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3歳:「バーレンシア家の人々(2)」

 

 

 名残惜しそうに母親が父親の身体から離れた。

 3分か……今日はいつもより短かったか?

 

 

「それじゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃいませ、あなた」「いってらっしゃいー」

 

 

 この世界の常識は、まだほとんど分からないが、キスや子供の頭を撫でる仕草が親愛の情を示しているところなど、元の世界と同じ部分が多いようだ。

 

 さて、玄関先で毎朝3分以上かけてキスをするという、この2人のお見送りの挨拶は、果たして当たり前の常識なのだろうか? 多分、違うんだろうなぁ。

 夫婦のサンプルが、両親しかいないので答えは出ないが……あえて言うなら、万年新婚夫婦という言葉が似合う。まぁ、両親の仲が円満なのは良いことだけど、見ているオレの方が恥ずかしくなる。

 

 

 

 

 3分というのは、オレの体感時間だ。もっとも時間感覚については、かなりの自信がある。

 前世では、「タイマーの画面を見ずに1秒の狂いもなく10分を計れる」という特技があった。

 『グロリス・ワールド』では、魔術の効果時間が切れたかどうかが一見して分からないため、事前に効果時間を計っておき、支援魔術が常に途切れないように魔術を使うようにしていた成果だ。

 

 

 時間と言えば、この世界の1年は「地の季節、風の季節、水の季節、火の季節、森の季節、海の季節」の6つの季節に分けられる。

 

 『グロリス・ワールド』の知識では、この世界は6と言う数字が神聖視されているためだ。

 これは、神が最初に創った精霊王の数が6名だったことに由来するらしい。

 地の季節が、元の世界で言う大体1月から2月くらいになる。

 

 1つの季節は10日を1巡りとする6巡り(60日)からなり、1年が360日となる計算だ。

 オレが生まれたのが「水の季節の3巡り目の第2日」、今が「水の季節の4巡り目の第8日」となる。

 

 1日は昼の6刻と夜の6刻に大雑把に分けられ、厳密な時間の区切りはない。オレの体感時間では1刻で2時間より少し短いくらいだと思う。

 短い時間だと「10を数える間」とか、口頭でのカウントになる。

 

 嬉しいことに基本的なモノの数え方は、10進法が基本となっているようだ。

 

 

 ついでにこの世界の度量衡についていうと、最も小さい長さが1イルチ(=約1cm)、最も小さい重さが1グラル(=約10g位)になる。

 大きな単位として、長さは100イルチで1メルチ(=約100cm)、100メルチで1キルテ(=約100m)となる。重さは100グラルで1ガラル(=約1kg)、100ガラルで1ギロム(=約100kg)となるらしい。 

 

 これはあくまで、自分(3歳児)の体重と身長から割り出した相対的で感覚的な比較だ。

 両親がオレの身長と体重を「95イルチ(約95cm)くらいの15ガラル(約15kg)くらい」と言っていたことを根拠としている。

  

 

 お金について言えば、『グロリス・ワールド』では、金の単位は「イェン」だった。今の生活でオレが、お金を使う機会がないため、貨幣価値は良く分かっていない。

 

 少なくとも、小さい子供がお小遣いを握り締めて、近くのコンビニまでアイスを買いに、なんて簡単にできる世界ではないからだ。

 

 

 

 

 ……と、話を少し戻して。

 

 オレが今のところこの世界で知っている場所は、この家の敷地と、裏の森に少し入った所までだ。

 

 この家の敷地は、正面の道を除いて、回りを森に囲まれている。

 家の敷地は、表と裏の庭を合わせれば、結構な広さになるが、森はその何百、もしかすれば何万倍も広いようだ。

 

 

 家の正面から少し遠くを見ると、小さな集落が見える。そこがこの家から最も近い、アイラさんの実家がある村だ。

 その村でさえ、歩いて半刻(1時間弱)程度掛かる距離にあるらしい。

 

 父親は、その村を含めた近くのいくつかの村を治める立場にあり、普段から馬に乗って見て回っているようだ。

 そろそろ麦の収穫が始まるとかで、最近は少し帰りが遅くなっている。

 それでも、日が落ちる前には必ず帰ってきて、母親を抱きしめる愛妻家だ。本当にごちそうさまです。

 

 

 裏の森に入ってすぐの所に小川が流れている。

 普段、そこで母親やアイラさんは洗濯をしている。暖かい季節なるとみんなで水浴びに利用したりもする。

 

 残念なことに、この家の“入浴”の文化はあまり進んでいない。身体を洗うのは、水浴びか、水浴びができない時は、お湯を沸かし、柔らかめの布で肌をぬぐう程度だ。

 

 風呂は、絶対に欲しい。オレは生まれ変わっても日本人の心は忘れていないのだ。

 いつか自分で造るか、父親に甘えて造ってもらおうと思う。

 

 

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