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キミボク  作者: きつねさん
中立都市へ
28/51

スタンピード 収束

《ギルド》


「で、あれは何処からの援軍だったんだ?

 テイマーの商会からか?いやあそこは職員が少し残ったが他の奴らはほとんど逃げ出したはずだろう。

 探索者達の中にあんな強力な魔物を使役出来るやつなんか聞いたことないぞ。

 テイマーなら連れてる魔物から少しも噂にならんという事はねえだろうし。一体何もんだ?」

ギルド長が小さい傷に手当てをしながら副ギルド長に聞いた。

「テイマーの商会は逃げましたよ。

 まあ、完全に支配下に置いてない商品が暴れ出しても邪魔でしたのでそのまま見逃しましたが。

 それからあの援軍ですがひとつ気になるところが」

ギルド長が本来処理するはずの物も含んだ大量の書類を処理しながらギルド長の問いに副ギルド長が答える。副ギルド長は何か気になることがあるようだ。

「なんだ、言ってみろ。スタンピードが終わってから向こうさんから何の話も来ねえ。

 あれだけの働きをしたんだ。多額の金を要求してもおかしくねえってのに。

 今は少しでも情報は欲しい、行ってみろ。」

「では言いますが、消え方がおかしかったのです。」

「消え方、だと?たしかに知らねえうちにどっか行ってたな。」

「いえ、私は後ろから見ていたので分かったのですが、あの時の増援はスー、っと消滅しました。」

「魔物をテイムしたってんなら死んだら普通消えるだろ?」

「そもそも死ぬような傷どころかかすり傷すらうけていません。

 それに他の所でも同じような報告が来ています。」

「テイムじゃねえってのか?」

「分かりません。」

いったん作業の手を止め、二人して考え込む。


「・・・・・・・なにかテイマーの秘術的なものでなんかこう、命を燃やす的なことしてたんじゃね?

 それならあの強さも納得だし、いや、納得するには強すぎだが、それでも一応筋は通ってるぞ。」

「確かにそれが一番現実的に思えますね。それにしても強すぎですが。」

確かに、スタンピードの後半は探索者たちは高位のもの以外は傷すらつけられなくなり役立たずとなって、一部物資の補給以外の者たちは撤退していた。

そんな中相手の強さなど関係ないとばかりに魔物達を屠っていたあの強さはありえない。

もはやこの世の強さとは思えない強さだった。


「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」


「まっ、考えてもしょうがねえ。今は今できることをしようぜ。」

「そうですね。あの謎の援軍への対処もいずれ必要でしょうが後にしましょう。

 ではギルド長、手当も終わったようですし自分の分の書類は自分で処理してくださいね。」

副ギルド長の指し示すところには大量の書類が。

しかし副ギルド長に文句は言えない。ギルド長の優に二倍以上の書類が彼の前に積まれているのだから。


「なあ、職員増やさねえ?」

「増やしてもいいですが、ギルド長の分はほとんどギルド長のサインが必要な物とか、

 一般の職員には任せられない重要度のものばかりですのでギルド長の負担は軽減されませんよ。」

「じゃあ、いいや。職員も仕事量に苦しめばいい。」

「いい性格してますね。」

「おう、歓楽街の嬢ちゃんによく言われる。」

「それっはお世辞です」


スタンピードが起こったというのに平和だった。

あの増援がなければこうして笑いあうことはできなかったであろう。

そこは感謝するギルド長だった。


「後お世辞じゃねえからな。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《職人》


今回のスタンピードでの損失をどうにか取り戻そうと、どこの職房でも慌ただしく、活気があった。

その様子を眺めて親方は満足げだ。

その親方の目に不可解なものが映る。

ちまちましたのが大の男たちの間を時折駆けていくのだ。

その小さな腕いっぱいに抱えるのは何かの材料であったり、何かの工具であった。

他にもそうやって物を運んでいる大の男たちはいる。その男たちから変わったものを見る目で見られているのだが、そのちまちましたのはそんな事まったく気にせずに駆けていく。

