2.
話の都合上、今回はかなり短かめになってます。
緩やかに流れていく日々、カンナギはこの生活にようやく慣れてきていた。
ズリズリと家の外で何かを引きずる音がしたので、カンナギが恐る恐る窓の外を覗くとリラが、何か黒いものを引きずって運んでいた。
「リラ、何してるの?」
窓を開けて、声を掛けるとリラは嬉しそうに振り返った。
「あら、カンナギ。見て見て、畑の近く設置してた罠にイノシシが掛かったのよ。ここらじゃ滅多に出没しないから珍しいわ」
(い、イノ…シシ……?)
珍しいとかという問題でなく、少女が満面の笑みを湛えてイノシシを引きずる絵ズラが衝撃的すぎて、何とコメントして良いのか困った。
「その…運ぶの手伝おうか?」
「ううん、平気よ。外で解体するから」
見れば、リラの手には鋭利なサバイバルナイフのようなものが握られている。
「えっと…解体してどうするの?」
「毛皮と肉に分けるのよ」
「分けて…どうするの?」
「貴重なタンパク源だから、山の神様に感謝して戴くの。毛皮は、町に降りた時に売れるし。既に血抜きは済ませてあるから何の問題もないわ」
にこやかな少女の受け答えに、もはやカンナギは掛ける言葉がなかった。
「…なんか、見ちゃいけなかった気がするよ」
「そお?確かに、父様に教わった時にこういうのが苦手な人もいると聞いたことがあるわね。見たくなかったら、家の中にいるといいわ」
リラの言葉を聞き、カンナギは窓をパタンと閉めた。
(てか、そんな逞しい技術教えたの親父さんかい!)
(それに、あの華奢な身体のどこにイノシシをここまで運んでくる力があるのだろう…)
家の中に引っ込んだカンナギは一人、項垂れていた。
(今日の晩ご飯には、アレを使った料理が並ぶのだろうか…)
妙な先入観を持ってしまったせいか、嫌なイメージが払拭できない…。でも、リラなら上手く調理するのだろう。
思えば、今朝の食卓にも肉らしいものがあったが、普通に食べていた…。
(…あの肉は何の肉だったのだろうか)
今度から、料理には何が使われているか聞くことにしたカンナギだった…。