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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
学術都市フェルベル編
129/146

15歳:「お茶を飲もうよ(1)」

 

 

「ねぇ、ユリアちゃん、どこまで行くの?」

 

 

 学院の門を出てしばらくして、ルノエちゃんが質問してきた。

 

 午後の授業も終わり、オースギ寮に戻る前に、寄りたいところがあったので私たちはフェルベル学院前の大通りを歩いていた。

 学院の外に行くので「先に帰っていてもいいよ」と言ったのだが「迷惑じゃなければついて行きたい」と言われたので、こうして一緒に移動している。

 

 

「ん、ちょっと『ペート軽食店』に用事があってね」

「ペートさんの店に?」

「うん、あそこなら牛乳のストックがあるから、ちょっとわけてもらおうと思ってね」

「あっ! 朝言ってたミロンさんのお茶に使うの?」

「そういうこと。フェルベルだと新鮮な牛乳が手に入りにくいんだよねぇ」

 

 

 フェルベルの付近では酪農が盛んではなく、生乳せいにゅう市場いちばにあまり出回っていない。

 売られているものは大体が発酵乳、つまり飲むヨーグルトみたいな加工をされたものがほとんどだ。

 

 普段飲む分にはそれでもいいのだが、抹茶ラテを作るには、できれば生乳を使いたいと思う。

 

 

 歩きながら、ルノエちゃんとダラダラと授業やランチの際のマルグリッド嬢やシュリについて話す。

 

 

「えっ? ルノエちゃんはマルグリッド嬢がシュリに惚れているって言うの?」

「えっ? だってユリアちゃん、アレはどう見ても恋する乙女の態度でしょ?」

「う~ん、だってあれは『一般民に弱みを見せてしまい、どうしていいのかわかっていない』態度でしょ?」

 

 

 私のその返事に、ルノエちゃんが本日二度目の大きな溜息をつく。

 

 

「だって顔が赤くなってたし」

「それは弱みを見せちゃったことへの恥ずかしさでしょ?」

「確かに恥ずかしさもあるかもしれないけど、全然理由が違うよ。

 アレは、好きな男の子の前で緊張して照れていたんだ」

「そうかなぁ?」

「そうなの、きっと」

 

 

 仮にマルグリッド嬢がシュリに惚れているとして……前途多難もいいところだよな。

 

 

「もし仮にマルグリッド嬢がシュリのことが好きだとして、私たちは何かするべきなのかな?」

「えーと……応援、とか?」

 

 

 私の質問に対して、自信なさげにルノエちゃんが答える。

 昔、想像していたのよりも、ラシク王国での身分は絶対的な差というわけではない。

 

 けれど、小さな農村の男性が王家に連なる女性と気軽に付き合えるほど薄い壁というわけでもない。

 ルノエちゃんも、そのことに気づいたんだろう。

 

 仮にシュリが【霊獣の加護】を持っていた、なんて幸運に恵まれれば別だけどなぁ。

 【霊獣の加護】があり、うまく立ち回れば成り上がることもできる。フェルの家なんかがいい例だろう。

 

 

「いらっしゃいませー、ようこそ『ペート軽食店』へ」

 

 

 店内に入ると“臨時雇用アルバイト”の少女が明るい声で私たちを迎えてくれた。

 

 『ペート軽食店』は、『バーレンシア商会』が資本を出しているいわば子会社みたいなものになるのだが、ほとんど支店みたいな感じかな?

 

 “臨時雇用の交代制度”や“作業着の貸し出し”など、いくつかの制度を試験的に導入している。

 もちろん、これは前世でのファーストフードのシステムを参考にしている。

 

 

 ……ウェイトレスさんって可愛いと思うんだ。

 

 

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