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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
91/146

10歳:「月明かりの下でのお茶会(4)」

 

 

「つまり、まとめると、ユーリの前世はカルチュアとは異なる世界の人間で、そこにあった遊びのルールと、この世界の法則がそっくりであり、生まれた時から記憶があったために魔術の知識があった。

 ――ということか?」

「…………」

 

 

 賢いとは思っていたけど、フェルの理解力の高さに思わず絶句する。

 もちろん、できるだけ分かりやすく簡潔に説明したつもりだけど、途中からフェルの方から的確な質問をし始めて、私はそれに答えるだけになっていた。

 

 

「ん? どこか間違えてたか?」

「いや、あってるよ。あってるから驚いてたんじゃないか。フェルも私と一緒で転生者だったりしない?」

「そうだったら面白かったがな。

 実は聞いていても、分かってないことの方が多い。ただ演劇なんかと一緒で、そういうものだと受け入れただけだ」

 

 

 その受け入れただけ、って言うのは十分すごいんだと思うけどな。

 子供らしくないのか、子供だからできることなのか。

 

 

「ただ1つ気になるんだが……なんでユーリはこの世界に転生してきたんだ?」

「そんなことを訊かれても、私には分からないけど……むしろ私が知りたいくらいだし……」

「いや、言い方が悪かったかな。

 この世界の常識として、ボクは魂の転生自体は当たり前のことだと思っていたから、前世の記憶を持っているのは珍しいけど、そういうこともあるかもしれない位にしか感じていない。

 けど、ユーリの前世はこの世界の人間じゃないという……が、ここまではいい」

「いいんだ……」

「ああ、ボク自身の能力にも関わることだからな、多少は信じやすい。

 その上で、ボクが気になっているのは……なんで、ユーリはこの世界のことを知っていることができた?」

「それは、たまたまこの世界とゲームの設定が似ていたからで……それこそ、偶然としか言えないんじゃない?」

 

 

 私の答えに満足がいかないのか、フェルが少し難しい顔をする。

 いや、転生者であることを暴露した以上、私の方が精神的にはずっと年上なんだけど……なんかこう、フェルの大人っぽさは筋金入りなのか、精神的にも私と同い年ではないかと感じるときがあるからすごい。

 

 

「偶然で済ませるには、不自然さが残るんだ……」

「不自然さ?」

「ユーリ、想像してみてくれ。

 ボクたちが暗号遊びをしていたとしよう。例えば、お互いだけに通じるような文字を作るんだ」

「うん」

「朝起きたら、別の国でもいいけど、どこか知らない場所に連れ去られていた。

 そして、その場所では、ボクたちが使っていた暗号が当たり前に使われている文字だった。

 ……な? 変な感じがしないか?」

「…………」

 

 

 フェルに言われて、私も初めてのそのことに違和感を覚える。

 いや、むしろ敢えて考えないようにしていたことなのかもしれない。

 

 私がこの世界に転生したのは偶然なのか、それとも誰かの意図が働いているのか。

 もし、誰かの意図だとしたら、私はひとまず感謝をしよう。

 少なくても、この世界に生まれて大切な人たちを得ることができた。

 

 その誰かによって、私や大切な人たちが傷つくならば、私はその誰かを許しはしない。

 もちろん、私ができることなどささやかな抵抗にしかならないとしても、だ。

 

 

「とは言ったものの、そもそも何の理由も根拠もなく、ただボクの考え過ぎって可能性が高いな」

「あぅ……」

 

 

 フェルが無責任なことをさらりと言い放つ。

 いや、フェルは責任を負う必要なんかこれっぽっちもないんだけどな。

 

 私が決意を新たにしたところで、いきなり水を差された気分だ。

 熱血しそうになってた自分がちょっと恥ずかしい。

 

 でも、私の想いは揺らぐことはない。

 世界を救う勇者になるつもりも、目の届く範囲全ての人を救う聖者になるつもりもない。

 ただ、手の届く触れる範囲で大切な人を大事したいだけのこと。

 

 

「さて、今日はそろそろ帰るとするよ」

「そうか。それじゃあ、また明後日の晩に」

「……ああ、明後日の晩に」

 

 

 残っていたお茶を飲み干して、席を立つ。

 

 

「フェル、ありがとう……」

「ん? どういたしまして?」

 

 

 突然の私の感謝に、意味も分からずその言葉を受け取る。

 

 フェルへの気持ちを言葉にしたら「ありがとう」の言葉を紡いでいた。

 というか、私も何に対しての感謝だか分からないんだけどな。

 

 

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