10歳:「仲良しが一番!!」
「ただいまー」
挨拶をして玄関をくぐると、タタタッという音が聞こえる勢いで駆けるリリアが、私の右腕にしがみつくように飛び込んできた。
「おかえりなさいませ、おねえさまっ!!」
「こらっ、リリア。飛び込んだら、危ないでしょ」
「だって……」
とリリアが何か言い訳をしようとした時、今度はダダダッという音、リリアよりもずっと重量感があり……
「ボースーー!!」
「ジ、ジル待てっ!! うわっ!?」
「きゃあっ!?」
ジルがリリアと反対側に飛び込んでくる。
対格差のせいで勢いを受け止めきれず、リリアを巻き込んで一緒に倒れこんでしまう。リリアが床にぶつからないように、自分の体を下にして、受け身を取る。
「あたたた……ジル、ちょっとどいて。大丈夫、リリア?」
「はい、だいじょうぶです……」
ジルがパっとどいたので、リリアを先に起こして、自分も起き上がる。
いつつ、こりゃ、背中か腕のどこかが打ち身になっているかも……あとで魔術で治そう。
「ボス、おかえりなさい!」
「あのね、ジル……」
「何するのよ、このバカ犬!!」
「ジルは犬じゃない!! オオカミ!!」
うーー、むーー、と2人が睨みあう。
「……おかえりなさい、お姉さま」
「ただいま、えーと、あの2人はまた?」
「はい、またです」
リックが困ったような顔をして、私の質問を肯定してくれた。
まぁ、あの2人が喧嘩をする原因なんて、単純なもので……。
「ボスはリリアより、ジルの方が好きだ!」
「そんなことないもん、おねえさまはバカ犬より、わたしの方がずっと好きだもん!」
「ジルの方がずっとずっと好き!」
「わたしの方がずっとずっとず~~っと好きなの!」
「ジルの方が……」
「わたしの方が……」
やれやれ。モテる女はつらいな。
「はい、2人ともこっちに注目ー」
「何ボス?」「何おねえさま?」
「私は喧嘩する子は大っ嫌いです」
「「っ!?」」
口喧嘩に夢中になっていた2人に、とっておきの言葉をかける。
恐る恐るといった感じに2人が私のほうを見てくる。それににっこりと笑ってうなづく。
そうすると、リリアとジルはお互いにお互いを探るように見つめあい。
「「ごめんなさい」」
そして、同時に謝罪の言葉を口にする。
喧嘩するほど仲がいいって言うし、この2人は、本当に仲は悪くないのだ、きっと。
でも、喧嘩するより、仲良しなのが一番いいよね。