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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
110/146

10歳:「お祖父様の本音(3)」

 

 

 ドスドスッ、バンッ!!

 

 荒い足音が聞こえたかと思ったら、応接室の扉が勢いよく開け放たれる。

 

 

「ケイン……?」

「……お父様……」

 

 

 部屋に乱入してきたのは、お父様こと、ケイン・ガーロォ・バーレンシアだった。

 

 

「声をかけたら泣かれたって、いつの話ですかっ!!」

 

 

 あ、ツッコムところはそこなんだ。

 

 

「……あれはもう30年以上は前の話になるか?」

 

 

 お祖父様も律儀に指折り数えて返事をする。

 いや、そういうことじゃないと思うんだけどな。

 

 

「そんな子供の頃の記憶なんて残っていませんよ!」

 

 

 お父様が至極まっとうな意見を言う。

 というか、今になってやっと納得したけど…………お父様とお祖父様って、やっぱ血のつながった親子なんだなぁ。こう、にじみ出る雰囲気がよく似ている。

 

 二人が並んで言い争い(?)をしているのを見て、私はぼんやりとそんな感想を抱いた。

 

 

「旦那様、ケイン様……喉がお渇きではないでしょうか?」

 

 

 そう言ってアギタさんは、蒸留酒のボトルとグラスを2つ取り出した。

 ああ、つまりは、これ以上は2人とも素面じゃないほうがいいという判断か……できる執事は違うな。

 

 

「いただきましょう! 父さんも飲んでください!」

「う、うむ……」

 

 

 お父様の勢いに押されて、お祖父様がうなづく。

 アギタさんは手早く水割りを作って、お父様とお祖父様に手渡す。

 

 

「なんだか、変にうじうじしていた過去の僕に乾杯!」

「…………」

 

 

 呆気にとられるお祖父様を横目に、お父様が一気にグラスの半分を煽るようにして飲む。

 

 

「父さん、話をしましょう」

「……いったい、何の話をするつもりだ?」

 

 

 手元のグラスを持て余しながら、お祖父様が目の前で息巻くお父様に問い返す。

 

 

「とりあえず、すべてを……今の僕は、過去の僕を笑い飛ばしてやりたい気持ちなんです。

 ……父さん、僕も父親になりました」

「ああ……そうだな」

「けれど、今でも父さんのことはよくわかりません。それでも、わかったことが一つだけあります」

「一つだけわかったこと?」

「父さんがいたから、今の僕がいます。もう泣くだけしかできない子供じゃありません。

 だから――」

 

 

 呼吸を一拍。

 

 

「――30年間分の話をしましょう」

 

 

 そのお父様の言葉を、お祖父様はゆっくり噛み締め、そっとグラスに入っていた薄い琥珀色の液体で流し込む。

 

 

「長い話になるぞ……」

「構いません……今日はきっと僕と父さんにとって最後のチャンスなんです」

 

 

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