触手と幼女と儚い花が散る(R指定)
………………三日前に更新してたと思ってたらミスったらしく投稿出来ていなかった、成る程コレが孔明の罠か
さて、三日程遅れたが紳士淑女の諸君、タイトルで分かる通りR指定だ、海だ、幼女だ、R指定だ、しおりの数が90台に乗ったやったね、20話にしてようやくのだ、ストライクゾーンは揺り籠から墓場まで、嘘だ
うん、そろそろ作者の話より内容が見たいだろうから締めるとしよう
※誤字脱字などが有ったら言ってくれ、治すかもしれない
目を覚まして真っ先に思った事は寝汗が気持ち悪いって事だった、毛布を捲り上着を脱いでベッドの上に放り投げる、上着をそのままベッドの上の『影』の中に沈める
相変わらず便利な魔法だなぁ、レイチェルのように馬車を出し入れは出来なかったがソレより小さいなら問題は無いし、レイチェル曰くその位がだいたい普通……らしい、だがまぁ便利な事に変わりは無いから気にしないが
ベッドから起き上がって当たりを見渡すがレイチェルの姿が見えない、窓から外を見れば星が輝き魔力灯が見える事から夜だと言うのは分かる、丸一日寝ていたって事は無いからそんなに長い事気絶していた訳じゃ無い筈だ
夜の散歩に行ったのか知らないがコレは好都合、早速室内に風呂を『影』の中から出す、出て来た風呂は何時も使ってるその場その場で作り出してる風呂より影に入れる関係で小さい、すぐさま服を脱いで風呂に浸かる、ついでに魔法辞典を取り出して片手に読み耽る
ーーさて、思考の海に潜ろうか、恐い位に
比較的魔法辞典を読み込んで来た俺だがこの悪戯心溢れる魔法辞典はまだまだ手放せない、有る程度読み込んだらいつな間にやらページが増えていた、なんて事は日常茶飯事だしページに隠された内容が有るのは通例だ
ついこの間も属性魔法はその属性に親しい場所、火属性なら昼や火の近く水属性なら海や川と言った場所ならより効果が見込めるだなんて記述がいきなりつけたされてやがったし、まさか二度見なんてマンガみたいな物を現実でする事になるなんてな、驚きだぜ
いや今の、異世界でヴァンパイアと暮らしてる今の方がよっぽどマンガみたいか、では改めてーー
「驚きだぜ」
「キカイジマ?
起きているならーー」
「ーーぉ、驚きだぜ?」
現在、俺、全裸、前方、レイチェル、予想視覚領域、ギリギリ下半身と上半身の中間、ヘソ?、それとも、見えてる?
子供の頃、俺ん家の近所で夏祭りに行った時の事を唐突に思い出した、エアガン
何かに興味を持って泣け無しの小遣いで買って弾が無くなって使えなくなったんだっけか、はしゃぐ妹の手を引いて、途中でお金が無くなったり、丁度太鼓の音が聞こえて見に行ってみたんだったか、それで、それでーー
「きゃぁああああああーー」
ーー産まれて始めて音は体に響く物なんだと気付いたんだ
耳の奥からドロリとした暖かい液体が出てくるのが分かる、レイチェルの悲鳴も途中から聞こえなくなった、顔を真っ赤にして何やら口を動かしているが全く聞こえない
……もしかして鼓膜が破けた?
