町へ向かう
なな、金縛り?体が動かない。
目をこすろうと手を動かそうとするけど動かせない。
仕方ないからしょぼしょぼする目を開けてみた。
なんと目を開けてみるとネルヴァの顔がドアップで。
あー、ネルヴァにがっちりつかまれちゃってるんだね、それで体が動かないと。
あれ、召喚体って寝る必要ないんじゃ・・・・・・・
まあ、いいか。このまんまもうちょっと寝よう。
「ふぁーあ、あっ、ネルヴァおはよう。」
「おはようございます。
あの、寝にくかったりしなかったですか?その、いつの間にか抱き着いてしまっていたみたいで。」
「んー、別に。まだ暑い季節じゃないし。」
私の顔色を窺うようにネルヴァがおずおずと聞いてくる。
子供が親に怒られないか顔色をうかがってるみたい、と想像してしまってちょっと笑ってしまった。
ああ、そうそう、多分だけど寝ないでいいのと、寝れないのとは別っていう事だと思う。
まあ、どうでもいいけど。
そうだ、昨日はそのまんま寝てしまったけど、服どうしよ?ん、服?
この服は私のゲームの中での本気装備だ。装飾品もすべて最後にログインした時のものだ。
服は白いワンピース「聖女の衣」、
効果は着ている間聖域という結界(と言うか障壁?)をはることができるというもの。
物理、魔法、両方に有効で、最大の範囲は私を中心にだいたい二、三メートルぐらい。
肌のところギリギリに出したり、と二、三メートルまでだったら好きに変えられる。
さらに、出現方法だけど、私の肌のところからだんだん広がっていくのと、決めた場所に現れるのと二種類あって、使い分けをするとかなり便利だった。
障壁を相手にぶつけて弾いたり、連続して障壁を展開して少しづつ威力を減衰、最終的には止めたり。
腕輪は赤と黒の中間の色合いで輝いてるようにも全ての光を吸収してるようにも見える不思議物質で、
装飾も宝石もついてないシンプルな物「悲哀〈散〉」
これはMPの最大値を大幅に上げてくれる。
ゲームでは疑問に思わなかったけど、なんでMPの最大値が上がるのか疑問に思って、
昨日検証してみたけど、着けている人の余剰MPを腕輪に貯めてるみたい。
外付けの予備バッテリーみたいなものだと思う。
足環も腕輪と同じようなもので「悲哀〈華〉」
こっちはMPの自然回復量を大幅に上げてくれる優れもの。
こっちは自然から何かを吸い上げてるっぽい。
ちなみに腕輪と足環は同シリーズで、両方着けてるとボーナスで効果が上がった。
名前を繋げると「悲哀散華」となる。意味的には、悲しく哀れにも若くして戦死するっていう感じかな。
綺麗な黒色のシンプルな髪飾りも着けている。
効果は状態異常をほぼすべて無効にしてくれる。
名前は「公平な無公平」。製作者のプレイヤーは「ほぼすべての状態異常を公平に無効化する、他のプレイヤーとの差が無公平だと思える程のヘアピン」と名前を付けたかったらしいが、
文字制限で付けれなかったらしい。文字制限あってよかった。
後、無公平じゃなくて不公平だと思うんだけど、なぜそうなのかは知らない。
後は装備型の召喚体のサンちゃんが銀色の指輪で、連々の黒いチョーカーだけ。
これですべて。そう、これですべてなのだ。
これは大問題である。
靴は聖女の衣の条件で付けられなかったからない事に問題はない。
昨日足を魔力で覆ったら傷つかないって分かったし。
だけど・・・・・・・・・・
ところで全く関係ないことだが、血みどろ失楽園ではインナーの設定がない。
スカートを穿こうが、どうしようが、インナーが見えることはない。
黒い靄がかかってパンチラなどは完全に防御されるのだ。
血みどろ失楽園の男性陣を泣かせた設定だった。
まあ、俗にいう見せパンとかいう類の例外事項はあったけど私の装備は違ったので省く。
私の身に着けている物はすべてゲームに準拠している。
つまりそういう事なのだ。・・・・・まあ、ぶっちゃけるとノーパンだ。
うわあ、昨日のうちに気付くべき事項だよ。いや、確かにいろいろと精神的に参ってたけどさ。
それでもねえ、普通は気づくでしょ。ワンピースだし。まくれたら丸みえじゃないですか、やだー。
