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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
73/146

10歳:「ユリアの料理(1)」

 

 

 市場で〈グラススネイル〉の肉と、他に必要なものをいくつか購入した。

 

 解体される前の〈グラススネイル〉を見れたが、殻の直系が1メルチ(約1m)近いカタツムリだった。

 お店のおばちゃんの話では、水辺の近くに木を打ち付けて柵を作り、養殖しているそうだ。

 柵を乗り越えようとしても、ある程度の高さまで行くと自重で落っこちるらしい。その様子を想像して、ちょっと笑ってしまった。

 

 

「ただいまー」

「おかえりなさい、おねえさま。おいしゃさんが来てるの」

「え? お医者さん? 誰か怪我したの!?」

「だれもけがしてないよ?」

「でも、お医者さんが来たって」

「……あの、お姉さま、お医者のお客さんです」

 

 

 私の帰宅を双子が出迎えてくれた。リリアの言葉に不安を感じたが、リックが補足をしてくれる。

 医者が来たと言われたから少し焦ったけど、お客さんとしてくるなら問題はない。

 …………ん?

 

 

「そのお客さんは応接室?」

「うん、おかあさまとおしゃべりしてるー」

「ありがと」

 

 

 私は双子の頭を荷物を持ってない手で交互に撫で、厨房に荷物を置き、私室でいつもより女の子らしい普段着に着替えて、足早に応接室へ向かった。

 

 

「失礼します。お母様、お客様がお見えと聞いて挨拶に参りました」

「あら、ユリィちゃんお帰りなさい」

 

 

 その人は黒かった髪にほんの少し白髪が混じり、5年前にはなかったシワが見え隠れしている。

 

 

「……お久しぶりです。シズネさん、お元気そうですね」

「ああ、ユリアちゃんも元気に大きくなって何よりだね。なんでも男装して王都を探検しているんだって?」

 

 

 予想通り応接室にいたのは、約5年ぶりに会うシズネさんだった。

 快活な口調とピシリとした姿勢は変わっておらず、なんだかホッとしたような気持ちになる。

 

「お母様から聞いたのですか?」

「それと双子ちゃんたちからもな……しかしまぁ、お父様に似てすっかりハンサムになっちゃって」

「ありがとうございます」

「さぞかし男の子の格好も似合うだろう? 後で見せて欲しいね」

「ええ、良ければ、ぜひ」

 

 

 下手に可愛いと褒められるよりも嬉しかったりする。

 

 

「ところで、ずいぶん急でしたけど、何かあったのですか?」

「いや、急に休みが取れてね。本当はもっと早くに顔を見に来たかったんだけど、おかげで仕事が忙しくなってな」

「使ってくれてるんですね。あれ」

 

 

 別れの際に渡した〈宝魔石〉化させた緑の石のことを思い出す。

 完成品の第一号だったので色々と心配していたが、無事に機能しているようで、ほっとした。

 

 

「ま、あたしは簡単な魔術しか使えないけどね。おかげで公認魔術師になれて、仕事面も充実している。

 ユリアちゃんには感謝しているよ」

「私は石を用意しただけです。後はシズネさんの力ですよ? でも、その気持ちは受け取ります。

 あ、そうだ、シズネさん、今日は晩ご飯は一緒に食べていけますか?」

 

 

 創作料理の参考意見は多い方がいいからな。

 料理に関して言えば、前世の知識をフル活用しても、危険性が少ないだろうことが嬉しい。

 

 

「さっき、バーレンシア夫人にも誘われて、ご一緒させてもらうことになっていたけど?」

「それは良かったです! ちょっと珍しい料理を作るので、ぜひ食べて感想を聞かせてください」

「うん? ユリアちゃんが料理するのかい?」

「たまにお母様やアイラさんのお手伝いもしてるんです」

「ええ、ユリィちゃんてば、器用だし、変わった料理の作り方も色々と知っているみたいなの」

「ほ~。そりゃ楽しみだ」

「楽しみにしていて下さい、頑張ります!」

 

 

 よし、気合は十分。頑張ろう。

 

 

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