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3歳:「魔術を使ってみよう!(1)」

 

 

 裏の森に入って、3歳児の足で10分ほど歩いた所に森の広場はあった。

 

 わざわざ母親を口説き落としてまで、ここに来たのは魔術の練習のためだ。

 オレは、ほとんどこの世界が『グロリス・ワールド』と同じであると確信している。

 

 そして、『グロリス・ワールド』であるならば、オレは魔術を使うことができるはずなのだ。

 『グロリス・ワールド』では、基本的にどんなキャラクターでも“魔力”を備えているからだ。

 

 

 “魔力”とは、「可変と可能性の力」と定義される「魔法を行うために必要な力」のことで、肉体に属する体力、魂に属する魔力と説明される。

 

 走れば体力が減って、動かずに休めば体力が回復する。同様に、“魔力”が減った場合は、魂を休ませれば回復する。魂を休ませるのは、睡眠が一番手っ取り早い手段だ。

 その個体が保持している“魔力”を保有魔力と言い、全快している時に保持している“魔力”の量を、最大保有魔力量と言う。

 

 なお、ここで言う魔法とは「世界の理を自分の意思で変革する能力」であり、何もない場所で水や火を生んだり、肉体を強化したり、幻影を作り出したり、ありとあらゆることが理論上は可能である。

 

 

 魔法には大きく2つの種別がある。1つが魔導、もう1つが魔術だ。

 

 魔導は基本として、生れつき備わった魔法的な才能や能力のことを指す。

 例えば、ドラゴンが巨体を浮かせる【飛翔】も口から吐く【火炎の息フレイムブレス】も魔導に分類される。

 他にも精霊が持つ【属性支配】、人類が生れつき持つ可能性がある【先天性加護せんてんせいかご】、一部の人類種族の特性とも言えるエルフの【魔法適性】やドワーフの【炎熱耐性】なども魔導となる。

 

 

 その魔導とは逆に、後天的なものが魔術である。

 魔術は、魔法的な技術であり、技術であれば、才能による差異はあっても取得が可能なのだ。もちろん、才能が皆無に近いか、本人の努力が足りなければ、取得することはままならない。

 

 さて、この魔術に必要なのが“ルーン”である。この“ルーン”は世界の理の一部を示しているとされる文字のことだ。

 正直、この辺りの設定についてはうろ覚えで、“ルーン”を正しく発声すれば魔術が使える、位にしか覚えていない。

 

 

 実際、『グロリス・ワールド』における魔術の創造は、キャラクターに“ルーン”を覚えさせる所から始まる。

 覚えた“ルーン”の特性を考えながら、“ルーン”とルーン”を順番につなげ、どのような効果を発生させるかを設定する。この時に“ルーン”同志の連携が上手くいき、また、発生させたい効果と選択した“ルーン”の特性が一致すれば、魔術の創造が成功となった。

 

 ちなみに、このとき重要なのが、一番最初と最後につなげる“ルーン”である。

 この2つの“ルーン”が魔術の方向性を大体決めてしまうと言ってもいい。

 

 魔術を創造したら、キャラクターの使用魔術欄に設定し、ボタン一つで魔術を使うことができた。

 もちろん各種“ルーン”の知識や魔術の構文などはバッチリ覚えている。

 

 

 

 

「すぅ……ふぅ……」

 

 

 ゆっくりと深呼吸をして気持ちを落ち着ける。今から、オレは魔術に挑戦する。

 

 アイラさんが見張っているとしても、こうして、草の中で遊んでいる振りをしていれば、近くに来て手元を覗かれたりしない限り、大丈夫だろう。

 

 唱える“ルーン”は、手元にごく少量の水を作り出すだけの、簡単な魔術だ。

 

 

 

 

「…………《滴よウォーラ》」

 

 

 

 

 ピチャン、という水音が発生し…………なかった、あれ?

 

 

「《滴よウォーラ》……《滴よウォーラ》……《滴よウォーラ》……」

 

 

 

 試しに同じ“ルーン”を何度か唱えてみるが、汗ほどの水も出てこない。

 この魔術を使うために必要な消費魔力は、ほぼ最低値と言っていい、そうなるとオレは水属性の“ルーン”との適性が皆無なのだろうか?

 

 

「《石よダスーラ》、《音よジィムーラ》、《熱よノアーラ》……」

 

 

 続けて他の属性系統の“ルーン”も唱えてみるが、一切の反応がない。

 小石も音も熱も発生しなかった……あれれ?

 

 

 

 もしかして、オレってば、魔術の適性が皆無、とか?

 

 

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