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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
学術都市フェルベル編
134/146

15歳:「生活に役立つ研究(2)」

 

 

 錬金術の説明をするには、簡単な魔法についての説明が必要となる。

 

 

 まず、魔法の効果は大きく3つに分類することができる。

 それが「具現」と「変化」と「復元」だ。

 

 この世界の事象には、すべて「恒常性」という性質がある。

 それは、その事象が常にその事象であろうとする性質のことだ。

 つまり、「石」は「石」、「剣」は「剣」、「個人」は「個人」であろうとする。

 

 「恒常性」と対をなす性質が「可能性」となる。

 今度は「石」は「砂」や「土」になれるし、「剣」は「さびた剣」や「火の力を帯びた剣」になる“かもしれない”というものだ。

 

 

 石を作り出す《石よダスーラ》と音を立てる《音よジィムーラ》の効果は、分類としては「具現」となる。

 水を作り出す《滴よウォーラ》と熱を作り出す《熱よノアーラ》の効果の分類は「具現」に思えるが、この2つは「変化」となる。

 

 空気中の水分を集めれば滴になる、空気が暖まると熱を持つという「可能性」を魔術によって引き起こしているからだ。

 

 

 もちろん、水を具現させる魔術や土や砂を石に変化させる魔術も作れる。

 

 「具現」と「変化」の違いは、「具現」では起きた事象が効果が切れると消えるのに対して、「変化」によって起きた事象は「恒常性」の許す限りで残り続ける。

 《滴よウォーラ》の場合、飲み水を作り出すのだから、効果が切れると同時に消えてしまっては困る。

 

 そのため「水が作られる可能性」を魔術によって現出させる必要がある。

 

 

 「復元」というのは、何らかの理由で「恒常性」が阻害されて、劣化してしまった状態を元に戻すという効果のことだ。

 まさに回復魔術の効果は、この「復元」に分類されるだろう。

 

 すべての魔法が、この分類に綺麗にわけることができるというわけでもなく、「具現によっておこされる変化」や「復元による具現」など複雑に入り混じっているが、この説明は省略する。

 

 

 さて、その上で錬金術というは、特にこの「変化」に注目した魔術となる。

 一言で表すなら「過程を省略させる技術」となるだろうか。

 

 もともと金や銀などの貴金属を「鉱石から直接取り出す魔術」として確立したのが原典だそうだ。

 ゆえに「金を練りだす術」で錬金術となる。

 

 もっとも今では、ドワーフの鍛冶師を筆頭とした鍛冶師の精錬技術が向上したことにより、魔術師が魔術を使って精錬を行なうことは減っているそうだ。

 

 ただし、「魔術を使って早く結果を出す技術」は、錬金術という名とともに今でも一部の魔術師によって研究されている。

 近年では、魔術薬ポーションと呼ばれる分野での発達において錬金術が活躍しているらしい。

 貴重な霊木や強力なハーブから薬効を抽出したり、人体に安全になるように変化させる工程において魔術が非常に便利だからだ。

 

 

「それで、このあとはどうしますか?」

 

 

 食後のお茶を飲みながら研究の続きについて聞いてみる。

 

 

「ああ、今日は昼過ぎから教授会があるので、ボクはそれに出席しないといけない。ただ面倒なだけだが、休むとそれはそれで面倒だからな」

「あ、そうですか」

「うむ、バーレンシア君は適当に研究を続けてもらっても、論文などを読んでもらっても構わない。

 お茶が必要ならリギーに用意させるんで、遠慮なく頼みたまえ」

 

 

 ソニア教授の言葉で、近くにいたリギーがピョコピョコと頭を揺らす。

 フワフワではないけど、ああいう動きも可愛いなぁ。

 

 ソニア教授は残っていたお茶をグイっと飲み干すと席を立つ。

 

 

「それじゃあ、行ってくる」

「はい、いってらっしゃいませ」

 

 

 リギーがローブを差し出す。

 そのローブは学院の正装であり、ソニア教授のローブは教授であることを示す紅色に染められている。

 ソニア教授は、そのローブを羽織はおると勇みよく研究室から出て行った。

 

 残された私は砂糖を多めに入れて甘くしたお茶をチビチビとなめるように飲みながら、個人的に進めている研究について考え始めた。

 

 

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