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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
学術都市フェルベル編
130/146

15歳:「お茶を飲もうよ(2)」

 

 

 ふむ、短めに切ったこげ茶色の髪と濃紺に近い瞳。

 年は私よりも2つか3つくらい上だろうか。ただ身長は私よりずっと低くて、150イルチくらいかな?

 その小柄な体に薄いピンクのワンピースと白いフリルつきの前掛けエプロンの制服が、よく似合っている。

 

 

「あの、お客様……?」

「あ、ごめん、私たちはお店のお客じゃないんだ」

「ええと……?」

 

 

 うん、ウェイトレスさんが可愛いな、とか楽しんでいる場合じゃなかった。

 入り口にずっと立っていると、お店に迷惑をかけちゃうしな。

 食事には中途半端な時間でも店内はほどほどに賑わっているようだ。

 

 

「ペートって今いる?」

「えっと、ペート……店長ですか? 店長でしたら、店の奥にいらっしゃいますけど……」

 

 

 この間来たときは見てない顔だから、新人さんだよな。

 私の顔を知ってる店員さんがいれば早かったんだけど、勝手に押し入るのもアレだし……ん~、一応ペートの顔を立てるか。

 

 

「良かった。それじゃあ、ペートに『ユリアが来た』って伝言を頼めるかな?」

「あ、はい……しばしお待ちください」

 

 

 こういうとき、人は堂々と当たり前のような態度をされると何となく従っちゃうんだよな。

 『バーレンシア商会』での経験から得た処世術の1つだ。

 

 臨時雇用の子が店の奥へと入り、しばらくすると少し慌てた様子の青年が出てきた。

 

 

「いらっしゃいませ、ユリアお嬢様、ルノエお嬢様……」

「やあ、ペート、突然ごめんね」

「いえいえ、ユリアお嬢様には、最大の便宜を図るよう旦那様から言い含められておりますので……さて、店先で立ち話をするのもなんですので、どうぞ店の奥へ……」

 

 

 ペートに連れられて、奥の個室へと向かい、応接室兼執務室兼店長室へと通される。

 頑丈そうな机の上に書類が束となっておいてあり、ペートの忙しさを物語っている。

 

 

「どうぞ、一応この店で一番質の良い葉を使っています」

「ありがとう」

「あ、ありがとうございます」

 

 

 ルノエちゃんは、また緊張しているのかぎこちなくお茶のカップを受け取る。

 ペートに会うのは初めてじゃなし、シュリの前でもそうだったが、そろそろお嬢様扱いに慣れても良さそうなんだけど……。

 ボロだって、致命的なものじゃなければ問題はない。というか、逆に今みたいに張り詰めすぎている方が良くないと思う。

 

 ペート自ら淹れてくれたお茶は、ペートが自信満々に言うだけあって、香りもよく色もとても綺麗だった。

 

 熱さを気をつけながら一口味わう……焙じ茶とジャスミン茶を足したような味かな?

 飲むと、お茶の葉を煎じたときの独特の苦味と乾いてもなお香りを失わない花の香りがとても楽しい。

 

 

「それで、今日は何の用事なんだ?

 もしかして姉ちゃんに何かあったのか?」

 

 

 よそ行きの仮面をはずしたペートが、昔ながらの口調で質問してくる。

 年は私と変わらないため、今年から成人だ。

 変わったところは、この5年で背をギリギリ追い抜かされたことと、なかなか出来る男になってしまったことだろうか?

 今は『バーレンシア商会』のフェルベル進出計画の責任者を担ってくれている。

 それと最近気づいたのだが、お父様に憧れているらしく、なんとなく髪型や、商売中の言動の参考にしている節があるようだ。

 

 

「いや、ペルナちゃんは関係ないよ。今日はさ、牛乳を少しわけてもらおうと思ってね」

「牛乳? 今度は何を作るんだ?」

「んー、ペートは〈ラルシャの葉〉や〈ツチの実〉とかが入ったお茶って飲んだことある?」

「というか、それはもう薬じゃないのか?

 まぁ、おかげさまで、おれは病気らしい病気はしたことがないんで」

 

 

 手を左右に振って

 

 

「そっか、とりあえず濃い目の薬草茶を作って、牛乳と砂糖で割るんだ。美味しくできたら、この店でも扱ってよ」

「ああ、つまり、苦豆ラテってヤツのバリエーションか? 苦豆茶は人を選ぶけど、苦豆ラテはうちの人気メニューだぜ。

 で、牛乳と砂糖は、どんくらいあればいい?」

「今日は、試験的に作るだけだから……そうだね、牛乳をコップ10杯分と砂糖をコップの半分だけもらえる?」

「了解。そんじゃ、手配してくる」

 

 

 返事を聞くが早いか、ペートはさくっと応接室から跳び出て行った。

 

 

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