港街ダイス
いやはや栞の数も増えて来てれしいねぇ、こんな落書きでいいなら何時でも見てってよ、損はさせないよ
……まぁ、得も無いんだけどさ……
港街ダイスと言う場所は数ある港街の中でも一番大きい港街だとレイチェルは語っていた
最大の港街と言うのにダイスと言う街は漁業だけが目玉な訳では無いらしい、商人がわざわざ日持ちするように作った海鮮類を買いに来て、その商人からこの街に無い山菜やら果物やらを買い取るために結構な賑わいを見せている
それに、この港街が最大を誇るのは何もそれだけが理由じゃない、俺達レイチェルと俺の取り敢えずの目標地点で有る王国がある島にはこの港街からしか行く事が出来ない、他の場所から向かうと酷い嵐や渦潮に巻き込まれたり魔物が多数出没する危険地帯を抜けねばならなかったり、海賊の縄張りだったりするからだ
そうなると当然その王国へ商品を届けたり冒険者が王国へ行くにはここを通らなきゃならない訳で、必然的にこの街が発展する訳だ
……だった筈、ついさっきレイチェルに聞いたんだが確かこんな感じの内容だったよな?
目の前の大きな、大きすぎるだろ巨人でも入るのかよと思わず突っ込んでしまった大きな門を通り抜けて港街に入り込む
市壁を超えて中に入れば見えなかったものが見えてくる、海の匂いと共にその視界を占領するのはやはり魚(?)だろう
頭を下にして吊るし上げられている姿や小魚がカゴに大量に積まれている姿、今まさに裁かれている姿なんかは、あゝ港街にきたんだなぁと言う気にさせる
次に目に付くのは冒険者か、ガッチャガッチャ音を立てて歩いている姿は圧巻だ、やっぱり異世界だって思い知らされるのはここら当たりが一番分かりやすいか、なんせ赤やら黄色やら緑とか、どこの仮装パーティーですか?と言わんばかりの色した奴等が絶賛値引中何だから、以外と冒険者ってのは儲からないのかな?
だとするとギルドに入って冒険者にならなかったのは正解だったか、流石は俺、出来るな俺、やる事なす事完璧だぜ俺
さて、誰も褒めてくれないから自分で褒める時間もソロソロ終わりにさせようか、こんな事ばかりしてると悲しくて泣きそうだ
馬車が通る最低限の道は混雑した中にもある、と言うよりソレ専用の通路か、元より道が広いんだからそう人との接触事故は無いとしても、人通りが多くてはみ出してる奴も居る、それだけの数の人がいると馬車の進みも悪くなってくる
まぁ、その結果としてレイチェルお姫様の機嫌が大変よろしく無い訳だ
「いい加減機嫌を直してみたら如何でしょうかレイチェルさーん、後で美味しい吸血もまってますよー?」
「後でなどと言わず今すぐ私に献上しても良いのよ?」
「良い訳がないじゃろがい、こんな人目に付く場所で見られて恥ずかしく無いんですかー?」
「馬鹿ね、馬車の中でに決まってるじゃない、私をそこらの所構わず人目も憚らず吸血している下賤な吸血鬼と一緒にしないで頂戴
本当に教養のあるヴァンパイアと言うものは場所と時とその場の雰囲気を大切にするの」
「凄いいい感じの事言ってるっぽいがこんな場所で言われてもな、ちなみに馬車の中にいる間は馬車どうすんのよ」
「少し位待たせて置いても構わないでしょう」
「構うから、めっちゃ構うから」
どうやらお姫様は朝からのこの閉鎖的状況が納得出来ないらしい、隣のレイチェルから漏れ出した魔力が正しく赤黒いオーラを纏っていた、こいつはやばいぜ、早々に大魔王レイチェル様の機嫌を取らねば干物にされてしまう、ちなみにこの街で安定の売り物は干物らしい、世の中魔法が使える奴ばかりと言う訳じゃないから当然と言えば当然か……
危ないぜ、口に出していたら死んでいた所だぜ
俺のちょっとアレな思考は忘れて、今一度街の人並を何とはなしに見てみる、冒険者に入り混じって海の男といった風体の男達が行ったり来たりしている、港街特有の活気が溢れて自然と陽気な気持ちにさせてくれる
まぁ、そんな気持ちだろうがどんな気持ちだろうがレイチェルお姫様のご機嫌は麗しくないようで
「そんなに退屈?」
「何か気の紛らわせられる物は無いのかしら」
「この渋滞を抜けたら一緒に買い物にでも行こうや、こう言うのは話してると気付いたら終わってるもんだよ」
買い物と言ってもレイチェルの眼鏡に叶う物はほとんど無い為にただの冷やかしになる事が殆どなんだが、殆どと言うかそれが全てと言うか……
店員の嫌な視線を思い出してきたので早々に意識からソレを外す、前方を見てみればついさっきまで混雑していた道がある程度開けてきた、今まで一本道だったのが幾つか分かれ道になっている、その中でも比較的人通りの少ない道を通っていく、どうやらここから行きたい場所によって分かれているらしく、今は表札を見るに造船所に向かっている
「何で造船所何ぞに向かってんだ?」
「何でって、また寝ぼけてしまったのかしら、私達は船に乗って次の街に行かなければならないのよ?