はあ、早いとこ町に行って下着買わないと。
・・・・・あー、町にはトイレあるよね。
けど、遠いからなあ。仕方ない。そこらで済まそう。
・・・・・・・・・・・・・私は固まった。
私は私であると一応認識している。
僕ではなく、まして要ではないと割り切っている。
そうしたほうが精神的にも楽だし、向こうの世界に対してもあきらめがつく。
けど、完璧に割り切れてるわけではない。
そして断じていうが、僕はロリコンではなかった。
MAG優先で女形のアバターにすると決めた時にソニアのような幼い子にすると決めたのは、
自分と同じぐらいの歳だと、自分の好みのタイプの女性を他人に教えて回ってるようなものだと思って、
小さい子にしたというだけだ。
この状況、元男としてはどうしたらいいのか・・・・・・・・
幸い、と言うにはおかしいが、下着を下ろすという第一の難関はない。
しゃがんで服をまくれば大丈夫なはずだ。
ただ、何か間違ってるかもしれない。
そんな事の正確な知識を元男子高校生が持っているはずはない。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥っていうし。
「ネルヴァー、ちょっと来てー。」
「はい、なんでしょう?」
「その、ね・・・・・・・・」
私の顔は真っ赤に染まっていたと思う。
やばい、ネルヴァの方が見られない。
無事に無事だったんだけど、その、ね。ちょっと気まずい。
紙で拭かないといけないっていう事は知ってたから拭こうとしても紙がなかったから、
ネルヴァに魔法で洗ってもらうことになってしまったし。
この年で下の世話をしてもらうことになるとは。
「【送還、スラ】【送還、お菓子の家】【送還、コン】【送還、ルフ】」
ぶんぶんと頭を振って思考を入れ替える。
まず移動用の布陣に変更する。
モコに前を走らせて、ヤタが空から警戒、ネルヴァにおぶってもらって移動するつもりだ。
キューはちょっと実験のために送還しない。維持コストは無視できるくらい安いから問題ないし。
召喚体との感覚ののシンクロとか後他にも色々と有効射程の確認だね。
「・・・・・・ネルヴァ、あっちの方に街があるから、私をおぶって走って。」
「はい、分かりました。」
ネルヴァがしゃがんで背中を見せる。そこに乗っかってしっかり捕まる。
「ご主人様、失礼します。」
断りがあってからネルヴァの腕が膝を抱えて手が私のお尻の当たりで固定する。
ネルヴァの手が当たった時私の体が思わず、びくん、ってなった。
始めはゆっくりと、そしてだんだん早く。ネルヴァは走り出した。
ネルヴァの方のところに首を置いて、風を楽しむ。
「ネルヴァ、もっと速く。」
わくわくした私の声が聞こえる。これは少し、いや、かなりいい。
何かネルヴァが返事した。風であんまり聞こえない。
けど、私の言ったことは伝わったことは分かる。
ネルヴァの走る速度が上がった。
「はは、あはははは、いいきもちっ」
今、この時私は風を感じていた。この時だけ、私は風であった。
「はあ、はあ、はあ。」
「ご主人様、失礼します。」
ネルヴァが汗をぬぐってくれる。
もう、恥ずかしさでネルヴァの顔が見れないなんてことはない。
あの風との一体感の楽しさと、現在の疲労によって。
と言うか、楽しさがなくても体力的に今、そんなこと気にしてる余裕はない。
現在私は草原にへたり込んでいる。
今この時、私は疲労で体を一ミリたりとも動かそうとは思わなかった。
やばい、この体の体力なめてた。私自身は走ってないのにネルヴァから伝わってくる振動だけできつい。
そんなに強い振動じゃなかったし、長い間その振動にさらされてるわけでもなかったのに。
というか、むしろ時間的には短かった。
やっぱり体力はVITが関係してるのかな。VITにステ振りしてなかったし。
ああ、けど一応STRとAGIも関係ありそう。どれも身体的なものだし。
どっちみち振ってないけど。私魔法職だし。
まあ、普通は魔法職でもAGIとVITには振るもんだけどね。私のステ振り特殊だったし。
どうしよ。この移動方法は厳しいね、私の体力的に。
ゲームの時どうやって移動してたっけ?
