とらうま
ここは・・・・・・ああ、両親の寝室か。
両親が床に転がっている。多量の血を流しており、もう助からないことは明白だ。
さらに、両親意外にもう一人床に転がっている。その人物も両親と同様に多量の血を流している。
そこまで認識したところで僕はかなり気分が悪くなった。
それと同時に悟る。ああ、これは夢だと。
小学校六年生ぐらいの事だった。
僕の容姿は初対面の人には女子に間違われるぐらい男らしくなかった。
さらに、僕は運動も苦手で、よく室内で遊んでいる事も相まって、女男とか呼ばれてからかわれていた。
僕はあれはいじめだったと思ってるんだけどどうなんだろう?
その時の先生はからかわれてる人がいじめだと思ったらいじめだと言ってたけど、よく分からない。
からかってる方もだけど、からかわれてる方の僕としても、
どこからいじめなのかっていうのは明確に線引きしにくかった。
ただ、つらかった、という事実のみだ。
先生は見ていたら指導するけど、見ていないところの事は本当にノータッチだった。
そんな先生が、体の事で相手をからかうのはしてはいけない事だ、
って言ったところでいかほどの抑止力があろうか?
その日もいつものごとくお決まりの男子生徒たちにいじられて、
それで、むしゃくしゃした気分のまま、一人で家に帰ったという記憶がある。
「ただいまー、おかあさん、なんかお菓子有るー?おかあさーん。」
返事の声は聞こえない、音楽でもイヤホンで聞いているのかトイレだとこの時は思っていた。
しかし、僕はなにを思ったのか両親の寝室に向かって足を延ばしていた。
普段とは違う匂いを無意識のうちにとらえていたのか、はたまた少しオカルト色になるが何かを感じていたのか、とにかく僕はそこに行ってしまった。
さすがに寝室の前まで来ると、
何かがおかしいと分かったから僕は慎重になって、少し空いていたドアの隙間から覗いた。
そこで見たのは水たまりを作るほどの血を流しながら倒れている両親と、
ボーっと突っ立っている男だった。ボーっと両親の事を見ていた。
そして急にわらいだした。笑っているのか、嗤っているのか、分からないけど。
それを今度は僕がぼーっと見てた。
そして気づいたら、床に倒れこんでいるのは三人になっていた。
両親と三人目は少し違ったけど。三人目はまだ動いていた。ただ助からないというのは僕でもわかった。
両親から出た血の水たまりにさわってみた。
まだ生温かい。両親のぬくもりが残ってる気がした。
なぜか手でしかさわってないのに顔とか上着にも血がついていた。
ふと周りを見渡してみた。誰もいなかった。
三人目を作った人はどこに?
寝室の窓を見てみた。開いてなかった。玄関のドアを確認しに行った。鍵がかかってた。
他の部屋の窓も確認しに行った。どこも開いてなかった。
じゃあ、三人目を作ったのは誰?
三人目を前にして疑問が再度浮かび上がる。
気づいたら僕の手には血に塗れたナイフがあった。
カラン、とナイフが僕の手から滑り落ち床に落ちた音がする。
ぼく、もしかして僕?
気づいた。気づいてしまった
鋭利なもので肉を貫く感触を覚えている。
ああ、もう嫌だ。
僕は現実に耐えられなくなり、その場でうずくまって寝た。
ーといった事を上から見下ろすような視点で見た。
けどまだ夢は終わらない。何が起こるんだろ?
現実では気づいたら警察の人がいて、そのあと事情聴取を受けたはずだけど、ここは真っ暗だ。
と思ってたら三人の人影が出てくる。
「俺はおめえに殺された。一生呪ってやる!」
「もうちょっと早く来てくれていたら俺たちは死なないですんだのに!」
「なんていう役立たず。こんな息子を生んで恥ずかしい!」
えっ、う、え、えーっと
「なんで殺すんだよ。殺すことはなかったじゃないかっ!」
それは気づいたら殺していて
「なんでもっと早く帰ってこなかったんだ!」
男子たちにいじられてて逃げ出せなくて
「なんであなたは生まれてきたの!」
・・・・・・・
「お前は人殺しだ。」
「お前は私たちをも殺したんだ。親不孝者め。」
「あなたは私たちを殺したんだわ。死神め。」
ちがう
「人殺し」
「親不孝者」
「死神」
ちがうちがうちがう、ちがう
「ちがうっ!!」
気づいたら起きていた。寝汗がひどいし息も荒い。
あれは思い出したくもないものだ。
というか今になっても急に思い出して気分が悪くなることがある。
ひどい時はしばらくうずくまってしまうほどだ。
取りあえず顔洗おう。