娼館での生活
体の左側に人の体温を感じます。
きっとネルヴァでしょう。
あれ、そういえばいつ寝たんでしたっけ?
確かスタンピードをどうにしようとして、行動して、スタンピードは一通りおさまって・・・・・・・
まあ、いいでしょう。
いや、ああ、そうだ、思い出しました。
魔力切れで気絶したんでした。
それでネルヴァがベッドまで運んで寝かしてくれたのでしょう。
それでいつもの如くネルヴァが添い寝してくれているということなのでしょう。
うん、いい傾向ですね。
私が言ったからではなく、自分から添い寝するようになったということは。
どうもネルヴァにはゲームの時の癖なのか私の命令がなければあんまり動かないという事があるのです。
私が考えて行動するようにって言ったら結構直ってきたけどまだ癖として残っていましたので。
それが改善されてきているというのはいいことです。
・
・
・
・
・
・
あれ?私スタンピードの時にネルヴァの召喚を解除しませんでしたっけ?
あれ?あれれ?
じゃあ、私の感じているこの体温は?
・・・・・・
知らない人の寝顔だ。
けど不思議と恐怖は感じません。
あの聖者の腕輪をつけてから人と触れ合うこと自体が恐怖だったのに。
一回ネルヴァと間違えたからでしょうか?
怖いという感じはなく、むしろ安心します。
けどやっぱりネルヴァの方がいいです。
ああ、その前に護衛としてビッグスライムを召喚しましょう。
ネルヴァも私と一緒に寝るんだから瞬時には対応しにくくなります。
だからその間の壁役としてです。
私は手をさっと振ります。
すると目の前で淡い光が起こりビッグスライムが召喚されます。
・・・・あれ?詠唱は?
自分でやっておきながら驚いています。
というかなんなんでしょう?
【魔法、召喚、スラ】というのか、もしくは個体名ではなく種族名の方で【魔法、召喚、ビッグスライム】といった感じの詠唱が必要な感じなのですけど。
なんだか自然に、そう、ただただ手を前に出したといったぐらいの出来て当たり前の行為をしたといった感覚でビッグスライムを召喚していました。
今も他の召喚魔法でもできるという確信があります。
この問題は置いといて、とりあえずネルヴァも召喚しましょう。
手をさっと振ります。
淡い光だけが立ち上ります。
失敗した。そういう感触が伝わってきます。
この召喚方法がいけないのでしょうか?
ネルヴァは他の召喚体と違って自我が有ったりと、特別なので失敗したのでしょう。
元の召喚方法で行きましょう。
えーっと、連々はつけてないから
「【魔法、召喚、ネルヴァ】・・・・・・・・・・えっ」
またも淡い光が立ち上るだけです。
「ネルヴァ?」
ネルヴァが召喚できない。
その事実が私を追い込みます。
この異世界に来た時からずっと、私はネルヴァに依存していました。自覚していました。
そのネルヴァがいない。
頭の中にある光景が浮かびあがる。
ぼろぼろのネルヴァの顔、そして淡い光。
ゲームの中で何度か見た光景。死亡時のエフェクト。
そしてこの世界はゲームではなく、現実である。
そう認識したときソニアの見える世界は一変した。
それまで何の変哲のない壁だったものが、自身を閉じ込め圧迫する壁となり、
ふかふかのベッドは、自身をからめ取ってくる存在となり、
空気でさえ、とげとげしいものに感じた。
今、ソニアは一人だった。
 




