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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
学術都市フェルベル編
121/146

15歳:「講義/堕ちた精霊王(3)」

 

 

「魔王……か」

「ん?」

 

 

 私がもらした呟きにルノエちゃんが反応する。軽く首を振って「なんでもない」と伝える。

 

 『グロリス・ワールド』でも、魔王と呼ばれるモンスターの設定はあった。

 もっとも、私が『グロリス・ワールド』で遊んでいた頃は魔王の配下にあたるボスモンスターを倒すイベントが定期的に開催されていたくらいで、実際の魔王と呼ばれるモンスターが出てきたことはなかった。

 

 私が死んだあとは、『グロリス・ワールド』に魔王は登場したのだろうか?

 今の私に知るよしもないし、意味もないことだけど。

 

 

 目の前に広がる雄大な草原、その一方には極色彩の装備をまとったプレイヤーたち。

 もう片側には、醜悪な容貌と獰猛どうもうな本性を隠そうともしない悪魔軍のモンスターたち。

 彼らを睥睨へいげいするかのように浮かぶは、魔王の名を冠したイベント用特殊モンスター。

 

 魔王が悠然と手を振り下ろすと、一斉にモンスターたちが前へと進軍を開始する。

 

 パーティ単位で連携して、モンスターたちの猛攻を迎え撃つプレイヤーたち。

 

 草原のあちこちで、プレイヤーとモンスターが激突しあう。

 激しく鳴り響く剣戟けんげき、降り注ぐ攻撃魔術、指令を飛ばすパーティリーダーの絶叫、淡い色に光り輝く回復魔術……

 

 

 

 

 ――カーン、カーン……

 

 

 講義の開始から1刻(約2時間)弱の時が過ぎたこと知らせる鐘が鳴る。

 そして、それは講義の終了を表わす合図でもあった。

 

 

「それでは、今回の講義はこの辺りにしましょう」

 

 

 鐘の音と講師の言葉でツラツラと思いを馳せていた私の精神が、限りなくゲームに近いファンタジーの現実に引き戻される。

 ……まぁ、ゲームと違って、この世界でいきなり魔王が復活とか言われても困るんだけどな。

 伝説を聞く限り、ろくなことにはなりそうにないし。

 

 

「次回は神代かみよが終わりとされる。四大精霊王の不和について講義します。それでは」

 

 

 講義が終わると、そそくさと教師は講義室から出て行く。

 教師がいなくなると、学生たちも一人一人、次の講義や予定に向かうべく講義室から散っていく。

 

 

「えっと、ユリアちゃんは、次の実践魔術の授業は受けてないんだよね?」

「うん、まぁ、私は出てもしょうがないしね~……って、そんな顔をしないで、いつものことでしょ?」

「べ、別に変な顔をしたつもりはないんだけど……」

 

 

 実技が伴う講義は、そういった魔術師の求められている需要が多いためか、攻撃魔術を使えることが前提となっている。

 そのため、授業を受けていてもあまり面白くない。

 最近は、すっかり簡単な照明や水を作り出す魔術以外は使えないと思われている。

 

 

「大丈夫、時間は有意義に使うから。

 お昼までソニア教授の所に行って来るから、昼食は一緒に食べよ。あ、シュリも一緒にする?」

「ええ、お嬢様とルノエ様はご迷惑でなければ、ご一緒させていただきたいと思います。

 けど、ルノエ様はよろしいのですか?」

「ご、ご迷惑だなんて、そんなことはありません!

 そもそも、ウェステッド様を誘ったのはユリアちゃんですし、私もユリアちゃんに誘われた形になるんですよね?」

「そうだね。細かいことは気にしないで、みんなで食べた方が美味しいしね?」

「ありがとうございます。それでは、またのちほど」

 

 

 優雅に一礼をすると、講義室から出て行った。

 というか、今の動きとか、下手な貴族の子弟よりも貴族っぽいんだよな。

 

 

「実践魔術は訓練場での授業だよね。途中までだけど、そろそろ行こうか?」

「はいっ」

 

 

 そして、ルノエちゃんはあれだ。なんとなく小型犬っぽいな、牙族じゃないけど。

 

 

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