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異世界旅路  作者: ∀∀∀∀
迷子のぅゎょぅじょっょ(ry
7/21

魔法とは……

翌朝、朝日から逃れるように布団の中に籠城するレイチェルを起こし、寝惚けてるのかまったく力の入ってない身体を抱き起こして水桶に連れてって顔を洗わせる


まるでさっきの事は幻です、とでも言いたげにいつも通りになったレイチェルと宿を出る、その途中熱い視線を感じたがスルー


影からずるずる這い出てきた馬車に乗り込み、俺が手綱を握ると同時に動き出す、流れる景色を横目に、優雅に椅子に座って紅茶なんて飲んでやがるレイチェルに問いかける




「なぁ、結構前から気になってはたんだが、その魔法って中にどのくらい入るんだ?」


「そうね、基本的に上限は無いわ」


「上限が無い、中になんでも入るのか?」


「ええ、アーヴィング城もこの魔法で影に隠れているの」


「そりゃヤッパリ当時のアーヴィング城当主が?」


「まさしくそうよ、まぁ彼はアーヴィング城を影に潜ませると同時に死んでしまったけれど」


「……死んだ、なんで?」


「この影に入れる事は出来るわ、ただし、自分に相応しくない物を入れる事は、苦痛を伴い、死に至る無謀よ


彼はアーヴィング城の当主であったけれど、アーヴィング城を丸ごと飲み込む程の力量は無く、また器も資格も無かった


故にアーヴィング城は彼の影には入らず、この魔法さえ使えれば誰でも行く事の出来る場所に、中途半端に残された」


「へー、力量に器に資格ねぇ


そんなのはどうやって判断するんだ?」


「入れようとすれば分かるわ」




なるほど、便利な魔法なだけれど流石に無茶は出来ないみたいだな、城を丸ごと入れるだなんて当時のアーヴィング城当主は何を考えていたのやら


検問が近付いてきたため話を一旦区切り、門番に通される、街道を次の街に進みながら話を再開する




「ちょっと待てよ?


それじゃ最初に言ってた上限がないって話と違くないか?」


「自分の力量内なら上限が無いと言う事よ、自分の力量以上な物を入れれば


当然死んでしまうし、入れようとした物は基本的に消失してしまうわ、当時のアーヴィング城の例はとても特殊な例なの」


「そう言う物か」




レイチェルの影から現れた人形と入れ替わり俺も椅子に座る、掌の上に魔力球を作り出す


暇さえ有ればコレをやっているが、俺は何時になったら魔法が使えるんだろう、残念ながらこの魔力球も綺麗な球体になってから変化があまり見られない




「……貴方、そろそろ魔法を扱う段階に移るわ」


「ま、マジか……マジかぁああ……


生きてて良かった、俺はこの日の為に生きてきたんだな、ああ家族よ俺を育ててくれてありがとう!」


「な、何もそこまで喜ばなくても」


「何を言うか、魔法だぞ


俺は今感動している、小さい頃からの夢が今叶う、わはははははは!


我が世の春が来たあぁああぁあああぁあああ!!!」


「五月蝿いから叫ばないでちょうだい」


「ごめん」




残念ながらこのテンションを下げる事は出来ない、なんてったって魔法だ、ここでテンションが上がらない奴何て日本にゃ居ないだろ!


荒ぶる気持ちを落ち着けて、無理矢理落ち着けて、レイチェルの話を待つ、気分は全裸待機




「怖いくらい綺麗な座り方ね、そんなに魔法が使いたかったなんて、もう少し速くても良かったかしら



まぁ良いわ、魔法について簡単に説明して、理解出来たなら私の知ってる魔法を教えるから、中にはキカイジマの魔力が足りなくて出来ないのもあるけど、あきらめなさい


魔法の技量が上がる事があっても、保有魔力が上がる事は無いわ」


「マジか……いやでも、魔法が使えるならそれだけでも」




しかし魔法か、今でも思い出すのはあの炎、あのじいさんが使った小さな太陽かと思った炎


やっぱり呪文だろうか、それと杖も居るのかな、それとも他の何かだろうか、エクスヘクトパトルゥウォオオナァアアア!


