10歳:「これで一件落着?(2)」
「ふぅ……」
小さく息をはいて、
外していたら、赤っ恥だよなぁ。
推理小説の探偵は、いつもこんな気持ちなんだろうか……。
フェルとのいつもの会談が終わった翌日の昼。
私は1人で再びバーレンシアの本家を訪ねていた。
お祖父様は帰宅していなかったが、目的はお祖父様ではない。
「今回の件……私に情報が集まるように裏で動いていたのは、お祖母様、ですね?」
「あらあら、どうしてわかったのかしら?」
あっさりと犯行を認める真犯人。いや、犯行でもなんでもないんだけど……。
「多分ですが、シズネさんとロイズさんも協力者ですね?」
「ええその通り。ユリアちゃんは賢いわねぇ」
推理というか、私の思いつきに近い推測なんだけど、当たっていたようだ。
「気付いたきっかけはアギタさんです。
軽食屋で会って、お祖父様の情報を話してくれた時に、最後にアギタさんは、その時のことをお祖父様に話すと言っていました。
けど、この間お祖父様に会った時、お祖父様は私とアギタさんの会談を知らない様子でした。
つまり、アギタさんは、最後の質問において、その場しのぎの嘘をついたことになります。
そうして考えてみるとお祖父様以外にもう1人、アギタさんに対して命令できる人物がいることに気付いたんです。
もう1つ、今回の件についてお父様の事情とお祖父様の事情を知っているという2人にある程度近しい人でしか、今回の計画を立てれないと思いました。
だから、私はお祖母様が裏で動いていると思ったんです」
当たっていたから良かったものの、そもそもが惚けられた時点で詰みだった。
ほとんど賭けみたいな推理しかできない不恰好な探偵もいたもんだ。
今回の事件において、2枚のパズルがあるといったが、まさにその通りだった。
お父様の事情とお祖父様の事情を知っていて、その2枚のパズルをバラバラにして渡してくれたのが、お祖母様だったのだ。
こうなってくると、1つ疑問が湧いてくる。
「けど、お祖母様はどうして、自分でお父様とお祖父様の仲直りをさせようとしなかったのですか?」
「あらあら、耳が痛い質問をされちゃったわ。
そうね、わたしだからできなかった、ということかしら?」
「どういうことですか?」
お祖母様が、唇に右の人差し指を当てて「ん~」と、何かを考えるような仕草をする。微妙によく似合う。
「ケネアさんのことはご存知よね? アギタさんから聞いているわ」
「はい」
「カイトを産んで、ひっそりと暮らしていたわたしを見つけ出してくれたのが、ケネアさんだったのよ」
「……そうだったんですか?」
「ケネアさんが、お亡くなりになる直前だったかしら、わたし宛に手紙が届いてね……。
『あなたに頼めた義理ではないかもしれませんが、あの人を支えて、息子を慈しんでくれませんか? 後の無い私の最初で最後の願いです』って」
「…………」
なんて、言えばいいんだろうか。
会ったことも話したことも無いけど、少なくても、私の中に流れる血の4分の1がケネアさんのモノなのだ。
それだけ身近なはずなのに、皆の思い出の中だけにしかいない……とても遠い存在だと思う。