいさん、どうかしましたか?」
カルメとおじいさん(ギルド派出所職員だけど実質ただの村長)が話し始めたので、
こちらもクレール(偽名)に話を聞きます。
「ねえ、カルメに何したのさ?」
そう聞くとクレールは蠱惑的な表情をして言った。
「少し体をいじっただけよ。」
「あ、あー、そう。」
想像してたけどこうもはっきり言われると、ちょっとね。
多分耳まで赤くなってるんじゃないかな、私。
そんな私を見てクレールが軽蔑したような表情を浮かべる。
「何を想像してるのよ、変態。
私が言ったのはカルメが強くなるように体を改造したという事なのだけど。」
「あっ、そ、そうなんだ。」
うわー、恥ずかしい。私ったらすごい勘違いを。
そもそもクレールはちっさいしね。そういう方向に行くはずないよね。
「お姉さま、お義兄様、折入って話があるそうですから家の中に入りますよー。」
「分かったわ。」
クレールがカルメに答えてからぼそっと言った。
「まあ、してないとは言ってないけど。」
「へっ?」
チロリ、とクレールの赤い舌が唇をなめた。
しばらくして再起動した私は置いて行かれたことに気付いて慌てて家の中に入ったのだった。