しばらく激しいボディーランゲージをしていたが改めて腰まで風呂に浸かりなおした俺と耳から出てる赤い液体に気付いたのか、慌てた様子で此方に近付いて来ては顔を両手で挟んだ
「…………何でこんな場所で風呂になんて入ってるのかしら」
「いや、寝汗が……」
「……ここは、キカイジマと『私』の部屋の筈だけれど、私何か間違った事言ってるかしら?」
「いえ、レイチェル様の仰る通りです」
「様だなんて付けてふざけてるのかしら?」
「ご、ごめんなさい……」
「……ふぅ、もういいわキカイジマ、取り敢えず着替えなさい
……それと、ごめんなさい、鼓膜を破って悪かったわ」
「ぇ、いや、案外痛くなかったし、すぐに治してくれたし気にしてない、それより音で鼓膜が破れた事のが驚きだぜ」
「ヴァンパイアの本気はあんな物じゃ無いわ」
なんでそんな訳の分からない所でヴァンパイア自慢をするのか知らないが、どうやら許してもらえたらしい、レイチェルが後ろを振り向いたのを確認して影から取り出したタオルで身体を拭いて服を着る
風呂と一緒と一緒に魔法辞典をしまい込む、タオルは使い続けて来たが流石にボロくなっちまったから捨てないとだなぁ
部屋の鉄製のゴミ箱の中に放り込んで火属性の魔法で焼き尽くす、焦げ臭い臭いを風属性の魔法で扉の外へ押しやってから着替え終わった事を伝えようと思ったが、肝心のレイチェルが居なかった
部屋に備え付けの机の隣に綺麗な机と椅子が並んで置かれていてその椅子にはレイチェルがいつの間にやら座って紅茶を嗜んでいる、椅子と紅茶の数が二つなので一緒に紅茶にしようと言う事何だろうが、さっきの今なので何処と無く居心地が悪い、そのためレイチェルが出した椅子には座らずに紅茶だけ一口に飲み干して扉へと向かった
「ちょっと散歩に行ってくるぜ」
「それは構わないけれど、私が寝る前には帰って来なさい、扉を開ける音で起こされては堪らないわ
ーーそれと、これでも着て行きなさい」
「悪いなレイチェル」
「風邪でも引かれたら看病が面倒なのよ」
「あ、看病してくれるんだ」
「さっさと行きなさい」
「おぶ、了解」
投げつけられたマントを顔面キャッチして軋む音を立てる扉から出て行く、壁に掛けられた魔力で動くランプが船と一緒にキィキィと揺れて俺の影を右へ左へと揺らしている
薄暗い道を進みながらマントで全身を包んで黙々と歩き続ける、フードを被る程の寒さは無いが外に出たら必要になってくるかもしれない
しかし、アレだな、レイチェルの奴、あんなに顔を真っ赤にさせてたがもしかして、もしかして何だが……
アレを見られた?
いや、待つべきだここは冷静に考えよう、もしヘソより下のアレを見たならレイチェルの怒りはこんな物じゃ無い筈だ、だとすれば必然的にアソコまで見えていた可能性は限りなくゼロへと近付く
うん、大丈夫だ、どうやら守らなくちゃいけない所は守れたみたいだな
自室からそう遠くも無い外への出口に辿り着いた、古臭い木製の扉を押し開けると海風が吹き付けて来る、魔力灯を始めてこうやって見たがまるでオーロラだな、空からカーテンが降りて来て居るみたいな光の帯、こんな物で魔物が防げるんだから凄まじいな
……やっぱりバラして隅々まで見たかったなぁ
近くの手頃な樽に座り込んで夜空を見上げる、夜風がまだ湿ってる髪を乾かしていくが生憎の海風だ、このままここに居たら髪がヤバイ事になりそうだな、外に出たのは失敗だったかな?
出て来て早々に帰ろうかなどと情け無い事を考えていると視界の端にうごめく物を目敏く見付けた、何だろうと思って目を凝らすとそれが見張り番だと気付いた、下までポストの天辺からスルスルと降りて来た、何かを片手に此方に近付いて来た、距離が縮んで分かったのは片手の物が酒瓶だと言う事だ
無精髭の男は酒瓶片手に隣に座り込むとそのまま酒を飲み始めた
「……」
「……」
「……ちょっと良い?」
「ん?」
「見張らなくて良いのか?」
「ん、ああ、交替しただけだから心配すんな坊主」
「坊主って程若くは無いんだけどな」
「はん、女を知らない奴なんざ坊主で充分だ」
「何で分かった!?」
「……俺と同じ臭いがしたからな……」
「……お、おう」
「…………」
「…………」
「……何か、悪いな空気悪くしちまって、飲むか?」
「いや、俺ってあんまり酒好きじゃないからいらない」
「酒飲まねぇの!?」
「んだよ何か文句でも有るのかよ」
「……いや、無いよ坊や」
「そうか……おい、何かランク的な物が下がってないか?」
「そんな事よりお前ってあの雇用主と中良さげにしてたけどよ、後で好きな物とか聞いて来てくれるか?」
「……ぇ、好きなの?」
「なわけねぇだろ!
