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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
72/146

10歳:「居住自由区の姉弟(7)」

 

 

 2階に戻って、〈クエシャの実〉を飲みながら、ペルナちゃんとのおしゃべりを楽しみ、しばらくして私とグイルさんは自由居住区を後にした。

 今いるのは、すっかり常連となりつつある詰め所の個室だ。

 

 

「グイルさん、何か聞きたいことがありそうですね」

「あ~、ん~……」

 

 

 ペートとの話し合いからほとんどしゃべらずに、帰ってくる途中もずっと何かを聞きたげな様子のグイルさんに声をかける。

 ちなみに、私は屋敷を出たときに来ていた元の服を着替えてたが、グイルさんは私服のままだ。

 

 

「その……だな、ケイン君はなんで彼らを助けようと?」

「ペートにも言ったけど、ただの自己満足ですよ?

 それと子供は好きなので、結婚したら子供は5人くらい欲しいですね」

 

 

 あ、でも、産むのは私か? …………深く考えないようにしよう。

 

 

「相変わらず子供っぽくないというか……ケイン君と話していると、年上の人と話している気分になるな」

「ちょっと大人っぽくなりたいお年頃なんです」

 

 

 まぁ、精神的にはグイルさんとは一回り違うけどな、私が年上の方向で!

 

 

「それよりも……孤児院のことについて、どう思いました?」

「ああ、なんていうか気分の悪い話だな」

「そうじゃなくて、えっと、私もあまり詳しくは知らないんですが、孤児院はどこが運営しているんですか?」

「運営? 孤児院は、お店じゃないだろ?」

「経営じゃなくて、運営です……つまり、よく知らないんですね」

「うっ……」

 

 

 まぁ、グイルさんが孤児院の運営のことを知っているとは思ってなかったけど。

 この世界に、社会福祉って言う概念があるかは分からないが、孤児院の運営は国の政策の一環という可能性が一番高いだろう。

 

 

「おっ、帰ってきてたのか? スリ小僧は見つかったか?」

「あ、ハンス副長、ちょうどいいところに! 孤児院の運営って、どこがやってるんですか?」

「は? いきなり何の話だ? それよりスリ小僧はどうなったんだ?」

「ええと、話すと長くなるんですが……」

 

 

 グイルさんが説明しようとするのを遮るように、口を挟んだ。

 

 

「ちゃんと話をつけてきましたよ。とりあえず、私は見逃すことにしたけど、問題ありますか?」

「は? いや、一応犯罪者は取り締まるのが、おれらの仕事なんだけど……」

「スリなんてせこい犯罪者を追いかけないで、もっとドーンと悪いことをやってる人を捕まえて下さい」

「そんな悪人は早々見つからないって……おれらの仕事は、大体が酔っ払い同士のケンカの仲裁やチンピラの逮捕くらいだ。たまに殺人犯の捜索をしたりするけどな」

 

 

 ハンスさんが苦笑しながら手を左右に振る。

 

 

「ところで、軍の担当区域ってどのくらい厳密に決まっているんですか?

 例えば、ある地区内の犯罪者を捕まえるのは、何番隊みたいに決まっているとか」

「担当区域は、あくまで巡回の地区であって、どの地区の犯罪者だろうが犯罪者を確保するのには関係ないぞ?」

「例えば、国家予算の横領とかは?」

「そうなると王宮の文官や十二番隊以外のヤツらとも色々協力する必要が出てくるな」

「私の予測が正しければ、組織ぐるみでの横領が行なわれていますよ」

「は?」「へ?」

 

 

 ペルナちゃんとペートがいた孤児院の運営費を国が出しているとして、食事の様子から横領かそれに近いことを行なっているとみて間違いない。

 

 そうでなくとも、孤児を虐待しているのだ。

 この世界に児童虐待を取り締まる法律はないが、彼らが虐待されてもいい理由もない。

 いや、もしかしたらこういう場合も傷害罪は適応されるのかな?

 

 ともあれハンスさんたちには頑張ってもらわねば。

 

 

「あ、それと〈グラススネイル〉の肉って、市場に行けば売っていますか?」

「売ってると思うけど……」

「今度はいったい、何の話だ?」

「美味しい料理の話でしょうか?」

 

 

 人間、たくさん動いて、たっぷり食べて、ゆっくり寝れれば幸せなのにな。

 

 

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