表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/146

5歳:「お客様がやってきました(1)」

 

 

 今日は森の季節の4巡り目の第7日。

 オレがこの世界に生まれてから、5年と2つの季節が過ぎた。

 

 

 

 

「わ~。アイラさん、きれーい」

「ユリィちゃんもそう思う? やっぱ、女の子は着飾ってこそ華よねぇ」

 

 

 母親に呼ばれてきた部屋の中に、ドレスを着たアイラさんが立っていた。


 アイラさんは線が細い綺麗系美人なので、深緑色の少し光沢がある布を使ったスラリとしたドレスが本当によく似合っている。

 薄く化粧もしているみたいで、白粉おしろいをはたいて、口紅も少し塗っているようだ。

 

 

「お母さま、このドレスはどうしたのですか?」

「ん、わたしがあの人と結婚したばかりの頃に着ていたドレスよ」

「お、奥方様……やっぱり、私にはこのようなドレスは分不相応です……」

 

 

 実は先ほどから、アイラさんが静かだなぁ、と思ったら緊張で身体が強張こわばっていただけのようだ。

 

 アイラさんは、キリっとした目つきとクールな雰囲気の外見とは裏腹うらはらに、ときどき何もないところで転んだり、馬に触れるのに怖がったりと、内面はとても可愛い人であることが、最近分かってきた。

 

 

「そんなことないわ、とても似合っているわよ? それとも、わたしのお下がりなんてイヤかしら?」

「め、滅相もありません。けど、普段からお世話になっているのに、こんな綺麗な服まで貸してもらって……」


「わたしたちの方こそ、日頃からアイラちゃんのお世話になっているんだから。

 それに貸すんじゃなくて、そのドレスはアイラちゃんに上げるの。

 いい、アイラちゃんは、今度のお祭りでは主役なのよ? もっと胸を張って楽しまなきゃ!!」

 

 

 母親はすっかりアイラさんに夢中のようだ。

 その姿が人形の着せ替えごっこをする女の子みたいに見えるのは、どうかと思う。

 

 

 ん? 今のセリフに気になる点が2つほど。

 

 母親は普段、アイラさんのことを「アイラさん」と呼び「アイラちゃん」と呼ぶことはない。

 オレが知らない所で「アイラちゃん」と呼んでいたのだろうか?

 

 確かに、母親にとってアイラさんは、妹のような存在かもしれないし。

 

 

 それから「今度のお祭り」というのは、2巡り後の第6日(19日後)にある豊穣祭のことだろう。

 近隣の村の人たちが一同に集まって行なわれる盛大な宴会だ。

 

 けど、その祭りの主役とはどういうことだ?

 

 

「んっと、お母さま? お祭りの主役って、どういう意味ですか?」

「あ、えっとね、ユリィちゃん。豊穣祭はね、コレから種をまく麦の豊作を祝うためのものなの」


「はい、知っています。地の精霊さまに、お願いをするお祭りです」

「その通り。あとそれから、この近くの風習で、その年に成人した新成人のお披露目も兼ねているのよ。

 新成人になった若い人は、その日のためにとっておきの服を用意するの。

 女の子なら、やっぱりドレスよ。ユリィちゃんは、10年後の楽しみね」

 

 

 なるほど、豊穣祭はいわゆる成人式も兼ねているのか。

 

 …………。

 

 ……アイラさんて、今年で15歳っ!?

 

 母親が「アイラちゃん」と呼ぶもの納得だ。歳が8つも違う。

 

 

 いや、すっかり20歳はたちぐらいかと思っていた。

 母親が童顔のせいか、以前からとても年上に見えていたし……。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