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自作小説倶楽部 第2冊/2011年上半期(第7-12集)  作者: 自作小説倶楽部
第7集(2011年1月)/テーマ 「初○○」&「やきもち」
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NO.2 cheru著 「初謝罪・息子」


その日、 のぼるは 青年に対する質問の流れを考えていた。

 

言動の悪さをも “売り” にしていたスポーツ選手の謝罪会見。


“売り”にしていたのは 自分たちマスコミも同じなのだが

そんな事は今はどうでもよかった。

 

世間が注目しているのは 俺ではない。

試合で反則行為をした事を 世間に謝る選手の姿に注目しているのだから。

  

 

それにしても到着が遅いな。

フフ。 

謝罪会見に遅刻するとは

そこも責めてくれと 言っているようなもんじゃないか。

 

チンピラのような振る舞いだが 父子の信頼関係は深いからな。

そこを押すと 泣く画がとれるかもしれない。

ネチネチ質問して いっそブチ切れたら それはそれで面白いかもしれないな。

 

   

予定より遅れて選手が会場に現れた。

 

フラッシュの中にいる二十歳の青年を見た瞬間、

何故か 登の脳裏に 一人で遠くに暮らしている息子 「正義」 の姿が浮かんできた。

 

 

(なんだ? しっかりしろ、これから質問を始めるんだぞ!)

 

  

「あの試合は反則があったと認めるんですね?」

 

「・・・・反省しています」

 

「お父さんは 反則行為について何といっていましたか?」

 

「・・・・何も言い訳しません。 深く反省しています」

 

  

質問をする登の脳裏から 息子・正義の姿は消えなかった。

 

 

同い年だ・・・

目の前にいる この青年と息子は 同い年だ。

 

もしも 俺を責める言葉を 息子が浴びせられたら

あいつは・・・

  

 

「何故お父さんは出てこないのですか? 息子のあなたに全てを負わせて」

 

登は 息子の事を考えながらも質問をしていた。

 

  

「無責任ですよねぇ。 そんなお父さんを どう思いますか?」

 

「俺にとっては  大切な親父です」

  

 

・・・・・・・言ってくれるだろうか。 正義は。

  

 

世間がどう思おうと どう言おうと、

俺の事を 「大切な親父だ」 と言ってくれるだろうか。

 

これも この青年のパフォーマンスなのか?

 

登は 「羨ましい」 と思った。

それが真実か パフォーマンスか 関係なく。

 

  

君達がやった事は間違った事だ。

やってはいけない事を やったのだから 責められて当然だ。

 

だが 世間の君に対するイメージを 少しは変える事はできる。

 

 

耐えろよ・・・・!

 

  

登は他の記者たちと質問を続けた。

繰り返し、 執拗に。

 

「お父さんは今日 あなたを送り出す時 何と言ってくれましたか?」

「お父さんも出てきて きちんと謝罪するのが筋でしょう?」

「何故 あなた一人に全てを負わせるようなことを?」

「ここに現れないという事は 反則を指示したと認めるんですね?」

「お父さんに対して何か言いたいことは?」

 

(耐えろ。 切れるなよ。 きちんと応えるんだ。 耐えてくれ!)

 

 

「親父も深く反省しています。俺は長男だから家族を代表して謝ります。

本当に すみませんでした」

 

 

急いで記事にしなければ。

 

会見が終わり 会場を出た登の頬に 雨に紛れた涙がつたった。


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