プロローグ2
※人死にが起こります
絶賛監獄ライフを味わっているこの俺の名は機械島済、これから先に不安しかない一般人だ
「へぇー、おっさんウルフ三匹相手に一人で?
まじかよスゲェな」
「あっはっはっは!
まぁな、まぁな?
いやあん時は俺もダメかと思ったが、そこはこの俺様の事よ、噛み付いてくる奴等をこの盾と剣で遊んでやったぜ」
「おおいまじかよ、その剣で?
俺は例え剣があってもきっとブルッて動けないかなぁ」
「おいおい何言ってんだよ、あん時はお前木の上で泣いてたろ?」
「なッ!?
ううるせぇな、アレは、アレだ!
あのウルフは俺が倒した後に――」
サーセン嘘です
今現在俺は盗賊の方々と交流しながら雑務に勤しんでます
何でったってこんな事になったのか、あの時檻に入れられた後に周りの人達みたいに泣く気が無かったな俺は話相手を求めて盗賊さん達に話かけた
その時に話があったのが野武士面で片目が見えてないおっさん、なんでも俺みたいに檻の中から話し掛けてくる奴は居ないそうで、それから暫く素朴な会話に花を咲かせてると件のウルフの群れに出くわした
ウルフと言っても只の狼じゃない、異世界情景にピッタリフィットする魔物と言われる物だ、この魔物と言うのについては盗賊達は詳しくは知らなかった、盗賊家業の認識ではただの化物で充分らしい
で、その魔物ウルフは人間ほどの大きさがあり10~20の群れを作るんだそうだが、あの時は14匹の群れだった
数人の怪我人と荷物の被害ですんだのは、あのウルフとか言うのが火を恐れる性質が有るかららしいが
盗賊のチームワークでウルフを追っ払った後に問題になったのは、散らばった荷物なんだが、そこで雑用として俺と他数名が檻から出された訳だ
盗賊達との会話である程度の仲にはなれた筈、運が良ければこのまま盗賊の雑用係としてなら助かるかもしれない
「お、終わったか」
「まぁあんまり散らばって無かったしねぇ
それで、おっさんの話の続きは?」
「ああ、そりゃな、まぁとりあえず話の続きは、檻の中でだな」
ぜんぜんそんな事は無かった、現実の厳しさに泣きそうです
まぁ泣いた所でどうにもならないし、もう少しだけ自分に起こった事を整理してみよう、幸いな事に檻の中だから前回のように自分の思考を邪魔する奴は居ない事だし
地球で大きな月を見た後の事は良く解らない、気付けば森の中に一人だったんだから録でもない事この上無い
その森でしばらく現実逃避気味にボーっとしている所で出会ったのが、またしてもウルフである
全力疾走で逃げ出したんだが、驚く程簡単に捕まった、よく小説などで走って逃げる奴等が居るが言いたい、なんでお前等そんなに足速いんだよ、その速さよこせと
捕まった俺が死を覚悟した時、その時にやって来て助けてくれたのが複数の商人の皆さんだ
しばらくの間商人の皆さんと話して、そこでようやくこの世界を異世界だと俺は認識した訳だが、その時は俺にも何か不思議な力が有るかと悪戦苦闘したが、やっぱりそんな事は無かった
ちょっと引き気味の商人の皆さんとの仲を縮めて居る時にさらに出会ったのが、この盗賊な訳だ
改めて思い出すとヤバい、異世界トリップって言えば良いのか?
なんでチート無いの、これってジャンル無双系じゃないの?
檻から見える景色が緑が消えて岩肌ばかりになりはじめた、通気性抜群の檻の中から見るとどんな景色も新鮮に映る、いい加減なにかしらの変化が欲しい所だが
そんな事を考えていると、盗賊達の進行先に人影を見付けた
「これ、そこな者、ちょいと構わんかな?」
「あァ?」
「おいじぃさん、悪ぃが――」
盗賊達がわずかばかりの警戒心からか、武器に手をかけるが、その顔には余裕と困惑の色が伺える
と言うのも、声をかけてきた人物がお爺さんだからだ
こんな所で、まぁお爺さんが一人で居るのはまだいいとしよう、こんな見渡す限りの岩場だがここに致し方ない事情があり嫌々住んでいる可能性だってあろう
もしかしたら俺が知らないだけでこの世界では岩場で暮らすのがこの世界の常識なのかもしれない、全然認めたくないが
いやいや、違う違うって、今重要なのは岩場に住んでいるか居なかじゃない、なぜこの老人が俺たちの前に、と言うより盗賊の前に現れたのかだ
とてもじゃないが正気の沙汰とは思えない、なんせ刃物を持ってる見るからにやばそうな盗賊の進行を妨げているんだから、もしも奴等の気に触れたりしたらどうなるか、解らない話じゃない筈なんだがな
それでも眼前のお爺さんはにこにことした笑みを浮かべ盗賊達に近付いていく、そこに盗賊の数人が近付いていった
馬鹿な奴――
とか俺は静かに笑っていた、この笑みはきっとヤバい位の悪人面に違いないが、見てる奴なんて居ないので気にしない
この状況、俺の脳細胞は狂喜乱舞していた
間違いない、この状況、このタイミング、この存在感、何を取ってもこの答え以外には有り得ない間違い無い
そう、何を隠そうあのお爺さんこそが物語の主人公なのさ!