親方は自分の疑問を晴らすべくそのちまちましたものに声をかける。


「嬢ちゃん、なんでここにいんだい?」

「手が足りないようだから、手伝い」

「おう、手伝ってくれてるってのは見れば分かるが何で手伝ってるんだってんだ。」

「・・・・・・・」

ヒスイは少しためらうようにしてから言う。

「命、救われたから」

その言葉に親方は温かい目をして頭を撫でる。

親方としてはこんな子供を助けるのは当たりまえの事だが、その子供は一丁前に恩義を感じこうして返してくる。何とも温かい光景よ。

「あとついでに就職」

次の言葉がなければ。

今回のスタンピードでヒスイはパーティーメンバーのすべてをなくした。

ダンジョンに潜るにはヒスイ一人では心もとない。ダンジョンに潜れもしない探索者。

もともと収入の安定しない探索者であったが、今は潜れないので無職も同然。

ここで雇ってもらえるのならもうけものだ。


そんな考えが透けて見えたのだろう。親方の頭を撫でる手が止まる。

目もジト目と言われる風になっている。

それを見たヒスイは親方のたくましい足にぴとっ、と抱き着く。

「・・・・・なんだ?」

「色仕掛け?」

首をかしげながらのヒスイの言葉に親方ははぁ、とため息をつく。

「仕方ねえ。こんな()()が路頭に迷うってのも忍びねえ。こんな()()がな。

 しょうがないからそんな()()を俺が雇ってやる。知らねえ仲でもねえしな。」

やたら子供を強調する親方であった。

色仕掛け?にはなってなかったが子供という武器は十分発揮されたようだった。

子供、子供と連呼されたヒスイは顔をうつむかせる。

そして親方の見えないところでなんとも悪そうな顔で笑う。

どうやら本気で色仕掛けするのではなく、情と子供という武器を使った作戦だったようだ。


孤児だった彼女は生きるのに精いっぱいだった。

そんな彼女は自分の子供らしさも嫌いなものではなく、ただただ使える手札程度にしか思ってないのだ。

親方の嫌味は通じずただただヒスイが親方に雇ってもらったという結果だけが残った。


ああ、あとこの時の出来事が変な風に広まり、親方が子供の色仕掛けに負けて子供を雇った、

という風になり一時期親方のロリコン疑惑が出たがどうでもいい話だろう。


一番弟子に「たとえ親方がロリコンだとしても俺は親方について行きますから。あっ、でもそういう店とかはちょっと・・・・」とか言われてショックを受け部屋に閉じこもったことも気にすることはない。

ちなみにそういう店とは法律で色々と禁止されてないこの都市にあるちょっとマニアックな人向けの夜のお店で()()から大人まで色々なにかができてしまうような店の事である。


さらにさらに、その部屋に閉じこもった親方を外に出るように説得できたのもヒスイだけであり、

もはや親方の弟子たちに親方はロリコンである、と認定されたのも別に何の問題もないだろう。




ああ、親方に幸あれ




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《歓楽街》


「ファミリーのみな、お疲れ様。

 これからはしばらく治安が悪くなると予想できるから気を付けるように。」

汗や疲れが浮いていてもなお妖艶な女が他の者たちに告げる。

それに皆が胸の前に一文字を書いて答える。それに女も一文字を書いて答える。

粛々とスタンピードの後片付けがなされる。

そこに混乱はない。


「あの増援はなんだったのか?探索者ギルドに聞こうも向こうから問い合わせが来る始末・・・・・

 ファミリーを救われたこの恩には何らかの形で報いないと、と思っても誰かも分からない。」

「調べますか?」

女の直属の部隊の隊員の一人が聞いてくる

「いや、向こうが隠してるっていうならこちらが探るのは恩知らずな行動だと思わないかい?」

「はっ、これは浅慮でした。」

「まあ、今は皆、混乱してるからね。今も私がここにいるから何とか持ってるようなもんだ。

 これから私は私が無事だっていう事を知らしめるのも兼ねて見回りをしてるよ。

 護衛はいつも通り蔭からだけでいい。」

「はっ、そのように。」

女は宣言通り見回りに行こうとした。

その時遠くから爆音がした。

「っ、あれは歓楽街の方・・・・・・よりかもっと向こうか。いや、よくないね。

 町の離れも離れの所とはいえ。一応何があったのか探りに私は先行する。

 護衛は後からでいい。爆発音があったほうに送りなさい。」

そういって駆け出してしまった。

それに慌てたのは隊員だ。

トップである彼女が強いのは知っているが、それでも一人にするわけにはいかない。

普段から護衛につけている者に連絡すると隊員も走って爆音のあった方へ走って行った。



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