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5歳:「陽光差す部屋で夢から覚め(2)」

 

 

 ポスっと、倒れこんだオレをベッドがいつもと変わらない柔らかさで迎え入れてくれる。

 少しこれからについて考えてみよう。

 

 

 お父様とお母様にオレが生まれてから隠していたことを話す。

 これは確定事項だ。

 

 魔術が使えることがバレてしまった以上、外見どおりの振りをし続ける必要もないし、両親に新しい嘘を塗り重ねるようなことはしたくない。

 

 と言っても、誰彼構わず話す必要はないと思う。話すとして、両親以外なら、シズネさん、そして、ロイズさんがやっぱり妥当か。

 ハンスさんについては、父親やロイズさんの判断に任せよう。

 アイラさんは、正直、オレからすれば妹みたいな感じなので……ややこしい話に巻き込みたくはない。

 

 

 この世界において、オレは異質な存在だと思う。そのことがいずれ両親の負担になるかもしれない。

 やはり、姿をくらませるべきだろうか?

 

 幸いなことに、両親はまだ若く、新しい子供が2人も生まれたのだ。

 オレ1人いなくなっても困らないだろう。

 

 

 5歳か……1人で生きていくのは難し…………くもないか?

 

 意識がある限り、致命的な怪我や病気は魔術で治せると思うし。

 魔術があれば、食事も何とかなりそうだ。

 

 攻撃魔術は使えなくても、強化系の魔術で身体を強化すれば、投石なり何なりで狩りもできなくはないだろう。

 動物の解体はやったことはないが、何とかなるよな、多分。

 

 

 うん……両親に全てを告白したら、そのまま旅に出よう。

 

 子供が1人で目立たずに生きていくには、人の目がある都市や集落だと難しい気がする。

 少なくとも、身体が成長するまでは誰にも会わないような未開の土地で隠棲いんせいしていた方がいいだろうな。

 

 いっそ、温泉が沸くような場所を探してみるのはどうだろうか? 『秘湯を求めて~異世界旅情~』って感じで。

 

 ふふっ、と思わずオレの口から笑い声が漏れた。

 

 

「…………なんだ、笑えるじゃん、私」

 

 

 

 

 しばらくすると、お盆を片手にシズネさんが戻ってきた。

 シズネさんが戻ってくるまでの間、オレは旅をするのに必要なものをあれこれ考えていた。

 

 

「お待たせ」

「いえ、全然待っていません。ありがとうございます」

 

 

 オレは起き上がって、シズネさんからお盆を受け取り、そのまま自分の太腿ふとももの上に置いた。

 お盆の上には白く煮込まれたカラス麦の粥、皮を剥いて食べやすい大きさに切られたリンゴ、透明な液体が入ったコップが乗っていた。

 

 

「いただきます」

 

 

 コップの中は、多分水っぽい。一口飲んでみる。うん、水だ。

 一口飲んで、自分の喉がすごく渇いていたことに気づき、コップの半分を一気に飲んだ。

 

 コップをお盆の上に戻して、スプーンを手に取る。

 粥をすくって口に運ぶ。

 

 小人牛こびとうしのミルクの甘みが口に広がった。

 

 小人牛とは、普通の牛の半分ほどの大きさの牛で、そのミルクはとても甘みが強い。

 ミルクはそのサイズに比例した量しか取れないため、飲料としてではなく、主に料理の甘味料代わりに使われる。少し水っぽくした練乳が近いかな。

 

 

「食べながらでいいから聞いておくれ。

 さっきも言ったとおり、この後、簡単な診察をさせてもらう。

 それが終わり次第、ガーロォ・バーレンシアとバーレンシア夫人、コーズレイト殿と会えるように伝えてきた。

 場所はバーレンシア夫妻の寝室になる。バーレンシア夫人は元気だとはいえ、出産したばかりだからね」

「分かりました」

 

 

 そう一言だけ返答して、逸る気持ちを抑え、ゆっくりと食事を再開した。

 

 

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