世界で最も古きモノ・中編
次話からは人物像とか頑張ろうかな、面倒だな……
「売られただぁ!?」
「ぇ、うんついさっきね」
もう既に夜の闇が街を埋め尽くそうかと言う頃、人通りが少なくなって来た通りでちょうど見付けたリオに声をかけて呼び止める
レイチェルと二手に別れてペンダントを探していると、唐突にリオが売っていたペンダントがレイチェルの付けていた、数回しか見たことが無いしジックリ見た訳でもないが、あのペンダントに似ていたような気がしてリオを探していた時だ
背中に背負った小山みたいなリュックが見えて、一体誰が背負ってるのかと横目で見たら何とビックリ探し人その人であった
今日の俺は付いてると喜び勇んでリオに話しかけると、何とついさっき、正に店を畳む時に売れてしまったとのこと
「タッチの差かよ……、なぁソイツがどこ行ったか知らないか?」
「さぁ、何処に行ったかなんて知らないけど、そんなに欲しかったの?」
「いや、旅の連れが落とし主だった」
「……もしかしてあたし恨まれてる?」
「今んとこ大丈夫、まだ俺が言ってないからな、ただ……」
「ただ?」
「バレたら噛み付かれるな、しかも後が付くくらい」
「はいはいはーい!
あたしあのペンダント買ってった奴の心当たりあるわよ!」
「良し来た話せ」
本当の所、レイチェルに噛まれたら後が付く所か穴が空くし血も抜けるんだが、わざわざ言う必要が無いので黙ってる
こんな所で立ち話も、と言った事で俺とリオは近くの酒場に入って腰を落ち着けた
「それで、心当たりってのは何なんだ?
あ、俺は一番安い酒を」
「世間話のついでに言ってたのよあの客、例のペンダントを奴隷に付けて見栄えを良くするって
あたしは蜂蜜酒を下さい」
「つまり、何だ、奴隷持ちの金持ちって事しか分かってないじゃねーか」
「ふふん、ここで話が終らないのがこのあたしよ
あの客奴隷が欲しかったらランド協会のニコライへって言ってた、ランド協会って言ったら大手だよ」
「お、いい感じに話が進んで来たな」
「で、明日そのニコライ主催の奴隷オークションが有るんだけど、コレ招待状ね?」
「完璧だ、リオ•モンテグラル」
そのままノリで招待状を貰おうとしたらスルリと掌から抜けていった、ヒラヒラと招待状を揺らして此方を見ている顔はフードのせいで見えないが何となく笑ってるような気がする
まぁ、そりゃそうだよな
「んで、幾らだよ?」
「んー、コレはお金で買える物じゃ無いからなあ、しかも情報もあげたし」
「情報は連れに黙っててやるんだからチャラだ」
「そんな事言わないでさ」
「んで、結局何が欲しいんだ?」
「いや対した事は無いんだけど、ちょっと回復薬とか減ってないかなーと思うんだけど」
「間に合ってます」
「ああそう?
まぁ、何か物を買うなら家にしてくれって話よ
あたしライバル多いからさ、金払いの良い客が欲しいんだけど、あんたみたいに小金しか持ってなくても大丈夫よ?」
言い返したい、だがこの金はレイチェルから貰った物だから見せびらかす物じゃないし、そもそも必要な物を買う為に貰った訳だから無駄使いは出来ない
店員が運んで来た酒をリオと乾杯して一口飲む、気分で頼んだけど美味しくない、そもそも俺は酒が好きな訳じゃないし、飲めてもレイチェルが持ってるような高くて上手くて飲みやすい酒だ
自分の我儘な舌に嫌気が差しながらも酒を飲み込んで机に叩きつけるように置く、衝撃で酒が零れるがむしろ好都合だ、こんなの沢山飲んだら気持ち悪くて吐ける
リオのお店を積極的に使う事とこのお店をおごる事を口約束に招待状を貰う、厚い紙に懇切御丁寧に書き込まれている内容に目を通す、別に内容に俺が不利になるような話は無い
もしコレが商人であるリオのみに渡された物なら、何故俺が持ってると言う話になるし、俺がリオだと誤魔化しても商人じゃないからボロが出る
その点この招待状は誰でも使えるようになっているみたいだ、軽く安堵の息を吐いて懐に招待状を仕舞う、残念ながら俺はまだレイチェルから影の倉庫の魔法は教えて貰ってない
「いや、何から何までありがとう、お陰で助かったぜ」
「それはお互い様でしょ、あたしは取った宿に門限有るからもう帰るよ、また何時か、今度はお金を持ってる時にでも」
「おう、大金持っていくから待ってろ」
リオが酒場から出た後、暫くはちびちびと酒を飲んでたが、何時絡まれるとも分からないので早急に帰る事にした、酒場を出ればいい感じに夜だったため、恐らくはレイチェルに説明してからお風呂に入ってすぐに寝れるだろうと思うとアクビが零れた
