3歳:「才能に関するエトセトラ(2)」
魔術の特訓を始めてから、1巡り(10日)が経った。
今日は、水の季節の5巡り目の第8日である。
この1巡りの間、オレは森の広場で色々な魔術を試して、その効果に喜んだり、楽しんだりしていた。
「《音を聞くは兎の耳》」
まず、森の広場に到着したら、この魔術を使うようにしている。
簡単に言えば、聴力を上げて、周りの音から人や獣の気配を察知する魔術だ。
あまり魔力は消費させずに使っているので、それほど遠くまでは分からないが、母親やアイラさんが近くにいたとしたら、発見することはできる。
魔術が使えるようになった翌日、一番最初に試した魔術だった。
この魔術で2人を発見したら、子供っぽく怒って見せたり、悲しんで見せたり、天才子役ばりの演技をしてみた。
そんなことを何回か繰り返したせいか、オレの行動に安心したのか、ここ数日は後をつけてくることがなくなった。
こうして、やっと大々的に魔術の特訓ができるようになった。
いくつか魔術を試しているうちに、自分の魔術の才能に関する発見がいくつかあった。
まず、特訓を始めて10日目にして、オレの最大保有魔力量が26点になったこと。
これは1回の「魔力上げ」における保有魔力量の増幅量が、1%どころか3%もあったことになる。
1%とか3%とか、数字で書くと誤差のようなものだが、実際にはバカにならない誤差だ。
この調子が1年以上続くなら、相当な保有魔力量の増加が見込める。成長期だからだろうか?
次に、地属性系、水属性系、火属性系、風属性系、動力系、生体系、思念系、時空系の主系統、概念系、操作系の補助系統、全10系統における基本的な“ルーン”はどれも問題なく使えたこと。
必要消費魔力が大きくて試せていない“ルーン”もあり、現時点では、どの系統との相性が良いのかは分からない。
多分だけど、生体系の“ルーン”とは相性が良い気がする。
これは実感と次の発見と関係する予測だ。
「《石の弾》! ……やっぱ、ダメかぁ」
そして、唯一困った発見は“攻撃魔術を一切使えない”ことだ。
初歩中の初歩、小石を投げつける攻撃魔術さえも使えない。
保有魔力には一切の問題はなく……オレには、思い当たる節があった。
「これは、きっと【一角獣の加護】…………だよなぁ、はぁ」
思わず3歳児には似つかわしくない溜め息がもれてしまう。
【一角獣の加護】とは、生れつきでのみ人類が持つことができる魔導【先天性加護】の1種だ。
全ての系統の“ルーン”との適性が必ず悪くならない(特別に良くなることもない)代わりに、攻撃魔術が一切発動しなくなるというものである。
オレの『グロリス・ワールド』のキャラクターに持たせていた魔導だから詳しく覚えていた。
能力的には悪い魔導ではないのだが……。
巨大な火の弾とかをドッカーンってやつに、憧れてたんだけどなぁ。
ドッカーン…………。