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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
学術都市フェルベル編
131/146

15歳:「お茶を飲もうよ(3)」

 

 

 ミロンさんから譲ってもらった〈ツチの実〉の粉末と煎じた〈ラルシャの葉〉を少な目のお湯が煮立っている手鍋に投入。

 少し火から遠ざけてトロ火で数分、普段ミロンさんが淹れてくれるお茶より濃くなるように抽出する。

 

 適当なタイミングを見計らって、深緑色の液体に砂糖を惜しげもなく入れて軽く混ぜる。

 手鍋を火から離して、余熱で砂糖を溶かす。

 

 前もって用意しておいた布で漉したら、抹茶シロップ(仮)のできあがり。

 

 このシロップをコップに注いで、牛乳で割り、魔術で作った氷を入れてやれば完成だ。

 ホットミルクで割って温かいまま飲んでもいいのだが、暑い季節はやはり冷たい方が美味しいだろう。

 

 

 

 

「というわけで、早速試飲をお願いします」

 

 

 夕食後の団欒の時間を狙って、さっそくオースギ寮のみんなに抹茶ラテを用意してみた。

 

 陶器製のコップに薄緑色の液体がなみなみと注がれている。

 と言っても、それほど大きなコップではないので容量的には牛乳瓶1本分くらいかな。

 

 

「頂く也」

「…………」

 

 

 最初に動いたのはミロンさんとセラちゃんだ。予想通りと言えば予想通り。

 残ったタマコさんとルノエちゃんが見守る中、2人がまず一口飲む。

 

 

「……ごくん……悪くはない也。ただ、我としては味に物足りなさを感じる也」

 

 

 辛党のミロンさんは、ちょっと甘すぎたのかもしれない。

 以前、ミロンさんの得意料理の真っ赤なスープをご馳走になったことは、忘れることのできないインパクトがあった。

 ものすごく辛かったが、ギリギリ食べられる辛さのうえ、味は美味しくて、辛い辛いと言いながら食べたものだ。

 食後に、思わず舌に回復魔術を使ったけどな。

 

 

「……こくこく……甘い。ユリアちゃん、すごい。ありがとう」

 

 

 セラちゃんが可愛い仕草でちょこんとお辞儀をする。

 

 

「いえいえ、どういたしまして……今回は比較的甘めに作ったから、ミロンさんなら砂糖なしで牛乳に混ぜてもいいかもね。

 それだけで苦味は大分押さえられるし、薬草の苦味が牛乳の臭みを消してくれて、相乗効果で飲みやすくなるはず。それと薬草も牛乳も体にいいしね」

 

 

 〈ツチの実〉も〈ラルシャの葉〉も安価で手に入り、味さえ我慢できれば常飲すると健康に、ひいては美容に効果が高いらしい。

 牛乳は栄養価が高くて、滋養強壮に役立つし、暑さで食欲が減っている時には最適だろう。

 

 

「なるほど、こいつは確かに飲みやすくなったな」

「ちょっと独特だけど、わたしもこれくらいなら美味しく飲めそうです」

 

 

 恐る恐る抹茶ラテを口をつけた2人も、一口飲んで緊張がほぐれる様子が見て取れた。

 

 

「よく見たら、薄緑の色合いも決して悪くはない気がするな……これは、簡単に作れるのかい?」

「うーん、生乳せいにゅうさえ手に入るなら、レシピ自体は簡単なんですけど」

「発酵乳じゃダメなのかい? ……いや、あの独特の酸味があると、味のバランスが難しそうだな」

「ええ、飲めないわけじゃないと思うんですが……今回の生乳も知り合いに譲ってもらったものなので」

「そうか、体にも良いならたまに寮でも出そうと思ったんだけどね」

「ひとまず、知り合いの軽食店でメインメニューになるか相談してみます」

「なるほど、じゃあメニューになったら、教えとくれ」

 

 

 概ね高評価だ。セラちゃんとタマコさんは、おかわりをして2杯目を飲んでいる。

 これなら『ペート軽食店』の新メニューとして、いけそうかな?

 

 試作品のシロップは少し残してあるから、明日にでもペートに試飲してもらおう。

 

 

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