皆で感謝の気持ちとして贈ろうって話になったんだよ、それに……
……好きな人、なら、居る……」
「お前の好きな人とかどうでもいい」
「おっ、おま、お前せめて聞けよ!」
「何でユフィに感謝の気持ち何てプレゼントする話になったんだ?」
「そっちじゃないんだが……
まぁいいさ、何で彼女に感謝の気持ちをプレゼントするかだって?
そんなもん彼女が俺達の事をちゃんと見てくれるからさ、その顔は分かってねぇな
俺達この船の船員は皆この船とは別に働き口を持ってる、って言うのも前の雇用主が最悪でな、いきなり今すぐ出航準備をしろだなんて言うし、給料をくすねるし文句しか言わないし、俺達の身体の事も他にやってる仕事も考えないで物を言うしでな、とにかく酷い奴だったんだよ
そんな奴に比べて嬢ちゃんはどうだ?
海臭い俺達に気楽に話しかけて来てくれるし、身体の心配や家族の事まで聞いてくれるんだ、それだけでも充分なのに船の出航予定が無い日の仕事の工面もしてくれるんだ、ここで黙ってちゃあ俺達海の男が廃るってもんだ」
「……アイツ、色々確りやってるんだな
所でお前の好きな人ってのは?」
「ははは、やっと聞いて来やがったかこの野郎!
いやぁこれがまた気が強い奴何だがな、時たま見せる心使いっつうかな?」
「……腹立って来たから黙れ」
「お前にもいつか春が来るっていじけんなよ!
この仕事もマトモになったし、帰ったら前々から考えてた告白をしようと思っててな、手伝うか!?」
「抜かせ、振られて酒場でショボくれてやがれ」
「おっと、そりゃ出来ねぇな、告白する相手が酒場の看板娘だからな」
一度隣で酒をかっ喰らってる髭男の顔を見詰める、深く考える必要も無かったな、成る程負け戦か
樽の上でバランスを取りながら後ろの壁に身体を預ける、頭上を見上げると満天の星空とオーロラのような魔力灯が幻想的に輝いている、この綺麗な夜景は元の世界じゃ見る事は決して出来なかったろう景色だ
俺がこの世界に来て失った物は計り知れないが、こうして計る事さえ出来ない何か大切な物を得て居る気がする、レイチェルとの旅だってその大切な何かの内の一つだと思う
そう言えばレイチェルはどうしているかな、寂しくて泣いてんじゃないか?
有り得ない事柄を想像するのも大概にして、良い加減頭も冷えて落ち着いて来たし部屋に戻る頃合いか
「なぁ、俺そろそろーー」
「コォ、コココーー」
「ーー雰囲気変わったね、髪切った?」
「ルコォオオオオオーー」
「うわぁあああああああああああああああああああ!!!
死ぬ程きめぇええええええええええええええええええええ!!!」
「えぇい何じゃ夜中に騒が…し…ぃ……」
夜の船の上で騒ぐ俺、船内への出入り口で固まったユフィ、頭がツルリとした茶色で細い触手を生やした球体に変わった船員、叫ぶ俺、黙るユフィ、鳴く船員(元)、船員だったものが頭らしき場所から触手を生やして襲って来る、唸る触手がつい先程まで俺が居た場所をなぎ払う、飛び退いた時に転がった樽を投げつけるが空中で真っ二つにされる
わ、訳が分からない、何がどうなって一体全体どうしてこうなったのか、おかしいおかしいおかしい、どんな状況だよこれ死ぬの俺?
元船員から逃げ続けて居ると何かに脚を取られ盛大に転けた、ソレを投げつけようとして気付くーー
ーーコレ、『頭』じゃん
目の前で持っていた頭が弾ける、赤い何だか良く分からない物が顔に付く、あったかくて、濡れてて、変な臭いがする……
あ、えっと今、アレが、アレ?