当然船を買うに決まっているでしょう」
「あーあー、成る程ね、成る程……海路を行くなら船の一つや二つ位決まってねぇよ!!?」
「な、何よいきなり?」
レイチェルが驚いてビクッと体を縮こませたが知ったこっちゃない、毎度毎度金遣いが荒いなと思ってはいたが流石に今度は黙っちゃいられない、思わずノリツッコミをする程度には黙ってられない出来事だ
困惑した様子のレイチェルに語りかける、コイツをこのままにしてはヤバイと俺の本能が告げてくるのだ
「良いかレイチェル、何をトチ狂ってそんな狂気の決断に至ったのかサッパリ分からんがな、この俺が絶対にそんな事は許さんぞ
船を買っても操縦する奴等は如何するんだ雇うのか?
一体全体どんだけ莫大な金がかかると思ってんだ、レイチェルにとっては確かに大した金じゃ無いかもしれないが、そうやって無闇に金をばらまくといらん奴等まで引き寄せるんだぞ」
「……それなら如何しろと言うのよ」
「そんなもん普通にそこに行く船に乗ればいいだけの話だろうに……」
「……客船と言う事?
あまり騒がしいのは嫌なのだけれど……」
「個室とか無いの?」
「有るけれど、家の書物だと客船にはろくな事が無いと書いてあったわ」
「またソレ!?」
いつの日か出会う事があったならば、レイチェルのお母さんには一言言わなければならない、いやそれともコッチの世界だと客船も違うのか?
世界が変わったからってそんな所まで変わるのかと疑問に思いつつも、手綱を引いて馬車を方向転換させる、行く先は入江の豪華客船だ、ついさっきレイチェルの金遣いが荒いと言っておきながらのこの有様だ
仕方が無いとして置こう、もし予定が一杯で乗れないならば金の力で押し通る事も辞さない覚悟だ
「ちょっと、まったくもう、キカイジマってたまに強引ね?」
「それこそたまには良いだろう?
それにな、毎度毎度本で見た本で見たって、実物見なければ分からない事だって沢山有るんだぜ?
レイチェルはその分だけ色々と見逃してるんだぞ、風呂の事だってそうだったじゃないか」
「入浴は、まぁ良いわ、キカイジマに任せるけれど、期待して良いのね?」
「俺は乗った事が無いから分からない」
「貴方ただ客船に乗りたいだけなんじゃないかしら?」
「まぁ、そんな所も無きにしも非ずだが……
所でレイチェル、船で行くのは良いが一体全体何時行くんだ?
何時ものように何日かココに止まるか?」
「いいえ、この街にはこれと言って目立つ建物も無いし、このまま行ければ今日中にでも出るつもりよ」
確かにレイチェルの目的からしたらここに留まるのは旨味が無いな、だとすれば早々に金による解決が必要かもしれない、何だか自分が金の力で威張ってる奴みたいで物凄く嫌だな
自分が干物になるよりはマシと割り切って、ついさっき通った分かれ道にまで戻ってきた、立て札によると豪華客船の乗船予約は入江で行われているようだ、入江に向かっている群れに加わる
「そういえば海にも魔物ってのは居るんだよな?
