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5歳:「男たちの交流(2)」

 

 

「あっはっは、それはそれは、到着早々お疲れ様でした。いや、頑張ってください、かな?」

「ケイン、人事だと思って……」

「実際に僕ではなく、ハンスのことじゃないですか」

 

「せっかく他のヤツらを出し抜いて、この任務についたってのに……おれのバカンスが、憩いの日々が……」

「何を言う、充実した任務にしてやろうという俺の優しい心が分からないのか?」

「くそー、こうなりゃ、飯と酒だけが楽しみだ。飲むぞー!!」

「あっはっは、好きなだけ飲んでいってください」

 

 

 父親が嬉しそうにハンスさんに酌をする。父親もハンスさんもお互い名前を呼び捨てだ。

 身分を越えた友情ってヤツか?

 

 なんだか父親の今まで見たことのない一面を見たな。

 

 

「まったく、男ってのは、いくつになっても子供だね。バーレンシア夫人やユリアちゃんもいるって言うのに」

「ふふふ、あの人はわたしたちに気をつかって、普段はあまり飲まないのです。

 軍に所属してた頃からの親友であるハンスさんがいらして、浮かれているのでしょう。

 それにあの人の酔っ払った所も、なかなか可愛いと思いますの」

 

「あたしは酔っ払いを可愛いとは思えたことはないけどね。ユリィちゃんは、今のお父さんをどう思う?」

「んっと、楽しそうなので、わたしも見ててうれしいです」

「はー、ほんとよくできた子だねぇ……今年で5歳だっけ?」

「はいっ!」

 

 

 食堂での晩ご飯が終わり、そのまま男3人は酒盛りに突入、女3人はその隣でお茶を飲んでいた。

 

 横から聞いていた話をまとめると、父親は結婚する前に王国軍に所属しており、その当時の部隊で最も気があった同僚がハンスさん、隊長がロイズさんだったみたいだ。

 

 ただ父親とロイズさんは、父親が王国軍に入隊する以前からの知り合いだったようでもある。

 本来、ハンスさんは父親を呼び捨てにできるような生まれではないのだが、そこはそれ軍の中では身分より階級と実力が物を言う世界であり、今でもプライベートではお互いに名前で呼び合う仲らしい。

 

 

「少し薄暗くなってきましたね」

「あ、わたしが入れてきます」

 

 

 食堂にはランプがあるのだが、その光量が落ちてきていた。

 ランプに“石”を継ぎ足すために席から立ち上がろうとする母親を止め、代わりに席を立つ。

 

 そのまま、ランプの近くに移動すると、近くにあった皿から黒い小石を1つ取って、水が入ったランプの中に入れる。

 ランプの中に入れた石は、すぐに白い光を放ち始めた。

 

 〈蓄光石ちくこうせき〉と呼ばれるこの石は、本来乳白色をしているのだが、太陽の光を浴びると黒く変色する。

 そして、黒くなった〈蓄光石〉は、水などで濡れると発光し、しばらくすると光が収まり、元の乳白色に戻る。

 

 直径が大体1イルチくらいの〈蓄光石〉を十分に太陽に当てると、水に濡らしてから1刻から1刻半(2~3時間)くらいは輝き続ける。

 その性質上、ランプの構造も単純で、水が漏れない透き通った容器があればよく、実際はただのガラスのコップで代用することも可能だ。

 

 また、〈蓄光石〉の利点は何度でも繰り返し使えるだけでなく、比較的安価で手に入りやすく、ランプを倒しても火事になる心配はないと、いいこと尽くめの道具なのだ。

 

 

「ユリィちゃん、ありがとう」

 

「しかし、ユリアちゃんは可愛いなぁ……」

「当然でしょう。僕のマリナが生んでくれた愛らしい妖精さんです。先に言っておきますが、ハンス、貴女にユリアはやりません」

「ふっ、こっちだってケインをお義父さんて呼ぶのだけは勘弁だからな」

「それこそ安心してください、そんな事態は絶対になりませんから! というか、ユリアは嫁になんかだしません!(ダンダン」

「あっはっは、親バカだ、親バカがいる! ケインの親バカっぷりに、かんぷぁ~い!」

 

 

 うん、いい感じに酔ってるなぁ。

 ロイズさんのほうはまだまだ平気みたいだけど、父親とハンスさんのほうは完全にできあがってる。

 

 

 しかし、「お前に娘はやらん」を生で聞けるとは思わなかった。当事者的な意味で。

 

 まぁ、オレは可愛いお嫁さんをもらうつもりで、お嫁さんになるつもりは…………あれ?

 

 オレは前世では男だったけど、今の性別は女、つまり嫁はもらう方じゃなくて、なる方なのか?

 

 

 

 

 …………これは盲点だった。

 

 

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