15歳:「単なる誤解と思い込み(3)」
「ぱく、もぐもぐ……クイッ……かぁ、美味いっ!!」
エビチリもどきをツマミに、ちょっと香りの強いお酒を一口。
「タマコさん、おじさん臭いですよ」
「おじさん臭くて結構。あたしは本能に生きる女っ!」
タマコさんは、エビチリもどきを一口食べると、そそくさと席を立ち嬉しそうに秘蔵のお酒を持って食堂に戻ってきた。
お酒は嫌いじゃないらしく、特に度数の高くてクセのある酒を好む。そこらへんは見た目の期待を裏切らない。
「揚げたエビと赤辛子の両者を、トマトの酸味がうまく調和させている也。
我には懐かしい味也。しかし、こんなに赤辛子を使って大丈夫也可?」
ミロンさんが心配しているのは、赤辛子の値段のことかな?
「ペートからもらったやつだから問題なし! 抹茶ラテもずいぶん好評みたいだよ」
「あれは別に報酬をいただいている也。それに今後とも定期的に購入してもらうことになったから、むしろ礼を言うのは我のほう也」
少し申し訳なさそうにミロンさんがもらす。
「それに、その皿はミロンさんように味付けしちゃったから、残したらもったいないからね」
「感謝。言い遅れたが、ユリア殿、美味しい也」
ニカリと笑って、真っ赤に染まったエビチリを嬉しそうにハシで口へと運ぶ。
怖くて味見してないけど、喜んでもらえたようだ。作った甲斐がある。
ルノエちゃんとセラちゃんも、ピリ辛のエビチリもどきを気に入ってくれたようだ。
「あ、そうだ。タマコさん、三日後に知り合いを寮に呼んでちょっとした宴会をしたいのですが、いいですか?」
「ん? 何人呼ぶんだ?」
「えっと、一人なんですが、“六字”の方なんです」
「そうか、あたしたちは留守にしておいた方がいいか?」
「いえ、むしろ、一緒にいてください」
ついさっき市場でおこったことを食堂にいる全員に話す。
「ああ、それじゃあ、あたしも何か手伝おうかね」
「……えっと、ユリアちゃん」
「ん、何?」
なぜかルノエちゃんが困ったような顔をして、私の方を見ていた。どうしたんだろ?
「その助けてくれた貴族の人の名前って?」
「あれ? 言ってなかったっけ? マルグリット・ラシクレンペ様なんだけど、ルノエちゃんは一度会っ……」
「ぶふっ、げほげほげほっ!!」
「タ、タマコさん大丈夫っ!?」
いきなりタマコさんが飲んでいたお酒を吹き出しそうになってむせだした。
「ああ、うん、大丈夫。というか、ラシクレンペ家のお嬢様なのか?」
「はい、そうですけど?」
「えーあー、そうか、うん、まぁ、大丈夫だろ……」
タマコさんが何か考えるようにブツブツと呟く。
「何が大丈夫なんですか?」
「いや、なんでもない」
あれ? 今、チラっとルノエちゃんの方を見た?
何か、これ以上訊ける雰囲気じゃないんだけど……う~ん、なんだろう?