宿屋に戻ると既にレイチェルは戻って来てたのかレイチェルのベッドに腰掛けて待っている、室内に入った俺に気付いたのか暗い顔を此方に向ける
「キカイジマ……、私どうすれば良いのかしら、私、ペンダントが……アレは大切な物なのに……」
「そう暗くなんなっての、一応目星は付いたぜ」
「ほ、本当!?」
胸元に飛び込んでくるように服を掴んでくるレイチェルを一先ず離して落ち着かせる、それでもまだ落ち着きが無くソワソワとしている
とりあえず椅子に座ってレイチェルに話を聞かせると、ようやっと落ち着いたのか、何時もの優雅で余裕のある鋭い幼さの残った顔に戻った
「……分かったわ
キカイジマ、貴方は明日その場所に行って何が何でもペンダントをしている奴隷を買いなさい、軍資金も渡すわ」
「分かった、ってレイチェルは?」
「私はやるべき事が有るから別行動よ、良いわね、例え買えずとも買った奴は覚えておいて、夜中に忍び込んで来なさい」
「それってもしかしなくても泥棒何じゃ、てか俺だけ行くの?」
「それが嫌なら貴方が買うしか無いわ、ちゃんと取り戻せる事を期待しているわよ?」
「……そんなプレッシャー掛けなくても、そもそも本当にレイチェルのペンダントかどうかはまだ分からないぜ?」
「違ければまた探せば良いのよ」
レイチェルのペンダントに対する執着が物凄い、こんなレイチェルは初めて見た、と言ってもそこまで付き合いが長い訳じゃないが、俺の知ってる中では始めての事だ
それだけレイチェルにとってペンダントが大切だと言う事か、もしかしたら誰かの形見かもしれない、そう思うと何だか緊張して来た、マントを脱いで服装をレイチェル選出の寝巻きに着替えてベッドに潜り込む
そこでやはり気になるのはペンダントの事だ、あんなに感情を表に出したレイチェルがペンダントより優先する用事も気になるが、やはりそちらより関わりが有る分だけペンダントの方が気になる
リオの説明ではかなりの高性能だという話だが、レイチェルにとってどういった意味合いを持つ物何だろうか、ただ高性能だからと言うにはレイチェルの狼狽具合がただ事じゃなかったのだが……
気になってレイチェルの方へ体事顔を向ければ、暗闇にキラリと光る赤い目を見開いたまま天井を見ているレイチェルの横顔が見える、長い黄金のような金髪がベッドの上に乱れて白い人形のような顔を際立たせている
「なぁレイチェル、あのペンダントって……どういった物なんだ?
その、誰かの形見とかか?」
「形見……では無いわ
アレは、我が家に古くから伝わる……当主の証みたいな物よ」
「はぁ……はぁ!?」
「うるさいわ」
レイチェルの言葉に思わず上半身だけベッドから飛び起きる、コイツ今なんつった?
当主の証みたいな事言わなかったか?
て言うかそのものズバリ当主の証って言ったよな、て事はつまりアレって家宝的なアレか?
そんな大切な物を無くしたというのに、レイチェルにはそれと言って動きは無い、確かに最初はかなり狼狽していたが、今ではアクビなんてしてる
流石に当主の証を無くしてるのに余裕あり過ぎて、驚いてる自分がバカみたいに思えて来てベッドに潜り込む
「そんな大切な物俺に任せて大丈夫なのかよ?」
「無くなったのなら無くなったで仕方ないわ
過ぎた事を何時までも気にしているのは愚者のする事よ、何時までも過去にばかり気に掛けてないで、これからを考えた方がよっぽど有意義だわ」
「おいおい当主の証じゃないのかよ」
「みたいな、と言った筈よ、現に当主では無い私が所持している事から分かるでしょう?
何でもずっと昔から有る小さな鉱石を加工して作ったらしくてね、詳しい事は私も分からないのよ」
「何だかなぁ、ソレを無くしちゃうってどうなんだろ」
「もう良いでしょうこの話は、いい加減に寝るわ」
「極めて了解」
レイチェルも寝る体制に入ったのか、シンと静まり返った部屋にポツリと囁くように声が零れた
「お休み」
「……おやすみなさい」
明日からはなんだかんだで忙しくなりそうだ
俺は瞼を閉じて意識を落とした
何かもう少しでお気に入りが30人だよ、ビックリだね
所でリオってどうしよう、ぶっちゃけまだ男か女かで迷ってる、女性ばっかしか出てこない物語って何か変だよね、リオは男要因にしようか、それとも男装の麗人にしようか
……面倒だな、後で考えよう、後でできる事は後でやる!