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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
学術都市フェルベル編
140/146

15歳:「単なる誤解と思い込み(2)」

 

 

 マルグリット嬢と私の間に、初対面でいきなり罵倒されたときよりも強い緊張感が張り詰める。

 

 別に私が魔術を使えることくらい話しても問題はない。

 ただ異常な保有魔力量や【霊獣の加護】に関する話題に触れないように気を付ける必要はある。

 

 

 今、この街で私の秘密を知っているのはソニア教授だけのはずだ。

 ソニア教授に話したのも人柄をある程度見極めたうえで、協力者になってもらうためだったしな。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 ここで逃げ出したとしても、問題の先送り、しかも下手にややこしくするだけか。

 なら、表面的なことでも話して、それ以上は話せないとしっかり線引きをすればいいのか。

 

 

「あ……」

「ユリア・バーレンシアさん」

 

 

 う? 一瞬何かがおかしいと違和感が、って今までと違った呼ばれ方をしたのか?

 さん付けで呼ばれたよな、今?

 

「恥ずべきことに、わたくしはあなたのことを勝手に誤解し、思い込みで軽蔑していたようですわ。

 ユリア・バーレンシアさん、あなたの誇りを傷つけたことをここに謝罪します」

「て、え? え?」

 

 

 マルグリット嬢が軽く目を閉じ軽く頭を下げる。

 

 本人が地位を持っているわけではないが、お互いの家柄を考えればありえない事態だった。

 今いるのが人目のない場所で良かった。いや、人目がないからこそ、彼女はこの行動をとったのか。

 

 

「マルグリット・ラシクレンペ様、顔をあげてください。

 正直、私にはマルグリット様が謝られるようなことをされた覚えがないのです」

「そんなことはありません。

 わたくしは、あなたが魔術を学ぶわけでもなく、ただ国内最高の学府というだけの理由で入学したと考えていたのです。

 見栄のためだけに学院に通っているだけの成金貴族だと、そういう風に」

 

 

 まぁ、成金貴族であるところは、間違いないわけだしねぇ。

 親のことを悪く言われるのはちょっとムっとくるが、言葉に悪意があるわけでもなさそうだしな。

 

 そもそも私が自分の実力を隠していることが原因の1つのようだから、強くも言えない。

 

 

「……謝罪は受け取ります。それでよろしいでしょうか?」

「ええ、ありがとうございます」

 

 

 マルグリット嬢の顔を思わず凝視してしてしまう。

 彼女から笑顔が向けられたのは、そういえば初めてかもしれない。

 

 怒っていても可愛らしいとは思ったけど、やっぱり女の子は笑顔が一番だよね。

 

 

「マルグリット様、今度寮に遊びにいらしてください。先程の質問への返答は、その時にいたします」

「……おねーさん、遊びに来るの? セーもお出迎え?」

 

 

 セラちゃんとつないでいた手がきゅっと握られる。それを軽く握り返す。

 

 

「寮をあげて歓迎します。セラちゃんを助けていただいたお礼もしたいですし、是非いらしてください」

「……そうですわね。そこまで言われたならば、次の休講日にでも」

「はい、お待ちしています」

 

 

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