たしか、装備型の召喚体の「コウ」でSTRとVITを底上げして、
スレイプニルとかユニコーンとかネルヴァの狼形態に乗ってた。
ネルヴァの狼形態で乗ると、ロデオマシンみたいで面白かったなあ。
って、装備型の召喚体でVITを底上げしたらよかったじゃん。
ただなあ、VITとか、STRを底上げする装備型の召喚体ってだいたいごつごつしてるしなあ。
例えばフルプレートメイルとか。
ゲームの時はそれでもギリギリ問題なかったけど、現実になったからなあ。
召喚可能リストでいいのがないか探そ。
「コウ」はガントレット型でごついからパスでしょ、これはフルプレート、これは兜、
これはスケイルアーマー、ってほんとにろくなのないな。
日常で身に着けるにはごつすぎ。
あっ、これは行けるかも。
けど、コストが高すぎるなあ。
装備型だから召喚コストに比べたら維持コストは格段に安い。比べたら安いけどそれで十分高い。
召喚体の中では別格であるネルヴァの次ぐらいに維持コストが高いのだ。
安い維持コストでそれなので召喚コストは当然ネルヴァを超す。
MPが心配だけど、とりあえず今はこれでいいか。あんまり時間を取って街に入るの遅くなっても嫌だし。
「【召喚、天の祝福】【送還、サンちゃん】【送還、モコ】【送還、ヤタ】」
少しMP残量が心配だったから他の召喚体は全て送還しておいた。
驚くことに天の祝福とネルヴァを召喚してるだけで、私のMPの自然回復量に迫ろうかというのだ。
連々も着けてるけど維持コストは無視していい程度だし。
「天の祝福」は装備型に分類されてるのだけど、かなり特殊なものだ。
召喚体にはプレイヤーが名前を付けれるのだが、この召喚体は名前を付けることができない。
そもそも、この「天の祝福」に実体はない。したがって装備という言い方も間違っている。
ただゲームの分類上仕方がなく装備型の召喚体となっているだけである。
その効果の一つ目が全ステータスの底上げ。その底上げ量が半端ではない。
全く戦士系のステータスに一も振ってない私でも、
同レベルの前衛相手にしばらく接近戦で時間を稼げるだけの強化をしてくれる。
二つ目、これはパッシブではなくてアクティブでMP消費で翼を出して飛ぶことができる。
ちなみにこれはAGI依存ではなくあらかじめ決められた速度までしかゲームでは出せなかった。
と言ってもその速度は制御が難しい程度には速かったけど。
三つ目、これもアクティブで、MP消費で武器を作ることができる。
そこら辺が現実になってどうなってるのかは要検証項目である。
「よしっ、ネルヴァ、またおぶって。
今度は強化してあるから、自分でネルヴァにつかまるから。だから今度はもっと速く走って。」
さっき風になった時はネルヴァが私が落ちないように支えとかないといけなかった。
だから速度的にはそんなに速くなかった。
いや、ネルヴァの最高速からしたらっていう事で十分速かったけど。
だから強化した私が自分でつかまる。そうしたらもっと、もっと速く行けるはず。
町についた。正確には町の外壁の門のところだけど。
「ネルヴァ、もういいからおろして。」
「はい、ご主人様。」
降りた途端に私はへたり込んだ。
「ごっご主人様、大丈夫ですか?」
「あーうん、まあ大丈夫。」
ちょっと怖かった。けど決していやな怖さじゃなかった。
例えるならジェットコースター。ただ、こっちは安全装置もないし、振動が直に伝わってくる。
私的にはその怖さもすっごく楽しかったんだけど、ちょっと腰が抜けた。
怖かったけどまた体験したい、今の心境はそんな感じ。
「それでネルヴァ、これどういう状況か分かる?」
「いえ、ちょっとわかりません。」
私達は現在兵士たちに囲まれていた。全員獣人っぽい。こっちで獣人っていうのか知らないけど。
ただ、練度は高くなさそう。いや、技量的には私の方が接近戦では何段も劣るんだろうけど。
印象的には集団戦闘に全く慣れてない感じ。装備もバラバラだし。
まあいいや、ちょっと話しかけてみましょう。
「町に入るにはどうしたらいいでしょうか?
私お金を持ってないので入るのにお金がいるなら現物でもいいのですか?」
モコが狩ってきたのはネルヴァが解体してインベントリに入れてある。
価値のありそうなのを差し出せば、それで済むでしょうか?
「**、*****。********、*********。」
へっ?何語?この集団の中で偉そうな人が言葉を返してきたんですけど全く分からない。
やばいです、まさか言語が違うとは。他の人たちが来たときかなり混乱することが予想されます。
いや、それよりも今はこの状況を何とかしなくては。
「ご主人様どうしましょうか?殺してしまいますか?」
「いや、なんでそんな物騒なことになるんですか。」
驚きすぎて思わず敬語が出ちゃったよ。
「いえ、許し難くもあの者たちはご主人様に荷物を置いていくか、殺されるか選べと言ってますから。」
それは怖いですね。と言うか、山賊の町だったのでしょうか?それにしては大きすぎると思いますが。
あれ?