いや、でも確かに、そんな、だって……
いち、にい、さん、しい、ごーー
「オラァアアア!!!」
「ルコココココォーー」
「るっせぇ黙りやがれ糞があ!!!」
ガンガン痛む額と拳を抑えながら船員だったモノから離れる、思いっきり殴りつけたからグワングワンと視界が揺れるが構わない、いや衝撃的だからこその効果的な撃的素的神秘的ーー
ーーガツンと、もう一度頭を殴りつける
おっとぉ、まだちょっと寝ぼけてるか?
眠い朝の対処法がこんな所で生きるとはな、取り敢えずの所アレに捕まっちゃいけないのは確かだとして、何が起きたか考えるのは後回しだ面倒臭い、とにかくアレは敵なのだ、しかも人間じゃないっぽい、敵は殺す、良しやるこた決まった、可及的速やかにぶちのめそう
後方から物音が聞こえたので振り返ってみると、人間の頭が転がってきた、コイツの頭はついさっき弾けた筈だがと視界を広く見渡すと、座り込んで唖然としてるユフィにブラブラと近付いて行く人影ーー
直様脇目も振らずに駆け出した、まだ頭部から触手を出してない敵を飛び蹴りで倒してユフィを引っ掴んで走り出す
「おっ前は何をぼけっとしてんだアホか!?」
「こ、腰が抜けて立てぬのじゃ、良いかワタル、決して止まるなよ妾次は走り出せる自身が無いのじゃ」
「自信満々に言う事か!?」
しかしまずい、適当な所に隠れさせてから対処しようかと思ったが、ろくに動けないんじゃいざという時に一人で逃げ出せない、やはり船内だろうか、いや、アレを取り敢えず魔物としておくと魔力灯が有るのに効果的で無いし船内だからと言って安心は出来ない
船内に入れるか近くで守るか悩んでいると船内へ通じる扉が開かれて呑気に欠伸をしながら一人の船員が現れる、煩いデッキに文句でも言いに来たのかその顔は不機嫌そうに歪めて居たがデッキの惨状に別の意味で顔を歪めた、船員の足元に『頭』が一つ転がってるのも拍車をかけているかもしれないが好都合だ
「おいどうした!」
「丁度いい所に、魔物だ!」
「いや、ま、おいコレがか?
何だそりゃあ!?」
「見りゃ分かるだろう魔物なんだよ!
速く誰か呼んできてくれ!!!」
「魔力灯が有るのに……何で……
……ま、待ってろすぐによんでくる!」
「本当にすぐに頼むぜ!?」
取り敢えず現状を理解してくれたらしい、直様扉へと引き返して行く船員を尻目にマントの下の影から剣を取り出す、近付いて居た化物の触手を剣をやたらめったら振り回して切り落とせたのを確認すると、化物を蹴飛ばして距離を取って扉に向かった船員に向けて剣の切っ先を向ける
「な、何をしとるんじゃワタル!?」
「ウォーターウォール!」
「うぉい何だよこりゃあ!?」
小さな水球が船員の頭上に飛んで行くと上から高水圧の滝が落ちる、そんな滝から何かを押し潰したような音が響くと同時に魔法の発動を取り止める
「守ってやったんだから速く行け!」
「何だか分からねぇが済まねぇ!」
「……詠唱破棄何て使えたのかワタルは」
「あぁ、ようやっと完璧に出来るようになったんだが、そんな事より問題はコレだよなぁ」
地面に転がった砕けた元『球体』に視線を向けて、嫌な予感がガンガンするのを無視して『飛んで来た方向』に視線を向ける
ソレ等は夜の海に怪しく咲き乱れ大樹のように雄々しく立ち並び、船を押し潰せるような見上げる程の大きな身体をしたソレ等、船並に大きい花から大木のような触手が生えている、花弁には魔力灯のような光が彩られ、触手部分を海に沈めて隠したらさぞかし綺麗な花畑何だろうな、クラゲでしょうか?
ーーいいえ、魔物です
ってそんな事言ってる場合じゃねぇっつうの!!!
何だよこの状況、魔力灯の存在意義が無いやんけ、て言うか多すぎでしょうが密集し過ぎ何だよ頭おかしいんじゃねーのこいつ等!?
