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キミボク  作者: きつねさん
異世界転移
11/51

町長

たらり

冷や汗がたれる。

わしの目の前にはえらい不機嫌そうな顔をした者がおる。

容姿はかなり整っており町を歩けばほぼ全てのものが振り返ると予想できる。

わしもこの状況でなければはたから眺めていたいほどじゃ。

残念ながら今はそんな状況でもないが。





事の始まりは町の外を走ってくる人族を見つけたと若い衆がいきり立っておったことじゃ。

わしは人族に対して、いや人族個人に対しての恨みはない。

じゃから女子供であったら殺さずに

必要最低限の荷を残して取るぐらいですませてくれんかと若い衆に頼んでおった。

若い衆は相手が軍人であれば女子供でも容赦はできんがそうでなければ殺したいという訳でもない、

と言ってわしの言う事を聞いてくれておった。

女子供とはいえ人族との戦争中の今、荷を放っておけばいずれ人族の力になる。

放っておくという選択肢は取れんのじゃ。許しとくれ

幸いここは辺境。

人族との戦争の影響は少ない。じゃから人族を恨んでる者も少ない。

やりすぎたりせずに荷を取ってくるじゃろう。

じゃから今回もそうなるじゃろうといった予想じゃった。

じゃがそうはならなかった。

なにやら時間がかかっておるようじゃから様子を見に行ったら、

そこには淡々と若いのの一人を(さいな)みいろいろ聞きだしてる女がいた。


女の傍らにかなり容姿の整った小さい子供がいたがそれは明らかに人畜無害そうじゃった。

女の行為を見てられないのかあらぬ方向をむいておったし、

首輪と裸足から判断するに奴隷の様じゃったから。


若いのはなにをされたのか分からぬが顔が真っ青じゃった。

女に聞かれたらなんでも答えてしまいそうな程に。


「〈お若い方たち、どうか矛を収めてはもらえないだろうか?〉」

さすがになんでも聞かれては事だ。

わしはまずい質問がされる前に横やりを入れた。


どうにか兵を殺さない様にしてもらう事はできた。まあ、ひとまずでしかないのじゃが

それから町から少し離れた小屋に案内した。

ここでなら本来話してはいけないことだって話すことができる。

門の近くでは誰に聞かれるか分からん。

わし一人が罰せられるならまだしも、それを止めなかった罪で若いのが罰せられてはまずい。

わしらの街の脅威は基本的に人間ではなく魔物じゃ。

その魔物をどうにかしている若いのがいなくなったら町は滅びかねん。

伊達に人間と戦争していながら、税が上がった以外の影響がない辺境ではない。

他の所から応援の人員を引っ張ってくる事が不可能じゃからのお。

心配なのはわしの子や孫にまでわしの罪で罰せられることじゃが、これはどうにもできん。

誰かがこの役目をやらねばならんのだ。


それならば今目の前にいる女に対して嘘をつくことはできん。

正直この者に対して隠しごとをして機嫌を損ねられたらかなわん。町が滅ぶ。

わしは決死の覚悟でそこにおった。

じゃが聞かれるのはきっかいな質問ばかり。

一年が何日だの、どんな生活をしているだの、神についてだの。

ちっとも戦争に関することは聞かれん。

戦争に関することで聞いてきたのも人族の街でも普通に分かるじゃろうといった程度の事ばかり。

一番それっぽかったのでは獣人の軍の中での上層に値する者達の事を聞いてきおったが、

辺境のわしらには知る事ができんことじゃったから答えられんかったし。

じゃからそれについてはとりあえず首都に行けば分かるやもしれん、と答えておいた。

お互いの首都の位置は人族、獣人族共に知っておるでな。答えても問題はなかろう。

後軍事関連じゃとこの町の兵の強さが

国全体の兵の練度からしたらどれくらいに位置するのかと聞かれた。

この町は辺境じゃから魔物が町を襲っても他の街からの応援が望めないから結構な強さを誇っておる。

それが簡単に蹴散らされたのじゃからこの女の強さにはびっくりじゃ。

その事を伝えるとびっくりしたような気配が伝わってきた。

そりゃあ、あの強さと比べたらすべての兵が弱者だろうさ。



わしも質問に答えるだけではなく情報収集もしておった。

どうやら、この女の連れている子供は言葉を介さないらしい。

いや、女とは意思疎通を図れてるようじゃから言語が違うのやもしれん。

じゃが基本的に言葉は人族だろうが、獣人だろうが変わらん。

それとは違った言語体系となると、よっぽどの秘境にでも住んでおったのかもしれん。


それにこの幼子は愛玩用じゃろう。

首輪をつけている奴隷にもかかわらず、女が時折やさしい目で話しかけておる。

判断した理由はそれだけではない。

こんな幼子の奴隷など持っていても余計に手がかかるっていうのが落ちだ。

明らかに戦闘はできなさそうじゃし、肌や髪も綺麗で、身に着けている物も高級品。

むしろ高級品をつけているのに裸足なのが不思議なくらいだ。

いや、よく見ると足が魔力で覆われて傷つかないようになっておる。

おそらく足環の効果じゃろう。となるとあの足環も魔道具。

足が傷つかんようにと言う効果だけの魔道具などオーダーメイドでしか作れんじゃろうに。

これも、ふぁっしょん、というものか。確かに靴を履いてないのが自然に見える。

じゃけどそのためだけに魔道具を作らせるとは。

この女、この幼子に相当な金をかけておる。

さらにたまに見える手のひらも水仕事をしてるようには見えん。

身の回りの世話もさせてない様じゃな。完璧な愛玩用じゃ。


女の情報で言えば、

秘境の言語を女も操っていることから秘境とそれなりに関わっていることが分かる。

いや、秘境の出身かもしれん。

そうであれば様々なことに説明がつく。常識的な事をいろいろ聞いてきた事とか。

であれば此度の戦争で人族側に付く義はないはず。

どうにか戦争にかかわらぬように説得はできないものか・・・・・・・・


「〈のう、聞きたい事を一通り聞き終わったのであれば聞いてほしいことがあるのじゃが。〉」

女は子供に何か話してから答えた。

おそらく先ほどから手持無沙汰気味な子供を言い含めたのだろう。


「〈なんでしょう?〉」


「〈戦争までの経緯です。なぜ戦争が起こったのか〉」

私は語った。戦争の原因。人族の行った非道な行為を


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