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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
105/146

10歳:「お父様の本音(1)」

 

 

「なるほど、ふらちゃるど?」

「フランチャイルドです。ひとまずは、多店同品たてんどうひん販売方式と命名しようと思っています」

 

 

 言い切ったはいいけど、多分間違えているんだよな。結局正しい名称は思い出せなかった。

 そのうち思い出すかもしれないけど、喉の奥に何かがつかえているようなむずがゆさが残る。

 まぁ、思い出せたとしても、こっちの世界では聞きなれない言葉だから、わかりやすいネーミングにつけた方が話が早いけど。

 

 

「料理の下ごしらえを一ヶ所でやって、それを必要に応じて各支店に配る。各支店は、それぞれ本店と契約している料理人が店主となり、各店の売り上げの何割かを本店に収め、残りがそのまま店主の収入になる。

 また各支店ごとに一定のエリアを任せることにして、同じ区画内には同じ料理を出す店を建てさせない……か。

 

 面白いと言うか、これは王国が領主に領地を任せて管理する形を真似たのかい?」

「いえ、私の前世において古くからある商売の方法です。それに王国がそのような形とっているのは、それが組織の運営に当たって効率的だからです」

「なるほど。言われてみれば、その通りだね」

「今でも複数の店を経営する商会では似たような形になっていると思いますが、この方式の場合、最初から支店を持つことを前提に組織の運営をします」

 

 

 お父様の話というのは、昼間にロイズさんと話していた、バーレンシアの名前を借りて商売をすることについてだった。

 ペルナちゃんとペートの話のほかに、ロイズさんが先に簡単な説明をしてくれたらしい。

 

 

「それと、この話を商人連盟に持っていく際にバーレンシアの名前を使いたいのですが、大丈夫でしょうか?」

「んー、構わない」

 

 

 少しだけ考えるそぶりをして、その話に軽く了承する返事をするお父様。

 

 

「ただ、その商売の方法は画期的であるがゆえに、色々と問題が起こるかもしれないね」

「ですから、できるだけ事前に計画をきっちりと固めておこうかと」

「ああ、逆の考え方をした方がいい。

 仕事をする上で、事前にできる限りのことを決めて準備するのも重要だけど、計画にはある程度余裕を持たせておいて、いざと言うときに柔軟に対応した方が結果として上手くいくよ」

 

 

 むぅ、ほんとにもう、お父様には敵わないと思う。ロイズさんとは別の意味で。

 正直、前世を含めてアルバイト以上の社会経験がない私にとって、仕事に対する認識が少し甘いのかもしれない。

 精神的には同い年なんだけど、今回みたいな話になるとお父様が仕事ができる大人なのだと思い知らされる。普段は、ただの親バカなんだけどなぁ。

 

 

「わかりました、きちんと余裕は持たせるようにします」

「それと商談についてだけど、ロイズさんに僕の代理人として委任させるから、上手くやりなさい」

「はい、ありがとうございます」

 

 

 ん……?

 何か言いたそうにしているけど、話は終わりじゃないのか?

 

 

「あの、お父様、話はまだあるのですか?」

「ロイズさんからね。もう1つ聞いてるんだ……ユリアが、昔の話を知りたがっていると」

「え、ええとそれは……」

 

 

 私が奇襲を受けてどうするんだ!?

 そういうことなら前もって教えといてよ、ロイズさんめ!!

 

 私とお父様の間に、若干気まずい空気が流れる。腫れ物に触るようなと言うか。

 

 

「ふぅ……それで、何が聞きたいのかな?」

 

 

 止まっていた空気を動かすため。お父様の方から口火を切った。

 その顔は、いつもの柔らかなものでなく、先日のバーレンシア本家からの帰宅の際に見せたような、少し困ったような顔つきだった。

 

 

「まず、お父様はお祖母様と血がつながっていないと言うことを、いつ知ったのですか?」

「今のユリアと同じくらい頃に、何となくかな。貴族同士の交流の中には、親子連れでというのもあるからね。

 

 子供だと思って、あれこれと言って聞かせる訳さ。

 特に醜聞しゅうぶん染みた話は、本気で隠そうとしない限り人の口を介して勝手に広がるものだから」

 

 

 と、言うことは……成人する前に自分の産みの親と育ての親については、知っていた、といことか。

 となると、どうしてお父様は家を飛び出たんだろうか? やっぱり家を継ぎたくないから?

 

 

「お父様は、どうして軍に入ったんですか?」

 

 

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