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5歳:「訓練の成果と加護の力(1)」

 

 

「《空をフィス 駆けるはリァート 翼の足フェス・ド・レム》」

 

 

 消費魔力を最大限に上げた出力で、自分の脚へ魔術をかける。

 

 オレは、トントンと空気を蹴り、階段を上るように空中へと駆け上がる。

 

 

「《地の枷ジス・ド・ダス 風の錘ウィス・ド・ボト よりラーヤ 躯をティニ 解きピアース 放つペスール》」

 

 

 続いて、同じく消費魔力を最大限に上げた出力で身体にも魔術をかける。

 

 魔術がかかると、自分の身体がフワリと体重がものすごく軽くなったかのように感じる。

 正確に言えば、オレの身体は今、重力の影響をほとんど受けていない極低重力状態になっているのだ。

 

 

「よっ、ほっ、はっ……」

 

 

 そして、オレは“空中を蹴りながら飛び回る”という、魔術なしでは有り得ない動きをしていた。

 

 

 

 

 今、オレがいるのは、3歳の時から通っている森の広場である。

 つまり、この曲芸のような動きも魔術の訓練なのだ。

 

 これが空を飛ぶ魔術の開発と訓練なのか? と聞かれれば、オレは否と答えなくてはいけない。

 正直な話、空を飛ぶだけなら、もっと楽で簡単に自由に飛びまわれる魔術がある。

 

 わざと複数の魔術を用いて空中を駆けている理由は、そっちの方が“必要となる消費魔力が多くなる”から、だ。

 

 

 3歳の時から始めた「魔力上げ」の結果、オレの最大保有魔力は順調に増え続けた。むしろ、増え過ぎた。

 

 消費魔力を最大限にした魔術を無駄に連続で使わないと、保有魔力が空にならない。

 

 最近では、無理に「魔力上げ」をせず、気が向いた時にだけ「魔力上げ」を行なうようになっていた。

 

 

 魔術の特訓を通じて、2つ覚えたことがある。

 

 1つが同じ魔術でも、消費する魔力によって、その魔術を強めることができること。

 これは単純に効果を強化するだけではなく、制限時間のある魔術の効果時間を延長することもできた。

 

 相応の魔力を消費すれば、効果の強化をしながら効果時間の延長を同時に行なうこともできる。

 

 それから、持続中の魔術は自分の意思で解除することはできるが、途中で解除しても、魔術を使うのに消費した魔力は戻ってこない。

 魔術を使ってすぐに解除すると魔力は無駄になるが、実際にはその無駄が「魔力上げ」をするのには役立っていた。

 

 

 それともう1つ、自分の中の保有魔力の残りが、大体どのくらい残っているかが分かるようになったこと。

 これは、何度も保有魔力を空にしていた結果、身に付いた感覚だ。

 

 まぁ、かなり魔術を無駄撃ちしない限りは空にならないので、役に立たない感覚かもしれない。

 

 

 

 

 と、オレの意識に広場へ誰かが近づいて来ている事を示すイメージが浮かんだ。

 

 それは、オレが事前に使っていた魔術の効果だった。

 

 

 オレは、この広場から大体50メルチ以内に誰かが入ってきたら、相手に気づかれないようにオレにだけ知らせる結界魔術をかけていた。

 

 結界魔術とは一定の空間を対象としてかける魔術で、魔術の形態の1つだ。

 付与させる効果や条件を変えることができ、さまざまな応用が利く。

 

 もっと強力な結界魔術を使えば、そもそも立ち入らせることもできなくなる。が、そんな結界魔術を使ったら、気づいた誰かが騒ぎ出し、面倒ごとになるのは明らかだ。

 最低限、誰かが近づいてくることが分かるだけで十分だった。

 

 

 とりあえず、かかっていた魔術を全部解除し、オレは地面にゴロンと仰向けに寝転んだ。

 

 しばらくして、森の地面を踏みしめる足音がした。

 上半身だけ起こして、そちらを見ると、少し前に(オレにとって)初対面の挨拶をしたばかりの女性が立っていた。

 

 

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