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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
学術都市フェルベル編
142/146

15歳:「お嬢様をお迎えしましょう(1)」

 

 

 特に何事もなく3日が過ぎて、約束の休講日になった。

 

 エビチリもどきを食べた翌日、マルグリット嬢に日時を伝えたところ問題はないという返答をもらっていた。

 マルグリット嬢と仲よくしている私を見て、同期生たちの探るような視線がちょっと楽しかった。

 

 待ち合わせは真昼を過ぎて最初の鐘がなる頃に寮へ直接来てもらうことになっている。

 

 しかし……

 

 

「ルノエちゃん、どうしたの?」

「べ、別にどうもしないよっ!」

 

 

 マフラー越しのくぐもった慌てた声。

 いや、明らかに不審人物だし、森の季節になって多少涼しくなったとはいえ、マフラーはまだ早いと思うんだけど。

 

 しかもそのマフラーはタマコさんが用意したやつなんだよなぁ。2人とも何を考えているんだろうか。

 

 

「まぁ、いいけど……あ、来た」

 

 

 通りの向こう側に、白いワンピースドレスを着て、黒い日傘を差したマルグリット嬢の姿が見えた。

 手を振ると、こちらの存在に気付いたか、まっすぐ向かってきた。その途中で鐘が鳴り始める。

 

 鐘の音が鳴り終わる前に、マルグリット嬢が私とルノエちゃんの前に到達する。

 

 近づいて来る途中に気付いたのだが、普段学院で見かけるときに来ている服よりもフンワリとして可愛らしい系の服だ。

 よく見ていた険のある顔つきではなく、15歳の年相応の笑顔によく似合っている。

 

 

「本日はお招きありがとうですわ」

「いえ、こちらこそ、ご足労ありがとうございます」

「ユリア・バーレンシアさん、すぐにとは言わないけど、この間見せたようにもっと砕けた口調で話して欲しいわ。

 ふふっ、こうして友達のうちに遊びに来るなんていつ振りかしら」

 

 

 おや?

 

 

「あら、どうかしまして?」

「いえ……友達のうちなのですか?」

「ち、違ったのかしら?」

 

 

 授業中に教室で先生にあてられて、うっかり関係のないことを口走っちゃったような、そんな表情をする。

 焦って、照れて、少し困っているような?

 …………むっ、なにこれ可愛い。

 

 

「私のうちというか、寮ですから、ちょっと違うかなと。友達の部屋とか?」

「そ、そうね。わたくしもそう言う方が正しいと思いますわ」

 

 

 私がフォローで言った言葉にすぐさま賛同する。

 

 この3日間で、ずいぶんと態度が柔らかくなったなぁ。

 この間までのが嘘のようだ。何かをやった覚えはないのだけど、彼女の中ではそういうことになっているようだ。

 そもそも今日の連絡に行った時くらいしか、顔を合わせて話をしてないんだけど……他人の家に、あまり招待されたことがない?

 

 マルグリット嬢と私がそんな話をしている間、ルノエちゃんはずっと静かにしていた。

 

 

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