表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
93/146

10歳:「お祖父様の事情(2)」

 

 

 アギタさんを一言で表すなら、老紳士だろう。

 

 白髪と黒髪が半々ほどのかっちりした髪型に黒い目、容貌だけを見れば50歳くらいだろうか。

 背筋の伸びたシャンとした姿勢と体格を見ると、それより5歳は若く言っても通じそうだ。

 

 パリっとしたシャツに黒のスーツのような服を着こなし、白手袋を着け、右手にステッキ、左手に外で被っていただろう帽子を持っている。

 動作は機敏なので足腰が悪いわけではなく、お洒落の一つとしてステッキを持ち歩いているのだろう。

 

 個室まで案内してくれた店員に、私とロイズさんが飲んでいたものと同じお茶を頼み、席に座った。

 

 

「本日は、お忙しいところお呼びしてすみません」

「いえ、ユリアお嬢様の御用とあらば、すぐさま馳せ参じましたのに……」

 

 

 ジロリとロイズさんを軽く睨みつけ、すぐさま私の方に視線を戻す。

 

 

「しかし、わざわざ、わたくしを外に呼び出さずとも、本家の方に来ていただければ、大奥様もお喜びになられますのに」

「そうですね。ちょっと内密に話がしたかったので」

「内密の話、ですか?」

「はい……ええと、質問の内容をまとめたいので、少し時間をください」

「ふむ。分かりました」

 

 

 アギタさんは、私の態度に少し戸惑いつつも、静かに私の様子を伺っている。

 ロイズさんは、場を完全に私に任せるつもりなのか、腕組みをして私とアギタさんのやり取りを見守っている。

 

 さて、問題はどうやって切り出すかだ……別にお祖父様を害するつもりはないが、アギタさんは立場的に言えば、お祖父様寄りだろう。

 そうなると下手な質問はできないか?

 

 ただロイズさんが、その辺りのことを考えずにアギタさんを呼び出したとは思えない。

 う~う~。とりあえず、アギタさんのことを信じて、真正面からぶつかってみるか?

 

 店員さんが持ってきたお茶を、アギタさんが一口飲み、カップをソーサーに戻したところを見計らって口を開いた。

 

 

「失礼しました。アギタさん、いくつか教えてもらいたいことがあるのです」

「ええ、わたくしめでお答えできることでしたら、何なりとお訊きください」

「お祖父様ですが、リックの件をどう考えているのか、分かりますか?」

「リックお坊ちゃまの件と申しますと、若旦那様の養子にすることですね?」

「はい……」

「どう考えているも何も、リックお坊ちゃまを本家の跡取りにしようと考えていらっしゃる、ということでしょう?」

 

 

 さも当たり前のように言われてしまった。何も裏がないのか、知っていて黙っているのかが分からない。

 ……というか、ここで疑心暗鬼になってもしょうがないな。

 

 

「カイト伯父様に子供がいないのには何か理由が?」

「……ユリアお嬢様の前では、少々申し上げにくいのですが……」

 

 

 ん~? 保健体育的な意味で、かな?

 

 

「どうすれば子供を授かるか位は知っていますし、それくらいでは困りません。

 そうですね。伯父様と伯母様のどちらに問題があるのでしょうか?」

「失礼いたしました。

 わたくしは、若旦那様、すなわちカイト様のほうに問題があると……大旦那様と若旦那様ご本人より伺っております」

「ふ~む……」

 

 

 魔術で、そういうのは治療できないのかな?

 先天的なものは難しいけど、幼い頃に病気でとかなら、何とか治せる気がするんだけど。

 まぁ、今はひとまず置いておこう。

 

 

「私のお父様は15歳の頃、軍に入りましたよね?」

「ええ、もう15、いや16年前の話になりますね。つい先日のことのようですが、いやはや、時の流れとは早いものです」

「どうして、お父様が軍に入ったか、その理由は知っていますか?」

「ケイン様が軍に入られた理由ですか? それでしたら、ご本人に直接お聞きすれば早いのでは?」

 

 

 微妙にはぐらかせようとしている?

 ここは押してみるか?

 

 

「私が気になっているのは、そのことにお祖父様がどう関わっているかが、知りたいのです」

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