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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
学術都市フェルベル編
139/146

15歳:「単なる誤解と思い込み(1)」

 

 

「この辺までくれば大丈夫かな?」

 

 

 市場の通りから曲がって、細い路地に入ったところで私は足を止めた。

 早歩き程度の速度だったので、二人とも問題なくついてきてくれたようだ。

 

 

「ねえ、手を放していただけません……つッ」

「あっと、ごめんなさい」

 

 

 私が手を放すと、マルグリッド嬢が痛みを思い出したのか、自分の頬を抑えるように手を当てる。

 頬が赤くなって、唇が少し切れている。しまったな、見逃さずにもうちょっとボコっておくべきだったか。

 自分の判断の甘さにちょっと反省をする。

 

 

「あーあぁ……マルグリット様、失礼します」

「あなた、なにを?」

「《白のフラウ 光よコルーラ 治せカムーヤ》」

 

 

 マルグリット嬢の赤くなった頬にそっと指先を当てて、そのまま癒しの力を送るイメージ。

 私の魔力が白い光となって、マルグリット嬢の傷ついた部分に浸透していく。

 光が消えると同時に、傷が消えて、元のきれいな白い肌の柔らかそうな頬と唇に戻る。

 

 

「これでよしと」

「……ユリア・バーレンシア!!」

「うわっ!?」

 

 

 耳元で大きな声は出さないで欲しい。ちょっとキーンとする。

 

 

「今、何をなさったんですのっ!?」

「魔術を勝手に使ったのは謝罪いたしますが……」

「そうじゃなくて、なんであなたが魔術を使えるんですのっ!?」

 

 

 え?

 思わず自分の手元にある腕輪を見る。きちんと〈宝魔石〉がついているし、見る人が見れば〈発動具〉だと分かるんだけど。

 

 

「あ、えっと、この腕輪が〈発動具〉でね?」

「違いますわ! バーレンシア家のあなたが〈発動具〉を持っていても不思議だとは思いません!」

 

 

 あー、まぁ、今の実家の資産なら〈発動具〉の1個や2個用意するのは無理じゃないけど。

 実際はほとんど自分で材料を集めてクムさんに整形だけしてもらったんだ……とは間違っても言えない秘密事項だけどな。

 

 となると、どういうことだ?

 

 

「あなたは魔術が使えないから特別入学制度を使って、箔付けのためだけに学院に入ったんじゃないですの!?」

 

 

 ああっ!

 

 

「うっかりしてたな。そう言えば、そういう設定だったっけ……」

 

 

 というか設定にちょっと尾ひれがついてないか?

 それじゃあ、どこかの成金貴族の馬鹿娘みたいじゃん。

 

 

「設定? それは一体どういうことですの?」

「さて、セラちゃん。川エビを買って寮に帰ろうか」

「……うん?」

 

 

 ナチュラルな会話をこなして、さくっと路地から逃げようと……

 

 

「三度は聞きませんけど、どういうことですの?」

 

 

 後ろから静かな声が聞こえてきた。……どうしたもんかなぁ?

 

 

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