5歳:「お客様がやってきました(3)」
コンコン、ロイズさんが応接室の戸をノックして、中に入っていく。
ロイズさんに続いて、オレも応接室へと入る。
「失礼します」
「しつれいします」
入ってすぐに3人がオレとロイズさんの方に顔を向けた。
1つは母親のもので、残りは見知らぬ女性と男性のものだった。
女性は母親と向かい合わせにソファへ腰を掛けており、男性がその女性の後側に立っていた。
女医ということだから、女性の方がシズネさんだろう。
となると、男性の方は、医者としての部下とかお弟子さんか?
「お初にお目にかかります。ガーロォ・バーレンシアが第一子、ユリア・バーレンシアともうします。
このたびの出会いに、精霊さまのしゅくふくがありますように」
「おやおや、これは、ご丁寧に……王国立中央病院が産医、シズネ・セイロウインと申します。
小さなご令嬢に、精霊様の祝福がありますように」
やはり、女性の方がシズネさんであっていたようだ。
オレの挨拶に、わざわざ椅子から立ち上がって挨拶を返してくれた。
黒髪の黒い瞳で、お医者さんというよりも、少しご年配の貴婦人といった雰囲気の品のいいおば様だ。口調は気風のいいざっくりとした感じ。
歳は40代くらいだろうか? ロイズさんより年上に見える。
「「…………??」」
そして、オレの視線と立っている男性の視線が合う。
お互いにキョトンとした視線である。
「おい、ハンス。お前も自己紹介しろ」
「へ? あ、ああ!
“地軍”十二番隊が副長、ハンス・イクルートスです。
今回はシズネさんの護衛として参りました。可愛らしいお嬢様との出会いに、精霊様へ感謝を」
「バカ、それじゃあ口説き文句だろうが……」
ロイズさんに声を掛けられて、初めてオレの視線の意味に気づいたのか、ハンスさんがあわてて挨拶をする。
濃い金髪と深い青の瞳で、軍人らしく身体が全体的に引き締まっており、父親とは違った感じの美青年といった所だろうか。
「あの、ハンスさま、質問してもいいでしょうか?」
「様付けはいりません。ハンスと呼んでください、ユリアお嬢様」
「じゃあ、わたしも、さまはいりません。ロイズさんとお知り合いなのですか?」
「ロイズ……? あっ! 以前、おれはコーズレイト隊長の部下としてお世話になってました」
「元隊長だ。というか、お前、軽く俺の名前を忘れてただろ?」
あはは……と、ロイズさんの冷たい睨みを、ハンスさんは苦笑いで誤魔化す。
なかなか憎めない人のようだ。
しかし、ロイズさんは元軍人ってことか。そう言われると、そう見えてくるから不思議だ。
そんなオレたちのやり取りを、微笑みながら2人の女性が見ていた。
「失礼します」
と、ちょうどそこにアイラさんが入ってきて、お茶の用意が整ったことを知らせてくれた。
ちょうどお昼時だったので、軽食としてサンドイッチも用意してくれたようだ。
そのまま食堂に移動して、皆で昼食の時間となった。
いつもの昼食と違い、アイラさんは給仕に徹していたが。