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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
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10歳:「活動資金を稼ごう(2)」

 

 

 これはいきなり当たりを引いたかもしれない。

 

 ホランさんが買取を除外した石は〈星紅玉石〉と呼ばれる宝石だ。

 前世でもスタールビーという宝石があったが、それに近いかもしれない。ロイズさんに確認したが、4~5千シリルくらいで買い取ってもらえる宝石らしい。

 

 なお、一般的な成人男性が休みなしに1巡り(10日分)働いた場合の給金が約5~8千シリル、年に何日か休むことを考慮した年収だと約15~25万シリルとなる。

 お父様はガーロォとしてはかなり高給取りな方で、昨年の年収が約150万シリルだったらしい。1シリルが日本円で10円くらいだと考えると分かりやすい。

 そうなると買い取り額が数千シリルもする宝石は安いものではないが、さっきの取引からするにこの店なら決して買い取れない金額ではない。

 

 

「買取ができない、ですか? 理由はお聞きしても?」

「〈星紅玉石〉でしたら、当店でも扱っておりますが、〈宝魔石〉の原石となりますと、当店の予算では、即買い取りというのは難しくなります」

 

 

 おおっ! 言い切った!

 そう、この〈星紅玉石〉の原石は、私が事前に〈宝魔石〉化させておいたものだ。

 

 今回の散歩において目標の1つであった「信用できそうな鉱石商を見つける」がいきなり達成できそうだ。

 

 条件は3つ「〈宝魔石〉を見抜く力があること」「客を騙そうとしないこと」「有名な店ではないこと」だ。

 この店とホランさんならば、3つともクリアできそうだ。

 

 

「ええ、そこまで気づいていただけたら話は早い。この石に関しては即金は求めませんので、上手く売り捌いていただけませんか? 売却できたら、そちらの手数料を引いただけの金額でかまいません。

 安心して下さい。決して王国の法に触れるような品ではないことは保証します」

「…………」

 

 

 ホランさんの顔色は表面的には変わらないが、唐突に破格の交渉に相当悩んでいるようだ。

 それはそうだろう、相手は一見して成人にもなっていない少年だ。

 

 

「もし、その話を断りましたら、どうなさいますか?」

「縁がなかったものとしてあきらめます。あ、他の石は買い取っていただけると嬉しいですが」

 

 

 こちらは事も無げな様子でサラリと答える。いや、内心は結構ドキドキしてるんだけどな。

 

 

「失礼ですが、ケイン様……当店をお試しになられていますか?」

「ええ、私はこの石と同じような物を、後いくつか持っています。この街には先日着いたばかりで、長めに滞在することになりそうなのです。

 ですから、末永く付き合えそうな店を探していたんですよ」

 

 

 ホランさんの目を見据えて、ニコリと笑みを浮かべる。

 

 この場面においての笑顔は相当な精神攻撃になるだろう。

 別にホランさんと戦っているわけじゃないけど、こう、気分的なものだ。

 

 

「2割、いえ、手数料として売却額の1割5分を頂けますか?」

「構いません。むしろ、手数料は2割でいいです。その代わり契約書などは作らず、口頭での契約としたいのですが、よいでしょうか?」

「えっ、あ、畏まりました」

「それで、この石はホランさんにお預けするとして、他の石の代金を頂いてもよろしいですか?

 ああ、できれば少し小銭も混ぜてもらえると嬉しいです」

「はい、どうか少々お待ち下さい」

 

 

 石を丁寧に仕舞い、一度奥へ行って戻ってきて私の前に硬貨を数枚並べる。

 

 

「買取の代金で、7,100シリルとなります。〈星紅玉石〉の代金は後日ということで、売れた場合のご連絡先などは?」

「1巡りに1度くらいは様子を見に来ますので、売れていたらその時に代金を下さい」

「畏まりました」

 

 

 軽銀貨が10枚、半銀貨が8枚、銀貨が6枚、小金貨が6枚だ。金貨以外の硬貨を輝石が入っていた小袋にまとめて入れる。小金貨は別々のポケットにしまう。金属製の硬貨だから結構ずっしり重い。

 

 硬貨の価値は、それぞれ1枚で小軽銀貨が1シリル、軽銀貨が10シリル、半銀貨が50シリル、銀貨が100シリル、小金貨が1千シリル、半金貨が5千シリル、金貨が1万シリルとなっている。

 金貨以上の価値を持つ宝石貨というものがあるが、普段からは使わず、国や大きな組織の運営や貯蓄に使われることを目的とした代理硬貨だ。

 

 

「ありがとうございました。これから、よろしくお願いします」

「いえ、こちらこそ。今後ともご贔屓の程を宜しくお願いいたします」

 

 

 ホランさんの90度の最敬礼に見送られ、私は意気揚々と店を出た。

 

 うん、今の商談はかなりの好感触だった。ホランさんも第一印象では商売に対しては真面目そうな人だ。

 途中から、私のほうを値踏みしようとしていたけど、ボロが出てないといいなぁ。

 

 

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