「ネルヴァ、もしかしてあの人たちの言ってること分かる?」
「はい、分かります。」
「じゃあ、山賊なのかって聞いてくれる。」
「分かりました。〈貴様らに問う、貴様らは山賊なのか〉」
「〈違う、われらはこの町の守備隊だ。貴様らは人族だが軍の者ではないようだな。
ならば荷物を置いていけば 命だけは助けてやる。さすがに女子供を殺すのは忍びないからな。〉」
「ご主人様、あの者たちは町の守備軍だそうです。それからどうも人族を嫌っているようです。」
何か、ネルヴァの怒りゲージ的なものが上がってる気がする。
あの偉そうな人何かネルヴァを怒らすような事言ったのかな。命知らずな。
ネルヴァの方が圧倒的に強いのに。
この場の全員をネルヴァ一人で簡単に倒せる程度に。
ネルヴァが囲まれていても警戒しずに自然体でいても問題ない程度に。
「ネルヴァ、なんで人族を嫌ってるのか聞いて。」
「分かりました。〈人族とあなた達の関係は?〉」
「〈関係?何を聞いてるんだ?お前の言っていることが理解できん。
よく分からんが、われらも暇ではない。
先の草原を走っていた速度からそれなりにやることは確かだろうが囲まれていてはかなうまい。
おとなしく荷を置いて去るがいい。〉」
「〈いいえ、去りません。少なくとも答えを聞き出すまでは。
私はあなた達が人族を嫌うのはなにが理由かと聞いているのです。
敵対してるのですか?それとも差別?もっと直接的に迫害とか?〉」
「〈なぜ、そんな当たり前の事を。いい加減面倒だ。さっさと置いてかないか。
さもなくば犯すぞ〉」
「・・・・・・・・ご主人様、殺害の許可を。」
「えっ、なに?交渉決裂?」
「はい、ですから先手を取りたく思います。許可を。」
「うーん、スプラッタは勘弁してほしいなあ。」
結局モコが狩ってきた獲物たちはネルヴァが解体したし。解体の間、私はお菓子の家にこもってたし。
私自身はそういう方向に適性がないんだよねえ。
「分かりました。」
私の横からネルヴァが消えた。
いや、消えたように見えただけだ。
天の祝福でいろいろ強化されてる私だけど、武術とかはずぶの素人だ。
だから多分自然体から急にトップスピードに移ったネルヴァが消えたように見えたんだろう。
現在のネルヴァの動きは見えている。
獣人の兵隊さんたちをどんどんと制圧していってる。
スプラッタはだめという事を言われたからちょっと手間取ってるみたい。
血の一滴も出さないようにしてるみたいだし。
ただ、手間取るといってもその制圧速度は高い。もうすぐ全員倒し終わる。
「ご主人様、制圧完了しました。」
そこには死屍累々と兵隊さんたちが転がっていた。
私としては戦闘の許可を出したんじゃなくてスプラッタは嫌だなあ、
と思って言っただけだったんだけどねえ。
まあ、いいか。向こうは荷物置いてけって言ってたみたいだし。
見たところ関節が増えてる人もいないみたいだし。
「ネルヴァ、うまい具合に気絶させたね。怪我をさせずに制圧なんてできるんだね。」
「お褒めに預かり光栄です。」
ネルヴァの力の加減がうまいからこうやってできたんだね。
ネルヴァの力すごいのに。
あれ、私の力もかなりすごくなってるはずなんだけど。
もしかして制御ミスったら相手を殺しちゃうんじゃ・・・・・
・・・・・・・・・最重要検証項目。後で力の制御について確認しよう。
「それじゃあネルヴァ。誰か起こしてなんでこうなったのか聞いてみて。」
「はい、分かりました。」
ネルヴァあくまで平和的、そう平和的に・・・・・・・・とりあえず聞きだしたことによるとこうだ。
人間とは戦争状態
そしてここから人間のいる場所まで行くには獣人の国を突っ切って行かなければいけないらしい。
それから分かったことだけど、私の言葉は人間の言葉でもないらしい。
日常的に使う言語はどの種族も一緒だという。
言葉が分からないというのはきつい。
私はまだネルヴァが言葉分かるからいいけど、他のプレイヤーたちはどうなるんだろう?