まぁ荒ぶるのは一先ず置いといてレイチェルの話を聞こう




「キカイジマ、貴方がまず最初に覚えなければならないのはこれよ」


「……なにこれ?」




レイチェルが掌を此方に向けると、赤黒の模様、記号?、五つの記号が現れる、恐らくはこの赤黒い色はレイチェルの魔力の色なんだろうが、この五つの記号は何なんだろうか


その疑問に答えるべく、レイチェルが五つの記号の中から一つを残して他の記号を消すと、その残った記号を円で囲う




「あの五つの魔力文字の内の一つ、コレは一番簡単な魔法陣よ


魔法陣は魔力球の応用ね、魔力文字と円によって様々な現象を起こすのが魔法よ


今から1300年前にアーノルド・アラインと言う人物が魔力の存在を確認、その後僅か十三年目に今の魔法の雛型を作ったとされているわ


魔法は戦いに使用されると同時に、魔物に対する大きな力となり、その二年後には初めて人と人の魔法での争いが起きた


魔法は未だに幼く、まだ改良の余地が残っている事にも拍車をかけて、自分が第2のアーノルド・アラインにならんと魔法と魔力文字を研究する人は多い


魔力文字はこの辞典に乗ってるから、覚えなさい」


「おう、ってデカ!?」




ポイと出されたのでホイと持ち上げようとして止まった、なんだこれデカすぎだろ何ページあるんだよこれ


持ち上げてページを捲ると薄い紙に魔力文字って言われてた記号と、その解説みたいなのが書いてある、最初の方は魔力文字一文字づつ、ページを進めれば魔力文字の組み合わせに位置関係による変化に大きさによる差などなどetc…




「ふふ、怖じ気付いたのかしら?


まぁ無理も無いわね、その魔力文字とて今も増えているのだから、安心なさい、私は優しいから必要な物だけ――」


「あはははは、これが聖書か!」


「――え?」


「まさかこんな物が有るだなんて、ゲーム脳が踊り出すぜ、よし片っ端から試してこう」


「ちょ、ま、待ちなさい!


今のキカイジマにやらせたら爆発しそうだからダメよ!」




何かレイチェルが言ってるが気にしない、ゲームで小さい所に燃える俺からしたらコレは燃える、今から俺の使える言語は日本語とハイラル文字と魔力文字だ


さぁ早速やろうと目についた魔力文字の内最初のページに有るのから試そうとして、レイチェルに聖書を奪われた




「ぁあ、俺の聖典!」


「貴方のじゃなくて私のよ!」


「くれるんじゃないの?」


「貸すだけよ、それに私が魔法の師だと言う事を忘れてないかしら」


「忘れてません、全然」




いかんいかん、チュートリアルや説明書は見る方なんだが暴走してしまったみたいだ、深呼吸して落ち着いてから椅子に深々と腰かける


レイチェルと目を合わせる、何だか目が怯えてる、後ちょっと俺から離れてるような気がするんだけど




「……あの、レイチェルさん、何でそんなに離れてるの?」


「……目が、怖かっ…、普通じゃ…無かったわ貴方」


「いやぁ、その、何と言うか感情が爆発しちゃったと言うか」


「……もう大丈夫なのよね?」


「魂に誓って」




そこでようやっと震える小動物みたいな状態から、何時もの冷笑が似合う物憂げな横顔が素敵なレイチェル様に戻った


そんなに俺怖かっただろうか、どちらにしろレイチェルの前では暴走しないようにしよう、話が進まない


レイチェルも深々と椅子に座りいつの間にか出ていた紅茶を飲み干す、一口で飲み干したのか新しい紅茶をポットから入れて授業を再開する




「まずは火水雷土風の五つから入りましょう、基礎も出来ないようでは何も出来ないわ」


「まかせろ」


「やり方は魔力球の応用、魔力を球体ではなく、魔力文字と円にするの


そうして出来上がった後は自分がその魔法に相応しいと思う言葉を述べる、そして自分の魔法が成功するイメージを固めて魔力と共に魔法陣に叩き込む


それで魔法は発動するわ」


「言葉?


