表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
62/146

10歳:「王都を歩こう(2)」

 

 

「毎度あり~」

「どもー。さて、こんな所かな」

 

 

 代金を払って、紐で括って繋げられた干し肉を受け取る。これはジルへのお土産だ。

 いくつか露店を見て回った結果、土いじりが好きなリックにはハーブの苗を、おしゃれに興味がでてきたリリアにはリボンを買って帰ることにした。

 

 それほど大きな買い物はしなかったので、今日売り払った輝石の代金は、ほとんど残っている。

 さて、そろそろ帰ろうかなと考えていると、見覚えのある耳と尻尾を見つけた。

 

 

「グイルさん、こんにちわ」

「ん? ……もしかして、ユリアちゃん?」

「正解です。よく分かりましたね?」

 

 

 私の姿を見て一瞬悩むような顔をしたが、すぐに私だと分かったようだ。

 

 

「いや、雰囲気が全然違うから自信はなかったんだけど、声の質とかで何となくかな。

 そんな格好をして何してるの?」

「お買い物とお散歩です。そういうグイルさんは? お仕事中ですか?」

 

 

 グイルさんの服装は、旅行中のラフな格好とは違い、かっちりとした堅い感じの服を来ている。

 多分、王国軍の制服、軍服ってヤツだろう。

 

 

「ああ、オレの方は巡回中でな。オレやハンス副長が所属する地軍は、こうした王都の治安維持も仕事の一環だから。

 この付近は十二番隊の担当地区なんだ」

 

 

 グイルさんて、口調や軍人をしている割には人の良さそうなオーラが出ているんだよな。大人しい大型犬というか

 ……あっ、犬のおまわりさん! 軍人とか警察官というより、おまわりさんだ!

 

 個人的に、すごく納得してしまった。

 

 

「まぁ、ユリアちゃんなら大丈夫だとは思うが……裏通りとか、あんま危険な場所には行かないようにな。

 いくら腕に自信があるといっても、まだまだ小さいんだし、それに“魔術アレ”は秘密なんだろ?」

「もちろんです」

 

 

 本当に心配そうな顔をされては、下手に反論もできない。

 

 実は、グイルさんより私の方が強いんだけどな。

 

 王都までの旅の途中に、ロイズさんの提案でグイルさんにも稽古の相手をしてもらったのだが、魔術なしで引き分けくらい、魔術ありなら私の圧勝だった。

 前の屋敷では稽古の相手になるのが、ロイズさんとイアンしかいなかったから、今一分からなかったけど、私は新米の一般兵並には素でも戦えるようだ。

 

 ちなみに、ハンスさんには魔術なしには勝てず、強化系の魔術を2つほど使って引き分けくらい。

 ロイズさんとは、かなり卑怯っぽい魔術を使わない限り1撃も与えられないほどの実力差がある。

 

 

「あ、グイルさんこの格好の時に街でであったら、ケインと呼んで下さい」

「ケイン? ……了解。ケイン君は、これからどこに行くんだ?」

 

 

 ノリがいいというか、子供のお遊びに付き合ってくれている感じか。

 

 

「ん、もう帰ろうかと思っていたところでした。それじゃあ、グイルさん、お仕事頑張って下さい」

「気を付けて帰るんだぞ」

 

 

 そう告げて、グイルさんと別れようとした時、

 

 

「わっ!」「おっと」

「っと、お兄さんゴメンなさいー!」

 

 

 私より少し小柄な少年とぶつかってしまい、倒れそうになった私をグイルさんが慌てて支えてくれた。

 

 

「ユ……じゃない、ケイン君、大丈夫か?」

「ええ、お蔭様で転ばずにすみました。ありがとうございます」

「怪我はなくてよかったけど、そうじゃなくて……今のってスリじゃ?」

「…………えっ? ああっ」

 

 

 硬貨を入れた小袋が、ズボンのポケットから煙のようになくなっていた。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