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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
86/146

10歳:「花の香りとエルフの少女(2)」

 

 

「わたしに渡したいもの……?」

「うん、私からのプレゼント。はい、これ」

 

 

 私は外套の内側に作られた大きなポケットから緑色の瓶を取り出して、ペルナちゃんの両手にしっかりと持たせる。

 ペルナちゃんは、そろそろと手探りで瓶を調べる。

 

 

「ガラスの……瓶ですか? あれ? ふたが、ついてる……?」

「そう、中には液体が入ってるから、こぼさないようにゆっくりと開いてね」

 

 

 私の言葉にしたがって慎重な手つきでゆっくりと瓶のふたを取る。

 

 

「……わっ。お花の匂いがします。なんですか、これ!?」

「香水だけど、もらうのは初めて?」

「こ、香水ですか? え、あれ、わたしがもらっちゃっていいんですか、これ!?」

 

 今更になってプレゼントの意味を理解したのか、慌てふためくペルナちゃんが可愛くて癒される。

 元気っ子なリリアも可愛いけど、ペルナちゃんみたいなゆるふわも悪くない。

 

「いいも何もペルナちゃんのために買ったんだから、もらってくれないと私が困るな」

「あ、ありがとうございます! ああ、ふたしないと香りがもったいないです。

 香りが逃げないようにしっかりふたをして、開けないようにします!!」

 

 

 ペルナちゃんがわたわたと瓶の蓋を閉める。

 開けないようにって、いや、香水の使い方って知ってるのかな?

 あ、そうか……香水なら匂いで楽しめると思ったけど、つけるとなると目が見えてないとやり難いそうだ。失敗した。

 

 

「ん~。一度私に瓶を貸してもらえる?」

「あ、はい?」

「それと両手をちょっと前に出して、少しつけるけどいいかな?」

「え? えっと、いいですけど?」

 

 

 なんかちょっと理解できてないっぽいけど、まぁ、いっか。

 

 

「香水はね。化粧品の一種なんだよ。

 使い方は例えば、こうやって手首とかに数滴だけ垂らして……両手首を合わせて馴染ませる」

「あっ……あぅ……」

 

 

 ペルナちゃんの手を取って、香水の瓶を傾けて中身を数滴、ペルナちゃんの右手首の内側に付ける。

 香水の瓶を一旦机の上に置き、ペルナちゃんの手を取ってバッテンを作るように両手首の内側を重ね合わせ、きゅっと軽く押して匂いを皮膚に馴染ませる。

 

 

「はい、こんな感じかな?」

「……あ、ありがとうございます。わっ、わたしの手からお花の香りがします!」

 

 

 両手を振り回しながら、驚きと喜びを表す仕草をする。

 ペルナちゃんが手を振り回すと、手首につけられた香りが部屋に拡散していく。

 

 

「次から香水を垂らすのが難しかったら、ペートに頼んでね」

「あうぅ……すみません!」

「いや、別に謝るようなことじゃないからね? ペートも今のを見てたからやり方は分かったでしょ?」

「……お、おうっ!」

 

 

 ん~? なんだろう、2人ともちょっとギクシャクしてない?

 ペルナちゃんは、身体の向きをなんだか変な方を向けているし、ペートはそんなペルナちゃんと私を見比べてる、みたいな。

 どうしたんだろ?

 

 

「えーと……ああ、ペート、この瓶はガラスだから割れないに注意して、どこか倒れたり落ちたりしないような場所に置いといてくれない?」

「わ、分かった!」

 

 

 私から香水の瓶を受け取り、瓶をボロ布で巻くようにして一緒に箪笥の小さな引出しにしまう。

 箪笥自体は頑丈だし、布で保護しておけば、早々に瓶が壊れたりしないだろう。

 

 

「それからペート、このあとで私と一緒に出かけて欲しいところがあるんだけど、大丈夫かな?」

「ケインが言うなら、どこへでも付いてくさ!」

「ペルナちゃん、来て早々で悪いけど、ペートを借りていくね? また今度時間があるときに遊びに来るから」

「は、はい、お待ちしています!」

 

 

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