そう言うのってどう対処してんだろ、バリアー的な物で守ってるのかな?」
「生憎とそこの所は知らないわ、それこそ見れば分かるのじゃないかしら?」
「それもそうか、っと来たな入江」
前方を見やれば大きな船の数々が入江を占領していた、帆が風に乗って大きく膨らみ船体を前へ前へと突き動かして空く様や、今まさに入江に着いた船から碇が降ろされる姿、馬車や人が大きな荷物と一緒に出入りする様、大きな声が忙しなく飛び交い続けてガヤガヤとした騒音を奏でる
良いなこんな所、何と言うか本当に遠くに来たんだと思い知らされる、コッチの世界に来てから何日だか何ヶ月だかなんて覚えちゃいないが、本当に遠い所にまで来たもんだ
コッチに来てからの事やアッチの事を考えて居ると馬車が止まった、どうしたのかと周りを見渡せば目的地に着いたみたいだ、周りの船など比べる事すら出来ない思わず綺麗だと思う豪華客船がそこにはあった
馬車から降りてその船に近づいて行くと帳簿のような物を持った男と貴族のような男が話していた、貴族風の男の隣には小さな人影が見えるが俺みたいにフード付きの前まで隠すマントを付けていて詳しくは分からないが恐らく子供だろう、小さい女の子には良い思い出が無いので男で有る事を切に願う
貴族のような男は腰に剣をさしていて、全体的に白に僅かに赤色が覗く服装をしていて白い手袋をしている、綺麗に流れてる金髪に金の目、シャンとした一本の芯が有るかのような背筋に当然の如く顔は整っていて体も細い、だが不健康そうな様子は見受けられない……
ーーふ、勝ったな
まぁ何事も自信を持つのは良い事だと思ってその三人に近づく、此方に気付いたらのか話すのをやめて此方に視線を向けて来た、イケメンくんには悪いが俺が用が有るのはその隣の帳簿持ちだけなのよな
たったの数歩で帳簿持ちの元にたどり着いた俺は先ずは此方の姿を隅から隅まで観察して居る帳簿持ちに話しかけた
「おはよう、時間を取らせて悪いがあの豪華な船は王都がある島に行く客船で合ってるよな?」
「……その通りだが、アンタじゃ乗れないと思うがね、何か用が有るなら後にしてくれ、今は此方のお客様と話が有るんだ、はっ」
「……礼儀のれの字すら理解できてない教養皆無の塵芥の戯言には興味なんざ一ミクロン足りとも有りはしねぇ、さっさと今日の乗船者名にレイチェル様御一行様と書きやがれ能無しが」
「なっ!?」
この朝の挨拶すら出来ない奴なんか嫌いだ、て言うか何よりこの、あの、俺を完全に見下して鼻で嗤ったあの、あの顔がとんでもなく腹立つ、普段は温厚で怒らないこの俺の脳天に熱を持たせる程には
顔を真っ赤にさせた男は苛立たしそうに帳簿を指で叩いて顔を歪める
「あ、アンタみたいに身嗜み一つとして出来てない奴に礼儀どうこう言われたく無いな」
「てめぇ個人の意見なんざどうでもいいんだよ、なーにが言われたく無いだ、このマントはてめぇの私服の何倍もの価値があるんだよ、このマントから溢れ出る気品優雅さ勤勉さ、そして何よりケバケバしくない装飾などなどが分からない観察眼のねぇ奴がしゃしゃんな
礼儀どうこう言われたく無いだとか、朝の挨拶すら出来ないなら話にならねーんだよ」
「おはようなのじゃ」
「え?
あ、うん、おはよう、?」
これから今まさに帳簿持ちを言葉の暴力で再起不能な程にボコボコにしてやろうとした所で、視界にいれないようにしていた2人組の一方である小さい方に話しかけられた
丁度挨拶の話しをしていたからか無視するわけにも行かない、下を見やればお腹辺りの高さだった小さい方が足元に来てマントの裾を引っ張ってる
え、いや今アンタお呼びで無いよ?
「お、お待ちください何をしてるんですか!?
勝手に私の側を離れないでくださいとあれ程ーー」
「えぇいうるさい奴じゃの、これ位かまわんじゃろ!?」
「いいえ構います、大体貴女様は朝方もーー」
俺の隣までやってきたイケメン君が何やらクドクド説教臭く隣の子に話し始めた、それに小さい方が軽く俺を盾にするようにしているがそんな事は最早どうでも良い事柄だ
止めろ、止めてくれお前等、頼むからこれ以上個性を出すんじゃない、どうしてのじゃとか付け始めるんだよ、何で年下らしき小さい方に敬語を使ってるのさアンタ、個性を出しても良いが俺の隣は止めてくれ
絶賛絶望中であるーー
ついにはイケメン君が俺の迷惑だから盾にするのは止めなさいと言い始めた、確かに迷惑だが俺を話題に出すのは止めて欲しい、そんな弱者の願いは聞き届けられる事はなく、イケメン君の話を完全にぶった切って小さい方が俺に話しかけてきた
下から見上げてくるのはクルッと一回転した羊の角が二本横に付いている褐色の女の子
「のぅお主、そのマントは何処で買ったのかの?」
「……お店で、買いました」
「お、おいお主何を泣きそうな顔をしておるのじゃ!?」
