3歳:「才能に関するエトセトラ(3)」
さて、思わぬところで落とし穴があったが、オレの新しい身体は予想以上の才能を秘めているらしい。
攻撃魔術こそ使えないものの、間接的に敵に対処できそうな魔術はいくつもあるし、問題はそれほどない。
今後のことを考えるなら、身を守るためにも戦闘技術は身につけたい所だ。
前世の記憶を元に、覚えている範囲で格闘技の知識などはあるが、実際に動くとなると難しい。
ボクシングのイメージはあるのだが、実際に正しいパンチを打てているかが分からない。
オレの経験不足による問題だ。
それに、この世界なら剣や槍など、武器による戦闘技術が一般的なものであるはずで、それも是非学びたい。
しかし、覚えたいことばかりが増えていくなぁ。
少し目標を整理してみよう。
まず、母親から教えてもらっている文字。
ひとまずは、父親の書斎にある本を1人で読めるようになりたい。
この世界の本は貴重らしく、書斎にある本の数は多くはないが、まあ少なくもない。
本を読めるようになれば、そこから知識を得ることができる。
ネットワークを使えば、気になる情報を好きなだけ調べられた前世とは比ぶべくもないが。
この世界の常識。
これについては、元の世界と大きく変わる所が少ないために助かっている。
ちなみに、お金の単位は「シリル」らしい。父親が話しているのを聞いた。
それでも具体的な硬貨や貨幣価値は分からないし、うっかり非常識なことをしてしまうかもしれない。
情報収集は要継続だ。
身体を鍛えること。少なくとも健康な肉体を維持。
できることなら、格闘技や剣術なんかもきちんと学びたい。
問題は、この世界の婦女子が、そういった野蛮なことに興味を持つことが許されるかどうか。
雰囲気的に「家主が絶対で、娘は政略の駒」みたいな価値観がまかり通っている可能性だってある。
…………想像しただけで、娘に甘い父親に感謝の念が絶えない。
いざという時のために野外で活動する技術。
オレはアウトドアとかに夢を見て、ネットワークでその手のコンテンツを読んでいたりした。
いつかお金が溜まったら、とか思っていたんだけどなぁ。
実地で試したことがないので、機会があれば訓練の必要はありそうだ。
ただ、これは優先度は低めで後回しかな。
“入浴”についての普及。そのための風呂の作製。
お風呂は日本人の心です。
できる女子の必須スキルとして、料理や裁縫などの家事も忘れてはならない。
料理については、元の世界の料理をいくつか再現してみたいところだ。
食事はマズイどころかとても美味しいのだが、こう、魂に刻まれた懐かしい味というのはあるのだ。
味噌と醤油については、諦めているが……。
最大保有魔力量アップ。
この世界の治安はよさそうだが、それでも元の世界の日本以上に安全とは言えないだろう。
その際にものを言うのはオレにとって魔術であり、その魔術を十二分に使うために必要になる魔力は、少なくて困ることはあっても、多くて困ることはない。
大雑把に並べてみたけど、こんな感じか?
将来的には、世界を旅して回ったりしたいが、これは両親が許してくれるかが問題だ。
女の1人旅、しかも良家の第一子となれば、箱入りは確定かなぁ。
少なくとも、成人になる15歳までは親元にいるのが“普通”だろうし。
まぁ、新しい人生始まったばかり、ゆっくりと頑張るか。




