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3歳:「朝、目覚めて……(2)」

 

 

 現状で、オレには幸運だと思えることが3つある。

 

 

 1つ目は、生まれ変わって日本人ではなくなったが、正しい赤ん坊ライフを送っているうちに、両親や使用人が喋っている言語を自動的に習得したらしいこと。

 

 逆に意識して喋らないと、日本語を喋ることができないくらいだ。

 多分、思考もこの世界の言語で行なっているのではないだろうか?

 

 

 2つ目が、生まれた家が、それなりに裕福であること。

 

 この世界の貧富の基準は分からないが、少なくとも使用人を2人も雇えるような家だし、富裕層と言えるだろう。

 これは、前世の1人暮らしだった生活からは信じられない環境だ。

 父親が田舎の領主みたいな立場にあるようだ。

 

 

 3つ目に、この世界の法則が元の世界とあまり変わらないこと。

 

 物を落とせば下に落ちるし、水は高きから低きに流れる。

 少なくとも屋敷にいる人間は目が2つで口は1つ、手足は2本ずつで、指がそれぞれに5本ずつ。

 食事は、黒っぽい粒が混じったパンに、肉や魚や野菜など。どうやら酒もあるらしい。

 季節があって、太陽が昇れば昼だし、沈めば夜になる。月が大小2つあるのはご愛嬌だろう。

 

 

 

 

 さっきから「元の世界」や「この世界」と言っているが、両親や使用人の言葉から、ここは日本であるどころか、少なくとも“前世で生きていた地球とは、全く異なる法則が働く場所である可能性”が発覚している。

 

 分かりやすく言えば“異世界”なのだ。

 

 未だに確実な情報ではないが、オレが入手した情報では、この世界は、オレが前世でハマっていた『グロリス・ワールド』の世界に酷似しているらしい。

 

 

  神の眠れる世界カルチュア――

      唯一の大陸、ミュージシアン大陸。

 

 

 それはまさに『グロリス・ワールド』の舞台となる世界と同じ名前だった。

 

 

 そうだ、これは4つめの幸運として数えていいかも知れない。

 

 

 もしかすると、この世界には、美しいエルフ族の乙女やモフモフした獣人族の子供がいるかもしれない。

 

 古代帝国の遺跡には、まだ誰も見つけていないお宝が眠っているかもしれない。

 

 『グロリス・ワールド』最大の魅力であった“ルーン”による魔術が使えるかもしれない。

 

 

 剣と魔法の世界、これほど男のロマンを刺激するものはないだろう。

 さっきまで、今の現実を認める覚悟ができず、ウジウジとしていたというのに、もうこの世界に対してワクワクしている自分に呆れてしまう。

 

 

 ただ忘れてはいけないのが、オレの身体はまだ3歳児なのだ。

 

 いくら、精神年齢が成人した男のモノであっても、この世界の常識もなければ、体力もない。

 あと10年くらいは、親元でこの世界の常識を勉強したり、身体を鍛えたりする必要がある。

 できれば、野外で活動するための技術なんかも覚えたい所だ。

 

 

 コンコン。

 

 と、オレが決意を新たにした所で、ノックがされ、使用人のお姉さんが入ってきた。

 

 

「おはようございます、お嬢様・・・。洗顔と朝食の準備が整っております」

 

 

 …………それから、淑女しゅくじょとしてのたしなみとかも覚える必要があるだろうか?

 

 

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