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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
学術都市フェルベル編
127/146

15歳:「中庭でランチを(3)」

 

 

「シュリは、ラシクレンペのお嬢様と仲がいいの?」

 

 

 芝生に座って、各々が持ち寄った昼食を食べ始める。

 今日の私のメニューは、大きめのパンに切込みをいれてチーズとハムを挟んだものと、同様に野苺のジャムを挟んだもの。サンドイッチの一種だ。

 それと水筒によく冷えたお茶。

 

 ルノエちゃんとシュリは、たまたま同じ料理でシチューと串揚げのセットのようだ。

 シチューの容器は、買った店に持っていくと割引をしてくれるというサービス券代わりにもなっている。

 ……まぁ、バーレンシア商会の息がかかった店は、フェルベルにも出店してたりするということだ。

 

 

「仲がいいといいますか……お聞きになりたいのですか?」

「え、いや、無理にとは言わないけど……」

 

 

 そう言われてしまうと聞きたい気持ちと不安になる気持ちが半々になる。

 

 

「まぁ、聞かれて問題になるような話ではないのですが……先日、ちょうど私の目の前で転ばれまして……。

 足をくじいてしまったようなので、医務室までお連れした次第です」

「ふ~ん……」

 

 

 それだけで、あの態度か?

 いや、まだ何かありそうな気がするんだけど……ん、足をくじていた、んだよな? え、まさか、もしかして……。

 

 

「えーと、医務室に連れて行くときにさ、肩を貸したりしたの?」

「いえ、歩くのが辛そうでしたから、妙齢の婦女子に失礼とは思いましたが抱き上げてお連れしました……けど」

 

 

 うわぁ、つまりはお姫様抱っこか。

 

 シュリは見た目こそほっそりとしているが農村の出身だ。小さい頃から農作業を手伝っているため、身体能力は低くない。

 マルグリッド嬢は女性としては平均的なサイズだし、私でも魔術を使わずに抱え上げられるくらいだ。シュリならば余裕だろう。

 

 

 つまり、弱みを見せてしまったことによる恥ずかしさが、マルグリット嬢にあのような態度をさせたんだろう。納得だ。

 

 

「しかし、よくマルグリット嬢を抱き上げたりできたね。

 筋力的にという意味じゃなくて、地位とか肩書き的にさ」

「そのときは、まさか“六字ロォノウム”の方だとは、想像もしてませんでしたので……」

 

 

 この世界において、「6」という値は神聖な数とされている。

 ゆえに地位の高い人ほど、子供には6文字の名前をつける傾向にある。

 そういうわけで、地位の低いものは自然と、6文字より短い名前をつけるようになっていた。

 

 明確に法で定められていたりするわけではないが、名前が6文字の場合は“大三ガーシャ”以上の地位にある人物かその家族の名前だと言っていいだろう。

 

 

 一般人の人たちも、神聖なる「6」の数にあやかり、その半分である3文字の名前をつけることが多い。

 私の家族もそうだし、知り合いの名前は、ほとんどが3文字だ。

 

 例外がフェルネやお祖父様とお祖母様だろう。その3人に共通して言えることが、位が決して低くなく4文字であることだ。つまり、3文字より多いが6文字には足りない。

 地位が上がるのに合わせて、名前を長く改名する人も少なくない。

 

 

 ちなみに、家名について言えば、これは大体の家の家名は6文字であると言っていいだろう。

 バーレンシアもそうだし、ウェステッド、コーズレイト、セイロウインと、いずれも6文字だ。

 

 話が少しずれたが、“六字ロォノウム”というのは6文字の名前のことであり、簡単に言えば上級貴族本人かその縁者という意味を持つ。

 

 

「医務室での処置が終わったあと、名前を伺ってとても驚きましたよ」

 

 

 とシュリは言うが、シュリの慌てたり驚いたりする姿があんまり想像できないんだよな。

 

 だらだら喋っている間に全員食事が終わったようだ。

 

 さっきのマルグリット嬢との話し合いの影響なのか、食事中のルノエちゃんが静かだった。

 普段から比較的大人しいけど、決して喋らないわけじゃないし……心配しすぎかな?

 

 私と視線が合うと、なんでもないように笑顔を返してくれる。

 まぁ、大丈夫そうだな。

 

 よっし、それじゃあ残り半日頑張りますか。

 

 

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