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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
111/146

10歳:「これで一件落着?(1)」

 

 

 上質な小麦粉とたっぷりなバターを使ったパウンドケーキがホロホロと口の中で溶けていく。

 フェルが用意してくれるお菓子はどれも美味しくて、最近のちょっとした楽しみだ。

 

 あれ……もしかして私って餌付けされてる? ジルと一緒?

 

 

「お茶のお代わりはいるかい?」

「うん、もらう」

 

 

 驚愕の真実に気づいてしまい、内心は大荒れながらも、フェルの言葉に返事をする。

 

 ……まぁ、いっか、美味しいものは正義。

 

 

 

 

 結論から言えば、リックの養子縁組の話は撤回されることになった。

 少なくともリックが自分独りで物事の判断をできるようになるまでは、今回のようなことは起きないと思う。

 

 あの日、翌朝まで語り明かしたお祖父様とお父様は、お互いにほんの少しだけ歩み寄れたようだ。

 

 それから、理由がもう一つある。

 

 伯父様夫婦に子供ができた。

 

 伯母様が大人しかったのも、妊娠による体調不良とそのことを隠していたことへの不安もあったようだ。

 もちろん相手は伯父様である。不倫を疑われても仕方のない状況かもしれないが、本人もバッチリ心当たりがあると言っているらしい。

 

 そもそも、伯父様は子供が作れないと言っていたが、伯母様と口裏を合わせて子供を作ろうとしていなかったらしい。お父様の愚痴聞いている中で教えてくれた。

 理由はお父様がガースェを継がず、自分が継いでしまったことに伯父様は後ろめたさを感じていたのだとか。

 

 

 結局のところ、お父様、お祖父様、伯父様、それぞれの感情が絡まった糸玉のようになっていたということだ。

 

 糸玉をほどくにはどこかで断ち切るか、ゆっくりと時間をかけるのが一番だろう。

 正直なところ、きちんと当事者全員が話し合っていれば、今回みたいなことは起こりえなかったかもしれない。

 

 

「まぁ、ともあれ、お家騒動の解決お疲れ様」

「どういたしまして……」

 

 

 フェルには、以前に色々と相談にのってもらったため、詳細をぼかしつつも結果の報告をした。

 

 あんまり興味はなさそうだと思ったが、結構、真剣に聞いてくれていた。

 フェルのいいところは、なんでもない話でも、きちんと人の目を見て話を聞くことだろうな。

 

 

「問題は解決したのに、どこか浮かない顔をしているな?」

「うん、まぁ、なんだろう……ちょっと違和感がね」

「違和感?」

「色々と情報を聞いて集めたけど、結局本人に直接話して、そうしたらその結果が上手くいったわけで……う~ん」

 

 

 確かに、今回の問題の解決に当たって、私はそれなりに活躍をしたと思う。

 けど、解決されてみると、別に私でなくても良かったような気がするわけで……。

 

 

「頑張った実感が湧かない、とか?」

「なの、かな?」

「少なくとも、ボクはユーリが頑張っているのは知っているぞ」

「うん、ありがとう」

 

 

 むぅ、十歳児フェルに心配されるようでは、いけないと思うのだが。

 

 

「なんていうか、私はたまたまそこにいただけって気がするんですよね」

「ふむ……舞台に例えるなら、袖の裏でユーリにその役割を割り振った脚本家がいる、みたいな?」

「ああ、うん、すっごくそんな感じ」

 

 

 そもそも今回の件は、まず、シズネさんに発破をかけられたのが切っ掛けで……ロイズさんに相談して、アギタさんから話を聞いて……。

 で、ロイズさんがお父様に話をしたせいで、いきなりお父様と直接対決をして、その結果、お祖父様との会話不足に気づいて……。

 お祖父様のところに直接乗り込むと、お祖父様はお祖父様で予想していた以上に口下手だということが発覚して、事件は解決、めでたいな。

 

 ……黒幕はシズネさんとロイズさん?

 

 

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