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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
78/146

10歳:「お父様の事情(3)」

 

 

 ロイズさんに用事を頼んで食堂に戻ってきた母親に就寝の挨拶を、シズネさんに別れの挨拶をして、自分の部屋に向かった。

 

 そして、寝巻きではなく、いつもの男物の服に着替え、ベッドに大きなクッションを2つ並べて、その上から毛布をかぶせる。

 本気で偽装をするつもりなら、魔術で幻影を作れば完璧なのだが、そこまでする気にはなれなかった。

 

 客観的に見れば、ずいぶんと矛盾した行動だと思うが、これは私にとっての甘えなんだろう。

 この夜遊びがバレて欲しいような、欲しくないような……構ってもらいたがる子供のようだ。

 精神年齢だけを見れば、今年で30歳みそじなんだけどなぁ、心はどれくらい肉体に依存するのんだろうか。

 

 飛行と姿隠しの魔術を使い、フェルの家へと飛ぶ。

 

 わずか5分ほどで、いつものベランダに到着をした。

 

 

「やぁ、こんばんわ、フェル」

「こんばんわ、ユーリ」

 

 

 テーブルに座って、〈蓄光石〉のランプで読んでいた本を閉じる。

 タイトルが一部しか読み取れなかったけど、魔術書か?

 

 

「なんてタイトルの本を読んでたの?」

「ん、『魔術の行使と想像力』という実践書だな。呪文を詠唱するさいに、その呪文に対して明確なイメージを持つことが魔術の効果を増幅させるという内容だ」

「あー、あの本か。フェルは、どう思った?」

「文章は分かりやすく読みやすいが、実証例として『20人中13人の魔術師に効果があった』とあったけど、それだと偶然と言える範囲じゃないか?

 半分まで読んだが、実際に自分で試して見ないことには何とも言えないな。

 ユーリも読んだことがあるんだろう? 魔術師としての意見は?」

 

「あー、んー……私の場合はちょっと特殊だからね。ただ、その本に書かれていることは、結果としては間違えていないと思うよ」

「ふむ、相変わらずユーリは得体が知れないな。そこが楽しいのだが」

「それって、褒めてるの? からかってるの?」

「もちろん褒めているに決まっている」

 

 

 まじめに言い返されると、それ以上反論できないけど……。

 

 

「ところでさ、フェルって結婚ってどう思う?」

「また唐突な話題だな。なんだ、好きな娘でもできたのか?」

「違うから! 二重の意味で違うから!

 別に好きな人ができたわけでもないし、とりあえず、私は女の子だって、何回言えば!」


「言われたのは、まだ2回目だな……ちょ、待てっ、おもむろに服を脱ごうとするな!

 女の子だと言うなら、はしたないだろうがっ!!」

「ふっ、女には引けないときがあるのさ」

 

 

 ここで女の子と認められないと負けたような気がするんだよな。

 理由はよく分からないけど。

 

 

「……で、まぁ、結婚の話だったな。ボクとしては協定の手段っていうところじゃないか?

 特に貴族の結婚なんて、主に家と家の繋がりの強化が主な目的と言ってもいいだろうしな。

 例外としては、恋愛感情と呼ばれる一種の精神的依存関係による結婚もあるみたいだけど……」

「ナチュラルにスルーしたか、まぁ、いいけど……フェルは結婚とかできそうにないよね」

 

 

 フェルの場合、女性嫌いというか、ほとんど人間嫌いの域だもんな。

 まして結婚なんて、紐なしでバンジージャンプして怪我をせずに着地するくらいの難易度じゃないか?

  人はそれをただの飛び降りって言うけど。

 

 

「そんなことはないぞ? これでも婚約者がいるからな。もちろん、親同士の契約みたいなもんだが」

「あ~、そうなんだ。相手はどんな子なの? もう2人で愛を語り合っちゃったり?」

「ふむ。ガースェの家の末娘で前の季節で3歳になったはずだな。まだ1度しか会ったことはないが、ろくに言葉も喋れないのに愛は語れないだろう?」

 

「そっか、7歳差かぁ。フェルが15歳のときに相手は8歳、ちょっと犯罪臭いな」

「ユーリ、ボクにかなり失礼な想像をしてるだろう?」

「紫の上計画だね。がんばれ、私もフェルの人間嫌い改善には協力するから!」

「そのムラサキノウエ計画とやらは、よく分からないのだが……」

「ん? 小さい女の子を捕まえて自分好みの女性にしちゃうよ計画、みたいな?」

「…………」

「…………」

「…………」

「ごめん、謝るから、笑顔のまま無言で見つめるのは止めてくれる?」

「分かればいい」

 

 

 いや、怖いんだよ。表情は笑顔なのに、目が一切笑ってないのって……10歳児にできる顔じゃないね。

 

 

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