女の子だった、しかも角生えてる
確かにこの女の子はまだ何もしていない、ただ俺のマントが何処で買われた物なのか聞いてきただけだ、だけれどそれは『まだ』と言うだけにすぎない、世の中にフラグなんて物は存在しない、何処ぞの人類最悪が唱えるジェイルオルタナティヴとバックノズルなんて物は存在しない、だけれど今のこの偶然を『たまたまだ』なんて笑える程の状態に俺はない、どうして異世界に飛ばされてヴァンパイアやら魔法やらネコミミやらに出会っといて褐色角付きのじゃ女の子と出会ったのはたまたまで今後出会うことは二度と無いでしょうなんて言えるんだ
まぁ、別に女の子と出会うのは良いんだよ、いや本当に良い事何だけど、ただソコに発生するイベントがなぁ……、後全体的に見た目若過ぎるのがなぁ……
今までに出会ったレイチェルとアスハを思い出す、レイチェルに関しては言うまでもない命の危機だった、アスハの事も俺の財布を軽くした上に人一人抱えて走る目にあった
結局生きてるから良かった物の、もし次が戦闘を伴うものだったらヤバイ、自分の弱さを認めるとかカッコイイ感じじゃ無くてガチでヤバイ、マジで弱いから俺下手しなくても多分死ぬから
そんな訳で出来れば早々にこの年上で身分高そうなイケメン君を従えてるっぽい女の子とは縁を切りたい、確かに何もしてないこの子に酷い事何て出来はしないが、それとなく距離をおく事はできる
涙を堪えて仕方なく女の子の対応に移る
「泣いてなどない、俺を泣かせたら大したもんだぜ
それよりお嬢ちゃんこのマントがどうかしたか?」
「うむ、実はのう、その外套は何と妾が作ったのじゃ!!!」
へへーんと言った感じに腰に手を当てて無い胸を張るこの子はきっと目立ちたい年頃何だろう、レイチェルでさえ『出来る訳が無いじゃない、それはメイドや執事の仕事よ』と言っていたと言うのに……
もしかしたらこの子が外套作りの国の姫様と言う一旦頭に浮かんだ馬鹿馬鹿しい妄想をゴミ箱に叩き込んで小さい子から帳簿持ちに顔を向ける
「へーそうなんだ、だいじにつかうよ
さて、おーいそこのすっとこどっこい、この豪華客船の今日の乗船予約をしたいんだが」
「お、おい?
妾の話を聞いておるかの?
なんだか、ちょっと冷たく無いかのう?」
「今日の乗船予約は1人300万だよ、てめーにゃ払えないだろうがな」
「お主、ちゃんと聴いておるのか?」
「はい600万、名前はレイチェル様御一行様だ、勝手に中に入らさせてもらうぜ」
「って待つのじゃぁあああ!?」
「待つのは貴女様ですぅうううう!!!」
「ぐぁああ離せ、離すのじゃ、妾はあの無礼者に一言申さねばーー」
暴れる黒羊を無視してそそくさと一角獣車もとい馬車に乗り込んで操車席に座り込む、後ろの方からレイチェルがやって来て隣に座り込んだ、もう後は馬車を豪華客船の中へ走らせて奪い去るように帳簿持ちから奪った鍵に書かれてる番号の部屋に行くだけだから隣に座っても直ぐに立つから無駄手間の筈なんだが、レイチェルのやる事は時たま分からない
軽く思考を放棄して馬車を走らせて豪華客船の中へ向かう途中に、決定的瞬間を目撃してしまった、正しく正しくしてしまった、だ
先程の2人組の隣を通りかかる時、レイチェルが笑ったのだ、笑う所なんて殆ど見た事がないレイチェルが……
「フフッーー」
「ん、んなぁあああああ!?」
俺の沸点を限界まで跳ね上げさせた帳簿持ち以上のあらゆる意味を込めて……
……何で挑発してるんでぃすかこのヴァンパイアァアアアアアアアアッ!?
そのまま流れるように豪華客船の中に入り込んで馬車を止めてから暫く沈黙が続いた、このままではいけない、そう思って隣で楽しそうに笑ってるレイチェルに問い掛けた
「あの、レイチェル様?
何故あのような挑発をしたのか聴いてもよろしいです?」
「何故?
そうね、あえて言うなら良い加減退屈で退屈で死にそうなのに、キカイジマを捕まえて時間をとった事に少し腹が立ってね、身の程をわきまえて欲しいわ」
「……そうか、出来れば、アレに関わるのは止めて欲しかったが」
「別にいいでしょう、今後出会う事もないのだから」
「……そうである事を切に願うよ」
客船に乗り込んだ俺とレイチェルは馬車を降りて部屋に向かった、少し嫌な予感もするが、確かに旅を続けるんだからまた出会う確率は低い筈と自分を納得させた
今日は疲れたし早めに寝ようかな……
なんちゃって予告!?
なんか何やかんやでこうガーって感じの結果日本の大地に私はかぁあああぇってきたぁああああああ、な機械島済、取り敢えず自宅に帰った彼の目に映る有り得ない現実とは!?
現れる『妹』『ヤクザの娘』『関西少女』『アイドル』『中二病』『魔女』などなど、更に現れる組織ッぽいのとか不思議生物とかさぁ大変……
なんか、もう良いかな、力尽きたよ、真っ白にな……