だって、そうとしか考えられない、まぁ主人公じゃなくて主人公の師匠的ポジションの可能性は有り得るけど、良く良く考えても俺は主人公とか無理そうだし
だとすれば、順当に考えてもあのお爺さんこそ主人公、魔法使いみたいな格好してるし、超魔力とか持ってるに違いない
だとすればアレか、俺はサブストーリー的なキャラクターなのかな?
お爺さんに目を向けると、縄に繋がれて此方に来た、そのまま流れるように檻の扉は開かれお爺さんを招き入れた
希望くらい持たせろよ……
未だににこにこしたままのお爺さんの隣に座り込む、まぁ主人公だのサブストーリーだのは戯言だとして、軽く考えてみてもお爺さんの考えが解らない、だったらお爺さんに直接聞くのが良いだろう
「おい爺さん、俺には今一意味が解らないんだが、なんで爺さんはわざわざ取っ捕まってここに居るんだ?
何より何でそんなに笑顔なのさ」
「んー?
なんじゃ、随分と元気な坊やじゃな
坊やは他の者達みたいに泣いておらんな、一体どうしてじゃ?」
「坊やって、爺さんからさたらそうだろうけどさ、質問に質問で返すなよ
泣いてないのは凄い理由でも無いさ、何か現実味が無くて、盗賊と仲良くなって見逃してもらおう大作成は失敗したし
それで、爺さんはなんでわざわざここに?」
「うむ、この位置がちょうどいいんじゃよ」
ちょうどいい、と言ったお爺さんはローブに隠れている掌を外に出すとスルリと手縄が落ちる、それ事態は問題ない、俺も捕まる時に小細工を施して好きな時に抜け出せるが、目を付けるのはソコじゃない――
掌の上の轟々と燃える火種
薄暗い檻の中、針金みたいな爺さんの掌の上に、それは綺麗なギラギラとした小さな太陽が現れたみたいだった
「――ッ」
「まだ、驚くには早いぞ」
そう言って、掌の太陽を下に落とす
地面に落ちた太陽が小さく渦巻き弾けた、熱を伴ったその炎は俺を素通りして、檻の外で業火に変わった
渦巻く炎が盗賊達を飲み込む、炎のカーテンが消える頃になると、文字通り塵も残ってなかった
恐ろしいと思うと同時に綺麗だと思った、怖いと震えるより好奇心で震えた
「オーランド、オーランドは居るか?」
「が、学園長?」
「おぉオーランド、この馬鹿者めが
杖が壊れているのにホイホイと出かけおって、ほら、縄を切るのを手伝いなさい」
「すみません……」
金髪の青年、たしかオーランドと言った青年の元に爺さんはせかせかと歩いていき、手際よく縄を何処からか取り出したナイフで切ると、青年にもう一本ナイフを渡して俺の元に来た
「ここじゃと、皆を守りながら魔法が使える、自分の周りだけを守ればよいから楽じゃ
ほれ、手を貸してみぃ」
「わざと捕まったのか、質悪いな
あ、いや構わないぜ
――ほら、な?」
俺は手を出さずに握り拳を緩めて、縄の間に出来た隙間を広げて手を抜いた
昔テレビか何かで見つけた縄脱け方だ、人生何が役に立つか解らない
爺さんをかなり驚かせたのか、先程まで眉毛に隠れていたくりくりした目を覗かせてる
それから、なぜか少し残念そうな爺さんにナイフを貰い他の人の縄のを切って回った
檻から出ればまた商売が始められると商人が沸き立ち、これで家族に会えると泣く人もいる
そんな中で、爺さんとオーランドと言う青年は感謝の声に答えながらどこぞへ帰ろうとしていた
「おーい爺さん!」
「ん?
なんじゃー?」
すこし離れていたから声を張り上げる
「あんた学園長って言われてたよなー?」
「そうじゃよー?」
「学園長、あの、普通に近付いて話しませんか?」
「爺さんどこの学園長なんだよー!?」
「儂の名前はクルデンホルフじゃあー!」
「ほら学園長聞こえてないじゃないですか」
「クルデンホルフ学園だなー!」
「ああもうちゃんと伝わ――」
「そんじゃ、縁が会ったらまた会おうぜー!」
こんな異世界ど真ん中で俺にどうしろと?、っていう状態だったが、なんだかやりたい事が見付かった
クルデンホルフ学園か……、身元不明な奴でも入れるのかな?
残ってる盗賊の荷物を掻っ払って、皆さんに付いていく、しっかしオーランドは何しにここに居たんだろ……まぁオーランドはいいか
さて、ここから一番近い街カルラと言う場所に行くらしい、楽しみだな
「おいキカイジマ!
お前ぼーとしてないで手伝えよ、馬が無いから大変なんだぞ!」
取り敢えずは、荷物持ちとして頑張るか
臭い事燃やしたので主人公はまだ人死にには馴れてません、ぶっちゃけ死体も臭いも人死にを思わせる要素が無いので主人公平均です
こんなグダグダ小説なんかで大丈夫か?