花のようなクラゲの様な摩訶不思議な魔物は有る一定の距離からは近付いて来ない、その境が魔力灯の明かりなのは気の所為なんかじゃないだろう、だとすればそこそこ効果は見込めているのだろうか、それだとこの化物になった船員の意味が分からない、中に入れないならどうして人間を化物に出来たのかが分からない
魔物を観察して居たのが幸いしてその変化には直ぐに気付く事ができた、魔物の大きな花の部分が大きく膨れ上がっている奴を見付けるのは殊更難しい事でもなかった、膨らんだ花弁の模様が一際輝き始めたソレは魔力灯に押し付ける様に花を此方に向けた
あ、コレやばい、避けなきゃ死ぬかもしれん
ユフィの身体を抱きかかえて頭を腕と身体で隠す、これでユフィの取り敢えずの安全は確保出来たとして、俺の頭をどうしようか
防御魔法で防御?
バカ言え、俺の魔力は無限じゃない所か『並』なんだ、バカスカ使ってたら直ぐに魔力切れになる、今日は影の魔法を何回も使ってるし風呂に入りながら実験だってしてた、そして何より問題なのはレイチェルに吸われた分が有るって事だ、しかもギリギリまで
こりゃ正直ヤバイな、身近に有るモノを有効活用するとしますか
此方へ近付いて来た触手人間の内、まだ触手が二本だけしか生えてない奴の方へ向かう、もう二本と言うべきかそれともまだ二本と言うべきか、俺と話していた元人間はというと既に一杯だ、言い方を変えれば沢山な訳だが、一々数えてないけど十本位は生えてるんじゃないかな?
ハハッ、十本とか対応出来る訳ねーじゃんワロタwww
わろた……
ウジュラウジュラビッタンビッタン蠢くその姿は残念ながら相対して居たくない、鞭と言うのが人力で音速を出せる道具だと言うのは余りに有名だが、鞭なんて我慢して突っ込んで持ち手を掴めばそこで終わりかと思っていたんだが、そう言うのは人間相手に言えるとても限定された方法だったらしい
て言うか何だろうなこの冒涜的クトゥルー的な何かは、ビッタンビッタン文字ビッタン、ビッタンビッタン文字ビッタン、いかんいかん冷静になれ、あの頭って実は仮面の一種なのではないだろうか、名付けてウジュラの仮面
違う違う、俺が言いたいのはそんな事じゃない、まだ二本位なら手が打てる、いや十本よりはマシなだけ何だけど、十本よりは手が打てる、ただ問題が有るとすればこの腕の中の愛くるしい小娘位な者か……
今から自分がする事を考える、そうなるとどうしてもコイツの身体の何処かに鞭が当たるかもしれない、人一人守れないとは泣けてくるね、しかしここで俺が死んだら面倒も見切れない訳で……
「あぁもう速く来いよな護衛的な立ち位置じゃなかったのかよ彼奴!?
ちょっと痛いかもしれないがこれに包まって我慢しててくれよ!」
「な、何をするつもりじゃ!?」
「なぁにちょっと無茶するだけだぜ!」
マントで包んだユフィを抱きしめる様に抱えて触手人間に突っ込む、風を切って振るわれた触手が俺の左目を潰す、左から振るわれた触手で二の腕に深い切傷が出来上がる、何処から振るわれたかもわからない触手が脚を攻撃する、ユフィに飛んで来た触手を頭と身体を使って食い止める、そうして近付くとユフィから手を離して触手二本を根元から鷲掴みにする
ここで安堵するだけの余裕は無い、なんせ今まさに後ろから新しい危険が迫ってるんだから、後ろを振り向くと同時に鷲掴みにした触手人間を掲げる
「冒涜的海産物ガードォオ!」
「おお、効果的なのじゃ!?