何時もレイチェルが影を使う時に何にも言ってないようだったけど、それに良く良く考えてみれば魔法陣も見てないぜ?


小声で呟いてるのか?」


「違うわ、言葉は魔法を使い続けていくと共に不要になってくるの、魔法陣は私の場合は一瞬しか出してないのよ、人によっては小さくしたり、どこかに隠して出したり


戦ってる最中に、次にどんな魔法を使うか喋って教えたり、魔法陣から読み取らせたりするなんてマヌケのする事よ


とにかく、やってみなさい」


「はーん」




言葉が不要に、どういう事だろう、熟練度とか有るのかな、バカなゲームじゃあるまいし、だったら身体に何か変化が起きるとかかな?


後は、イメージとか?


何度も使う事でイメージしやすくなるとか?


とにかく試せば解る、試すだけならタダだし




「この魔法陣は火の魔法、言葉はだいたい何でも良いけれど


火よ灯れ」


「おお」


「ふふ、最初は失敗する物よ


私のように無詠唱となると年月を用するけれど、気長にやる事ね」




レイチェルの掌には火の玉が浮かび上がっている、その火の玉を無造作に馬車の外に投げ捨てると、外にいた一匹の兎に当り丸焦げにした


この魔法陣じゃあれ位しか出来ないのか、いやアレが出来るだけでも誇れる、であれば真っ先に使いたい衝動を抑え、魔法陣に集中する、当然言葉は出さない


イメージ、イメージ、想像、燃える、火の玉、原子が動くんだっけ?、イメージだから何でも良いのか、爆弾、ファイヤボール、メラ、火薬、炎の錬金術、烈火の炎、山火事、大文字焼き、太陽――


……行ける!




「出来た!」


「……どうして、無詠唱で


ちょっとキカイジマ、どういう事か説明なさい」


「よし、次は水の魔法ですねレイチェル先生」


「だから説明なさいと言っているのよ、解ったかしら」


「あ、はい、ごめんなさい」




俺の仮説と結果を盛大に睨み付けてくれたレイチェル先生に伝える、言わば言葉は想像を確実に想像する為の補助であり、自分でちゃんと脳内で想像さえ出来れば必要が無いと


レイチェルのそんなバカな事がある訳ないとでも言いたげな顔は、その後立て続けに水雷土風の魔法を無詠唱で発動する事で消え去った




「信じられない、魔法の新しい考えよ、そんなぽいぽい出す物じゃないのに」


「でも出せちゃったし、出ちゃったものは仕方ないんじゃ無い?」


「仕方ないって、貴方はもうちょっと危機感を持ちなさい、もしバレたら詳しく聞く為に貴方攫われるかもしれないわよ?


そしたら私に協力する約束は如何するのかしら?」


「あー、そっかダメか、気をつける」


「解ったら今後からは魔法を使った時は、無詠唱が出来る事にしておきなさい


それから、基礎が出来たらこの本の最初のページに書いてある順に試しなさい、無理に新しく作ろうと魔力文字を組み合わせたりしない事、初級編が終ったら私に言いなさい


中級編からは貴方だけでは不安だから私も見るわ」




手渡された魔法の本を開いて見れば、目次が正しければ初級編と書かれたページが一章〜十五章まで有り、かなりの量が推測される


取り敢えず本を机の端に寄せてレイチェルが新しく出したカップにポットから紅茶を入れて、ついでに角砂糖も入れて話を続ける




「初級編かなりあるんだが、まぁ我々の業界ではご褒美だけれど」


「それじゃそれと並行して魔法の詳しい歴史、魔法薬学、自然と魔法の関係も教えておきましょう」


「え、そんなに?」


「あら、嫌なのかしら?」


「嫌ではないが、急だなと……


なんにせよ先ずは初級編だなぁ」




本の中身を見ながら、今日はやる事が出来たからここに一日留まると言うレイチェルの話に耳を傾ける、影に入り込んだレイチェルに返事をして魔法陣を描く


今日は珍しく一つ所に留まった日だった

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