とりあえず私が生き残ることを考えよう。
どうやらここは辺境らしいから兵の練度は低いのだろう。
さすがにこの強さがこの世界の軍の平均的な強さだったら困る。
私だけの場合はそんなに問題はない。むしろ危険にさらされる可能性が減るっていう事はありがたい。
だけど他のプレイヤーがこちらの世界に来た時の事を考えるとどうか。
トッププレイヤーならおそらくこの程度の町なら一人で滅ぼせるだろう。
そして日本でただの一般人だった人たちが急に巨大な力を持ったらどうなるか。
力に酔うと思う。
私の場合は召喚魔法だから私自身の力という感覚は薄いからまだ力に酔ってない。
だけどたいていの人は自分自身で戦う人ばかりだ。その分力に酔いやすい。
そのうち悪の道に落ちる人が出てきてもおかしくない。
その標的が私にいつむくか分かったものではない。
出来れば他のプレイヤーにはこの世界に順応する程度には殺伐としてほしいけど、
日本の感覚が完全に抜けきらないで欲しい。
それなら同じ日本人である私を殺そうとは思わないだろうし。
だったら私がするべき事は警告する事。
一か月後に強力な存在達がこの世界に現れると。そして彼らを戦争に関わらせてはいけないと。
この世界での最高戦力がどのくらいか分からないが、
その強さと数によっては戦争の在り方が一気に変わる。
そうなると私の予想では早期に戦争が終わる可能性もあるけど、
逆に犠牲者の増える可能性の方が高い。
プレイヤーが現れるという事を伝えても普通はほら話に終わるが、幸い私と言うサンプルがいる。
だから上層の者に信じてもらうこと自体は比較的難易度は低い。
調査力があれば私が忽然と現れたという事は分かるだろうし。
まあ、上層の人に会うこと自体が大変なんだけど。
そして問題は誰に伝えるのかという事だ。
最悪私の意思とは関係なくプレイヤーが戦争に利用されるかもしれない。いや、利用されるだろう。
そもそもどこに現れるか分からない。
情報が必要だ。
取りあえずこの町で一番事情を知ってそうな人に会って話を聞く。少し強引でも仕方がない。
戦争での犠牲を減らすためだ。
・・・・・もしかして私も力におぼれてる?
少し思考が暴力的だ。注意しないと。
けどこうやって相手から攻撃したんだから少しぐらい・・・・・
そんな事を考えてると町の門が開いて(町の門についたとき兵隊さんはすでに外に出ていて、門は閉まっていた)中から人が出てきた。
増援かと思ったけど違うようだ。一人の老人とその付添いの人っぽいし。
いや、この世界では魔法使いもいるから老人でも強い可能性もある。一応注意しておかないと。
でもまあ、ネルヴァが警戒してないしもし増援でも大丈夫だろう。
「〈お若い方たち、どうか矛を収めてはもらえないだろうか?
むろんこちらから手を出したという事は分かっておる。
じゃがこの者たちはあなた様方から見れば弱者もいい所。
ここは強者の余裕を持って見逃してはくれまいか?〉」
またこれだよ。言葉が分からないから何言ってるか分からない。
「ネルヴァなんて?」
「そこの兵たちの事を見逃してくれと言っております。
この者からからなら情報収集できそうですがどうしましょう?」
「うん、ネルヴァに任せるよ。あっ、けどできるだけ平和的にね。
それからこれからは一回一回私に聞かなくてもある程度ならネルヴァが判断して事後報告でいいよ。」
「分かりました。
〈そこの者よ。情報を差し出しなさい。
兵たちはひとまず放置することに決めましたが、話はそれからです。〉」
情報を聞き出すだけでなく、
この言い方なら兵を殺すという事をちらつかせて対価を要求することもできる。
そういうネルヴァの腹黒い考えだ。
老人もそれを分かっているがひとまず兵たちの命が助かって一安心だ。
「〈それではこちらにいらっしゃいませ。
町に人族を入れますと軍事上罰せられることになるかもしれないので入れることはできませんが、
ここからほど近い林に小屋があります。
粗末なところですが、そこなら座って話をすることもできましょう。〉」
「〈了解した〉ご主人様、座って話せるところに移動するようです。」
「うん、分かった。」
ネルヴァにすべてを任せてるから無力感が半端ない。
言語が分からないからしょうがないと言えばしょうがないんだけど。
「 」は日本語
「〈 〉」はこの世界の言葉