所で背中が痛いのじゃが」
「やったな、生きてる証拠だぜ」
掲げた触手人間の横からチラリと見えたのは花から高速で何かを吐き出した花クラゲ、衝撃と共に鈍い音がすぐ近くから聞こえてくる、と言うより目の前で二本の触手を生やしていた球体が飛んで来た球体によって砕かれた、成る程飛ばしてたのは種みたいな物かな、紙防御力じゃねーか魔力灯
グッタリとした元人間で元触手人間の盾を構えながらユフィを横目で見る、手放した時に背中をぶつけたらしいが、特に目立った傷はないからどうやら守れたらしい、ユフィを抱き寄せて後ろに回す
不味いな、鞭を甘く身過ぎたツケが来た、脚やら腕が痺れて力が出ない上に出血もヤバイ、ユフィは無事みたいだしユフィにこの盾を譲って俺が囮になるか?
流石の現状に死ぬ事さえ視野に入れていると、唐突に船の扉が開かれて中から武装した人がやってくる、その中にはジンの姿も伺える
「すまない、遅くなった」
「本当に遅いんだよ全く、職務退散、じゃなくて職務怠慢だぞ
とにかく、ユフィを頼む、俺も前に出てーー」
「やめておけワタル殿、その怪我ではキツイだろう、直ぐに治療が出来る者が来る」
「おいごらバカ言うな、俺はまだーー」
「ハッキリ言わなければ分かりませんか?」
「……邪魔か?」
「物凄く、ほらさっさと傷を治してください」
隣に駆け寄って来た船乗り達とは違って綺麗な服を着ている青年が身体を癒してくれる、意外と深い傷だったのか傷口から白色が見えるのはかなりやばい、その他にも比較的綺麗な格好の人が何人も触手人間の相手やユフィのガードに入っている、今まで気にもしなかったがユフィの護衛のような人はジンただ一人と言う訳では無いらしい
触手人間を囲んで多勢に無勢で襲いかかる姿をみると、やはり数の暴力と言うのは凄いと言わざるを得ない、何かもう触手人間が逆に可哀想だ
砕かれた種頭からドロリと出て来た緑色の液体とか、ビクンビクン動く身体などのキモい死体を残した触手人間の周りに居た人達が剣を構えるのを止めた、それと同時に周りの花クラゲの花弁が膨れ上がった
「全員伏せろぉおおおおおおおおおお!!!」
「ッ!?」
反応出来た奴も居るが、何人かは物の見事に魔物の仲間入りを果たしている、うまい具合にバラけた魔物達の触手の数が一本の時は夜の闇も合わさって人間と区別が付かない、さらに厄介な事を付け足すなら、船員達の動きが悪い、ついさっきまで仲間だった人が魔物となって襲いかかって来るのはやはり恐怖らしい
そんな中でも動きが変わらない所かさっきより動きにキレが出てきたのが、綺麗な格好をしたユフィの付き人達か、各々元仲間だった人を切り捨て、焼き払い、その上で船乗り達を船内に避難させている
何と言うか訓練されてるな、多分だけど、流石に動きが違うなぁ、その調子で俺とユフィを匿ってくれると嬉しいんだけど、無理そうだね
周りを見れば既に触手人間に囲まれた状態だった、残念ながら隙間一つ見当たらない、ユフィと俺を庇いながら一人で触手人間を相手にしているジンが恐ろしい程強いのは分かった、触手を薙ぎ払い種を真っ二つに切り裂き暴れ回る、ソレをユフィと俺の周りを周りながらやってのけるんだからとんでもない
「邪魔かー?」
「邪魔じゃないから少しは手伝え!」
「オーケー任せろ、最高かっこ良い俺様が助けてーー」
「良いから速く!」
「ファイヤランス」
剣の切っ先から現れた四mは有る炎の槍が触手人間を吹き飛ばしながら突き進む、炎の槍が通った後には綺麗に一本の道が囲いの中に出来上がった
想定外だったのは燃え移った触手人間からドンドン別の触手人間へと炎が移った事と、燃えた種が盛大に爆発してデッキの上が大変な事になった位か
「良くやったワタル殿!」
「か、かっこ良いのじゃー!?」
「もう魔力が風前の灯火だぜ」
「コレだけ盛大に燃えていれば、後は襲いかかってきた魔物に対応するだけで良いでしょう、問題が有るとすれば『外』のアレ等ですか」
「どうすんのよ、まだやる気みたいなんだけどアレ等」
「へ?、ちょっと何をするつもりなのじゃぁぁぁああああぁぁぁぁー!」
「ユフィ様ぁあああああああ!?」
「勘弁してくれよ……」
悲鳴を上げたユフィの方へ振り返って見れば、今正に俺を治療して居た『元』人間に船の外へ放り出されている所だった
ジンが魔物を切り捨てている間に海の方へ走り寄る、周囲に邪魔な魔物が居ないからか比較的直ぐに辿り着く事が出来たが、ユフィの姿は無事とは到底言えない状態にあった、海に溺れて居ただとか、頭から地が出て居ただとか、そう言うのではなくもっと致命的状態
海面から新しく出てきた花クラゲの触手によって雁字搦めにされ、頭上に掲げられたユフィが膨らんだ花によって狙いを定められている、まず間違いなく種を吐き出してユフィを魔物にするつもりなんだろう
「クッ!?
ワタル殿魔法を!!!」
「ユフィが邪魔で打てん、と言う訳で!」
「何を!?」
「ーー行ッくぜぇええエエエエエエエエエエエ!!!」
デッキから飛び降りて剣を両手で構える、既に限界近くまで膨れ上がった花弁から今にも発射されるのは分かってる、船から下に位置しているから飛び降りただけで目標にはたどり着けるが、残念ながら俺がユフィの元に辿り着くまでに種が発射されるだろう
ーー本来ならだ
頭の中で制作・改良・発展途中の魔法を引っ張り出して行使する、不完全品を無理矢理使ったからか、全身から酷い痛みを感じるし目が破裂するのでは無いかと思う程に激痛を感じる、手足はモゲ落ちてしまうのではと何度も思った程だ、内臓は見事に捻れ、中で千切れて居るかもしれない
しかし、そんな無茶をした結果が現れる、間に合わないと思った距離を縮め、更には膨張した花に剣を思い切り突き刺す事に成功した
「オマケだぜ!
ーーファイヤランス!!!」
剣を突き刺した傷口から火の粉が溢れたのを確認したその直後、光が視界を埋め尽くす、身体中が熱いハンマーで叩かれたような痛みに襲われる、何とか目元は腕で防いだが、それ以外が壊滅過ぎた、痛みを感じ過ぎて可笑しくなったのか、冷静に爆発したのは花の持ってる種の在庫に引火したんだろう抔と考えていると
上空に居たから助かったユフィが落ちて来る、黒焦げな両手で抱きとめると泣き顏でわたわたしている、残念ながら声は聞こえない、鼓膜が破けたのか、変な癖になったら嫌だな……
ユフィを放り投げる、当然船までは届かないので魔法を使う、本来の用途とは違うけど贅沢は言ってられない
「 」
「 」
「 」
「 」
「 」
何を言っているのか分からない、手短に耳が聞こえない事と……既に魔力も体力を無い事を告げる
ジンが暴れるユフィを抑えて船の向こう側に向かったのが見えた、ここからは、海面に浮かぶ花の上からはもう見る事は出来ない
何でこんな事をしたんだろ、何も考えないで行動するのは止めようか、人を助けに行って自分が死んでちゃ意味無いぜ
腹に違和感を感じると共に身体が持ち上がって行く、視線を下に移せば腹から出ている触手が見えた
ああ、このまま上に行ったら彼奴等が助かったかどうか分かる、でも……もう、そろそろ、限界かな……
霞む視界で最後に見たのはーー
ーー綺麗な日の出と、視界一杯の魔物と群地平線の彼方に浮かぶ日の出すら飲み干さんとする『影達』ーー
ーーあゝ、ヒーローってマジで忘れた頃にやって来るんだ
ひゃっほう始めてのマトモな戦闘だよ諸君
……主人公頑張った方だと思うよ、数百分の一を倒したんだから…………
しかしR指定のグロも多分出たけど紳士淑女の諸君はグロ体制有るから大丈夫だよね?
……で、何人がエロい事を考えたのかな、先生怒らないから言ってみなさい、よし分かった恥ずかしいなら皆で目を瞑ってエロい事を考えた人は手を上g